表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第5章:破滅の不死鳥 編
224/370

第224話:とこしえ荘VS破滅の不死鳥

連戦の疲労、元より“その速さ”による戦闘をしていなかった狗美は知らぬ間に、ほんの僅か、速度が落ちていたのである。そして疾風はそれを見逃さなかった。

全身から血飛沫を上げ、白い花園に膝を着く。

「ッ・・・!!」

「さらばだ。古き血脈の者よ。」

疾風は消える。一瞬にして狗美の背後から首筋に“神剣”を突き立てんとする。

“【禁忌】空間妖術・転換”

“【禁忌】空間妖術・次元裂き”

狗美がいた位置に瞬時に陽子が現れ、同時に空間を切り裂く。切り裂かれた空間の裂け目のようなものに疾風の“神剣”は止められたが・・・。

“閃の不知火【真】”

左手から瞬時に放たれた不知火に陽子は吹き飛ばされるが、飛ばされながら術を放つ構えを取る。

「遅い。」

構えを取ったまま、陽子は居合斬りの形に振り抜かれた“神剣”に腹部を一閃された。しかし、疾風はその斬った感触に違和感を感じていた。

八重盾やえたて結界・懐型ふところがた

陽子の放たんとしていた術は結界だったのである。だが、展開した結界はバリバリッ,とボロボロに崩れ、刃は陽子にまで届き出血していた。それでも、この結界は大きな意味を持っていた。

結界崩壊妖術けっかいほうかいようじゅつせん

カッ!と、瞬間的に爆発的な閃光が周囲に放たれた。“結界崩壊妖術”はその名の通り結界が崩れ去った際に自動で発動するように仕込まれた罠のような術である。疾風の速さに到底ついていけないと分かっていた陽子は、自身の防御よりも結界をあえて疾風に破らせる事で疾風の間隙を突く手段を取ったのであった。

戦闘状態で極限まで集中力を高めて眼を見開いていた疾風は、まさか,と言わざるを得ない至極原始的な“閃光による目潰し”という技をダイレクトに食らい、一瞬、動きを止め、数秒の視界を奪われた。

「小癪な・・・!」

“影縛り”

“アリアドネチェーン”

“そよ風の処刑場”

“アイアンメイデン~落女座の呪縛~”

「今だ!」

妖力、天力、霊力、魔力による動きを封じる術が立て続けに疾風に浴びせられ、狗美が“報せた”。疾風が一瞬、本当に一瞬だが、完全に動きを封じられた事を。

この数分の戦いの中で、疾風は“見えなくなっていた”のである。陽子に視界を奪われるより以前に。無理もない。彼女たちは現妖界の中でも上位の力や技量を持つ妖たちなのだから。力を宿して間もない気配を“受け容れた”元人間など、彼女たちの莫大な力と技に当てられ続けていれば、見えなくなるのも当然であろう。

「ありがとうございます、皆さん。」

和神が疾風の近くに姿を現した。近すぎる,狗美はそう思った。和神は疾風に浴びせられている術に触れるほど近くに立っていたのである。

今までもずっとそうであったように、これもまた和神にとって賭けであった。元人間が、不死鳥の力を宿したからといって、“あれ”を使って無事で済むのか。しかし、それでも和神には“これ”しかなかった。疾風を仕留めるには、これしか。

「ふっ・・・。」

和神は何故か微笑んでいた。自分にしか出来ない、自分がやるしかない事を成す。それが自分にどんな結果をもたらそうとも、彼女たちの為になることを成せるなら。それは和神にとって、震えるほどに喜ばしい状況であった。

「無駄だ、“受け容れし者もどき”。今の貴様の力では・・・。」

(行くぞ?)

“自爆の不知火”

和神はそんな言葉など意に介さず、疾風に倒れ込むように1歩踏み出した。白い輝きと衝撃が、花園を覆った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ