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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第5章:破滅の不死鳥 編
223/370

第223話:疾風の如く

「みなさん命は無事ですが、決して万全ではありません。早期決着が望まれます。」

陽子の言葉通り、戦いは即刻始まった。

花園に墜落した所から疾風が立ち上がろうとする前に陰美が術を放つ。

“陰陽術・雷遁・雷霆牢らいていろう

高速で迸る稲妻が疾風を檻の形に取り囲み、檻の内側に無数の雷が走り、疾風の体を拘束するが・・・。

「無駄だ・・・!」

バチンッ!!と疾風は剣の一振りで“雷霆牢”を砕き霧散させる。

“風武百連陣【龍】”

同時にフウが上空から直径3m、全長15m程の龍のような形に収束させた風の武器による攻撃を仕掛ける。だが、疾風はこれを瞬間に回避。超高速でフウの背後に回る。

“エクスカリバー”

ガキィン!!と疾風の“神剣”とミネルヴァの“聖剣”が交わり周囲に純白の衝撃が放たれる。フウと疾風の間に割って入ったミネルヴァは限界ギリギリの所で“アークエンジェルアローサル”を展開している。

“そよ風の処刑場”

フウは素早く疾風を側面・下方・上方を円状に取り囲むように風の武器を展開させ、放つが・・・。

分身わけみの不知火【真】”

疾風はミネルヴァと剣を交えたまま8体の分身を生み出し、展開していた風の武器8振りを全て破壊した。そしてその分身たちはそのままミネルヴァとフウを襲撃する。

“サテライトフォールン~翔惑星直撃~”

魔力で形成した漆黒の大斧を構えたサラによる特攻。これに合わせるようにミネルヴァは“エクスカリバー”を最大出力で発動する。フウは迫り来る疾風の分身たちに“大気の壁”を展開し、近付けさせない。

“エクスカリバー・アテナ”

“神剣の不知火【毘沙門】”

“聖剣”の輝きの増大を感じ、すかさず疾風も“神剣”の出力を上げるが、戦女神の如きミネルヴァの剛力に、疾風は弾き返される。同時に展開していた分身も消滅する。そこへサラの大斧による一撃が到着する。

“神剣の不知火【毘沙門・天】”

疾風はミネルヴァにわざと“弾かせ”、その威力を利用してサラの一撃を迎え撃った。疾風は剣に天力を混ぜることでサラの大斧との間に反発を生じさせることで大斧を弾くと同時に砕いた。

「うっそ!?」

“エクスカリバー”を最大出力で放ったミネルヴァは“アークエンジェルアローサル”が解除されてしまう。フウがそんなミネルヴァを庇いつつ前へ出ようとするが、疾風はそれを許さず、“閃の不知火【真】”を片手間で瞬時に放ち、2人まとめて花園へ墜落させる。

“ジェミニ~双護座~”

大斧を砕かれたサラはすぐに両手に魔力を纏わせて反撃に転じるが、疾風は振り向きざまの一太刀でこの拳を弾き、空いた胴をすれ違うように斬った。

「うくっ・・・!」

真っ二つにこそならなかったが、サラの腹部からは大量の魔力と血液が流れ出る。そんなサラに返す刀で斬り捨てようと襲い来る疾風の顔面に強烈な蹴りが襲った。

その蹴りは下に向かって放たれたもので、疾風は凄まじい勢いで花園へ転落していく。

「やはり厄介は貴様か・・・。」

疾風は花園に落ちる直前で羽ばたき威力を殺し、無事に着地した。蹴りの主である狗美の方を見上げる疾風。その背後を陰美が雷を纏わせた小太刀で襲撃する。

“神剣の不知火【阿修羅】”

しかし、疾風は一瞥もせずに後ろ向きに陰美をすり抜け、その体に無数の斬撃を刻み込んだ。

「なっ・・・!?」

その場に膝を着く陰美。その背後で衝撃が巻き起こり、転がるように倒れる。衝撃がした方を見ると、疾風が剣を持つ腕で狗美のかかと落としを止めていた。それから両者は一度距離を置くと、光速をも超える速度での戦闘を始めた。

(光を超える速さを持つものは闇だけではないということか・・・?)

陰美の眼でも追えぬ速さの戦闘は、当事者たちの体感ではおよそ数分は戦っていたかも知れないが、実際は10秒も続いてはいなかった。両者は再び少し間合いを取ると、同時に突撃し、互いが互いをすり抜けたようにすれ違ったように見えた。

先にダメージがあったのは、疾風であった。全身を斬り裂かれたような傷から血が噴き出した。

「この感覚・・・そうか、貴様・・・あの一族の・・・。だが、残念だ。」

その言葉と同時に、狗美の全身に刀傷が現出し、血飛沫を上げた。

「ッ・・・!」

狗美はその場に膝から崩れ落ちた。


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