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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第5章:破滅の不死鳥 編
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第218話:狂いし者たち

「イックスだ。」

疾風はやて?何?東方の者が覚えづらいが故の和名だと?」

「フッ、もはや疾風の名の方が通っているな・・・。」


「何故だ、みな“彼の者”に救われたであろう!?」

「世界中の民草から王まで、皆が“彼の者”に・・・!」

「“彼の者”がああなったのはひとえに我らが、皆が背負わせ過ぎたが故・・・!」

「せめて我らが救わねば!」

「死が救済?馬鹿な!」

「殺せぬが故に封じられた・・・だと!?」

「何故だ・・・何故みな、“彼の者”を葬ろうとする・・・?大恩を忘れたのか・・・。」

「・・・度し難き傲慢。“彼の者”よりもたらされた安穏あんのんを貪る世界中の生命は生きるに値せん・・・。」

「同じく世界に破滅望む者たちよ、某の下へ集え。その破壊に意味を与えてやろう。」

「この“護りの不死鳥”が護るべき総てを滅す“破滅の不死鳥”と成るのだ。」


「美鳥、“彼の者”の封印を解く術があるというのは・・・。」

たばかったのか!美鳥!!」


ハッ,と海中で目を開く。和神の“不知火拳”をモロに顔面に食らい、ほんの数秒意識を失っていた疾風は、図らずもかつて己が内に生じた破滅への転移を回顧する事となった。

「・・・フェン、貴様はその男に・・・。」

怒りではない。ましてや妬み嫉み、焦燥でもない。憎悪ですらない。しかして堅牢で強靭な揺るぎない感情が疾風の心を満たしていた。

疾風が海上へと飛び出してきた。海中に落ちていたにも関わらず、疾風の身体は全く濡れてはいなかった。

海上から富士見島上空、和神を斜め上から見下ろす位置に移動してきた疾風は言う。

「フェンより不死鳥の能力ちからを継承したか、“受け容れし者もどき”。」

「もどき?和神くんはしょーしんしょーめーの“受け容れし者”だからっ!」

反論するサラなど眼中にないように続ける疾風。

「貴様もいずる。貴様に待つ行く末、それに伴う某が行いの真意。そしての世界の醜さを。」

「・・・知ってるよ、世界の醜さなんて。」

和神が俯いて答えた。

「ククッ。貴様が何を識っていると?斯様に貴様の命の為に命散らせる女どもに囲まれて、何を知っているというのか!?」

「今は。むしろ世界の美しさを知り始めたくらいだよ。ここにいるみんなに会って、生きてて良い事、楽しい事もあるし、大切に想える存在ひとがいるんだって、ようやく思えるようになった所だよ。」

「和神くん・・・。」

「破滅の不死鳥。貴方がいた時代がどんな時代だったのかを知らないし、妖界のことなんて尚更知る由もない。でもね。」

和神は疾風の方を、眼をしっかりと見た。

「現代の流界るかいも、中々に醜いよ?」

「!?」

疾風は一瞬眉をひそめ、すぐに悟ったような表情へと移行した。

「・・・そうか。貴様が失いたくない何人かの者というのは人間に非ず、ここにいる者ら,だったか。そして貴様が護りたいものはここにいる者ら“だけ”・・・か。ここにいる者らが護りたいものを守るために貴様は某の前に立つ、そう言っていたな。」

「そうだよ。まあ、人間でも両親には生きててほしいけど。」

「フッ・・・肉親しか失いたくない同族がおらぬか。まぁ肉親すらどうでもよいと考える者よりかはマシか?だが、貴様も大概に狂っているようだな。某に等しいくらいにな。」

「狂ってる自覚あったんだ・・・。ていうか!和神くんは狂ってないから!」

サラが反論するが、疾風は構わず続ける。

「狂いし“受け容れし者もどき”よ。たった今手にした付け焼刃の力などで某の数億年は破れぬ。貴様が某の前に立つならば、貴様が護らんとする総てをの“破滅の不死鳥”が滅するとしよう!」

「させない。今日は、今度は、俺が“護る”。」

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