第221話:和神VS疾風
見縊っていたのだ。“受け容れし者もどき”であろうが本当に“受け容れし者”であろうが、フェンの不死鳥の能力を継いでいようが、所詮は人間。“何も持たざる者”なのだと。むしろ犬神の女の方を警戒していたくらいであった。だがその犬神の女に某は殺せない。即ち、某に敗北など在り得ないのだと。その驕りがこんな無様を晒す事に繋がったのだ。
・・・よかろう。見縊るのは、終わりだ。
“自爆の不知火【真】”
「!!?和神ッ!」
和神が疾風の腹筋を“不知火拳”で打った瞬間、疾風の全身が光り始めた。これに危機感を覚えた狗美は咄嗟に和神を庇うように疾風との間に割って入った。疾風の身体から放たれた光は一瞬の内に島全体を呑み込むほどの大爆発を引き起こした。その光は黒水諸島と日本本州の港からも見ることが出来る程の規模と光度で、これを目撃した事情を知る者達は皆、破滅の不死鳥による世界の破滅が始まったのだと思った,という。
「んっ・・・。」
和神が富士見島の花園で気が付く。自分の体の上に狗美が被さるように乗っている。
「狗美・・・?」
身体を揺するが返事はない。ただ、胸から伝わる心音と微かな呼吸音で生きているという事だけは解った。
「貴様1人だ。」
その声に、和神は狗美の体を慎重にかつ迅速に動かし、起き上がる。
「もう護ってくれる女達は居ない。」
声のする方を見ると、何もない空間に不知火が灯り、次第に人の形へと変化していく。
「さぁ、終わりにしようか。」
まだ完全に再生し切ってはいないというのに、その不知火が剣を手に取り、臨戦態勢にあるということが見て取れた。和神も全身に不知火を立ち昇らせ、戦いの構えを取る。
ドンッ!と、疾風がもの凄い速さで間合いを詰める。和神の前に到着するまでの間に、疾風の再生は完了していた。
“神剣の不知火【毘沙門】”
それは和神の目には止まらぬ迅さの居合斬り。狗美のいない今、これを回避する術は和神にはなかった。
ドガァン!!
疾風の顔面を和神の“不知火拳”が打ち抜いた。
「なにぃ・・・!?」
見えてはいなかった。回避する術もなかった。しかし、迎え撃つ方法は辛うじて存在した。
疾風は目にも止まらぬ速さで来る。それを見越して疾風が来そうな場所に拳を打ち出す,という方法が。とはいえ、これは“方法”と呼べるかも危うい“賭け”であった。疾風の速さと顔の高さに拳が合わなければ、和神は今頃真っ二つになっていたであろう。だが現実、和神はこの賭けに勝ったのである。
和神が追い撃ちを仕掛けるより早く、疾風は移動して和神の背後を取った。
バキィ!!
「なッ・・・!!?」
“不知火鉄槌”
和神の右肘が疾風の右顔面を打ち抜いた。まるで、動きを先読みしているかのような攻撃に、疾風は理解が追い付かない。和神が追い撃ちを仕掛ける。疾風は背後を取ることに対し、まさかの“恐怖”を感じていた。また読まれるのでは?と。その恐怖が疾風に正面からの迎撃を決断させた。
“不知火撃”
和神は疾風に向かうフリをして中距離から不知火の閃光を放った。それは疾風の剣に断ち斬られてしまったが、和神は瞬間的に不知火の力を爆発させ、疾風が振り抜いた剣を戻すより速く、懐へ飛び込み・・・。
“不知火進撃”
疾風の顔面に跳び膝蹴りを食らわせた。
「ぬァァ・・・!!」
吹き飛ぶ疾風の顔面は血塗れになっていた・・・が。
“審判の不知火【戦神】”
和神の周囲を11人の疾風の分身が取り囲んだ。




