第222話:神剣の不知火【須佐之男】
“審判の不知火【戦神】”
11人の疾風の分身が円になって和神を取り囲んだ。
「ん!」
和神の跳び膝蹴りに吹き飛びながらにして疾風は言う。
「終いだ。」
11人の疾風の分身が不知火で形成した剣を構え、一斉に斬りかかる。和神は咄嗟に背の翼で飛び上がり、これを回避した。だが・・・。
“神剣の不知火”
上空には疾風本体が既に待ち構えていた。和神が気付いて防御姿勢を取るよりも速く、疾風の剣は和神の体を逆袈裟に斬り裂き、花園へと叩き落とした。
「ッ・・・!!」
ドシュッ!!
更に花園に落ちた和神を踏みつけ、胸を貫く。
「さらば、“受け容れし者もどき”。」
“神剣の不知火【須佐之男】”
疾風は剣に力を込め、素早く飛び立つ。やがて剣は光を増していく。
「これは・・・!」
この剣が爆発するであろうことは誰の目にも明らかであった。和神は胸部を貫いている剣を引き抜こうとするが、剣は心臓を貫いており、激痛と出血で力が入らず意識も朦朧としてきていた。
「やば・・・ぃ・・・。」
その様子を疾風が上空800mの高さから見下ろす中、輝きが最高潮に達した。剣の輝きは解き放たれ、空間をも揺るがすような大爆発を引き起こした。その規模はおよそ直径1㎞。それが地上で起きたため、高度500mの高さまで爆発は及んだ。
だが、何故か?何故、十分な距離を保っていた疾風は今、地上に落下してきたのだろうか?そして何故、和神は無事でいるのだろうか。
「大丈夫か、和神?」
「動かないで下さい、いま傷を癒していますから。」
狗美と陽子が和神の視界の両側にいる。
「陽子さん・・・無事だったんですか?」
「はい。陰美のおかげで。」
「和神こそ、1人でよく・・・。」
狗美が今までにない心配そうな表情をしていたため、和神は思わず手を狗美の頬に伸ばしてしまう。狗美もまた思わずその手を握ってしまう。
「1人にしてすまなかった・・・。護ると、決めたのに。」
「大丈夫だよ・・・自分でも戦えるようになったんだから。」
「・・・。」
2人の様子を見ないように意識しながら、陽子は和神の傷を癒していた。
“神剣の不知火【須佐之男】”が爆発した瞬間、何が起きたのか。まず、和神が花園に落ちてきた衝撃によって狗美が目覚め、剣が爆発する直前に和神から剣を引き抜き、渾身の力で上空へとぶん投げた。その直後、陽子が現れて結界を展開し、爆発から守った。安全圏であったはずの上空800mにいた疾風であったが、狗美によって剣が投げられたことにより、爆発の範囲がより上空にまで及ぶこととなり、その煽りを受けることになる。爆発の衝撃と光によって一瞬視界を奪われた疾風の頭上に、サラの魔力で形成したハンマーが襲い、脳震盪気味になりながら事態を把握できぬままに地上へと落下していく。途中で態勢を立て直さんとするのをミネルヴァの追撃が阻止し、更に落下を加速させ、次いでフウの追撃、陰美の追撃と続いて地上まで高速で落下させるに至ったのである。
「・・・陽子さんたち、どこにいたんですか?」
「わたしたちは陰美が海の中に作った結界の中で回復していました・・・。陰美は傷が浅かったけど、自分だけじゃ不死鳥と戦うのに狗美さんたちの足手纏いになるって考えて、色々な状況を判断してわたしたちをいち早く回復させるために動いてくれたみたいです。」
陽子は視線を和神から狗美へと移す。
「ごめんなさい、狗美さんとサラさんに任せきりにしてしまって・・・。」
「構わん。陽子たちは十分すぎる程やってくれている。」
思わぬ狗美の労いの言葉に陽子は少し驚いた反応を見せ、少し微笑んで視線を和神の傷口に戻す。
「死に損ないどもが戻ったのか・・・。忌々しい・・・忌々しい愚者どもが・・・!」
怒りを露わにする疾風との最後の戦いが始まる。




