第217話:白き閃光
半神島
立ち昇る光が消え、島には和神1人だけとなっていた。美鳥の描いた不知火の陣は残り火もなく完全に消失しており、周囲の木々や草に焼けた形跡もなかった。まるで、何事もなかったかのように。
「大家さん・・・。」
不死鳥が生まれた時から有する“転譲の儀”を含む基礎情報が脳に刷り込まれ、和神は少し立ち眩みながら自分に不死鳥としての能力が継承された事を実感していた。
ドン、バァン,と遠くから響いて来る戦闘音に、和神は感傷に浸るのを止め、急ぎ富士見島へと向かおうと駆け出す。すると、背から自然と不知火の翼が展開される。
「おっ・・・!」
勝手に浮かび上がる身体に焦りつつ、何とか制御しようと試みる。何せ人生初の“翼”なのだ、焦るのも道理。しかし、不死鳥の有する基礎情報の中に“飛び方”も含まれていた。手足を動かすように翼にも意識を向ければよい。だが、“飛び方”即ち“翼の扱い方”の情報はあっても、本人の体格などによる“力加減”は情報になかった。そのため、自重がそこそこあることを知っている和神はこのくらいの力量で羽撃けば,という想像のもと、力強く翼を動かしてみた。
「ん?」
基礎情報にあった通り、驚くほど軽い。自重はおろか空気抵抗さえ感じない程に。それが不死鳥の不知火の翼というものの特性、物理法則に関係なく飛翔できる,というものであった。
つまり、不死鳥は自重など考えずとも、羽撃くのに殆ど力を入れなくて良いのである。そう、和神は突然脳内に入れられた不死鳥の情報を整理し切れていない中で突然翼が展開したことで焦り、力を入れ過ぎて羽撃いてしまったのである。結果・・・。
ドギュンッ!!
爆発的な推進力を持って富士見島へと直行することとなった。
あっという間に富士見島が近くなり、疾風が狗美に向かって踏み込もうとしている姿が見える。和神は初めて富士見島に来た時と同様に自身の存在を“受け容れて”気配を消し、“妖拳”の感覚で不知火をその手に宿し、白き閃光となって疾風の左顔面に超高速で突っ込んだ。
“不知火拳”
ズドォォォン!!
島全体を揺るがすような凄まじいインパクトが放たれ、狗美も身体を仰け反らせる。
「な・・・ッ!」
何が起きたか把握できないままに疾風は島の端から端まで殴り飛ばされ、そのまま海へと投げ出され、海上を何度も水切りして海中へと沈んだ。
自分でもビックリするほどの威力に和神は自分の右手を見つめる。
「和神・・・。」
宙に立っていた狗美が背から不知火の翼を生やした和神のもとに降り立つ。
「狗美、大丈夫だった?」
「あぁ、私は・・・。」
狗美の視線が背に向いている事を察した和神。
「ああ、これね。“転譲の儀”で・・・大家さん、美鳥さんから、ね。」
「・・・そうか・・・。」
複雑な表情をする狗美に、かける言葉に困る和神。
「ちょっと?アタシもいるんですけど。な~に2人でしんみりしちゃってんのさぁ。」
「サラ。無事?」
「まぁね・・・ってアタシのコト忘れてたでしょー?もー、帰ったらアタシのコト忘れられないようにしてあげるから!」
「忘れてないから、大丈夫だよ。」
執拗に顔を近付けてくるサラに和神は冷静に対応する。
「むー・・・“転譲の儀”、やったんだね。」
「うん。」
「そか・・・じゃあ、ここからは一緒に戦えるね♪」
明るくウインクするサラ。
「・・・そうだね。やっと一緒に戦える。」
あえてポジティブなことを行ってくれたサラに、和神もポジティブに返す。
「狗美、大家さんも疾風を止めることを望んでた。」
「・・・ああ、解ってる。アイツを止める。」
「!・・・来る。」
不死鳥の能力を手にした和神には、疾風が海中から戻って来る気配が知覚できた。最前線で和神が中心となって戦う、初陣の幕開けである。




