第209話:しし座
サラは意識を失ったリキッドをそっと岩場に寝かせる。そんな敬虔な行動などお構いなしにヴォルヴァイアに操られしマキーナが襲い来る。マキーナの4本腕からは無数の獰猛な太い棘のようなものが生え、攻撃性能と凶暴性を増している。
「どんどんイカツくなるなぁ。さっさと決めないともっとめんどくなりそ。」
マキーナの腕による薙ぎ払いを跳躍して回避したサラだが、マキーナの腕が払った先には凄まじい衝撃波が発生し、前方の大地30mほどを扇状に抉っていた。
「さっきより強くなってない?」
サラはヴォルヴァイアを見やる。
(マキーナンの誰も傷つけたくないって意思が邪魔しててヴォルヴォルでも完全に操れてない・・・とか?それが時間が経ってヴォルヴォルの支配が進んでるってところかな?)
空中のサラに飛び掛かってくるマキーナ。
「あんまタイムアタックとか好きじゃないんだけどな。」
サラは両腕に手先まで覆う魔力の籠手を形成し、獰猛な棘を備えたマキーナの裏拳を正面から拳で受け止めた。バキバキッ,とマキーナの腕に生えた棘が砕け散る。
「まだだよ!」
“アースブレイク~地灸破壊~”
サラの拳の先で魔力の大爆発が発生した。サラ自身も反動で腕を後ろへ持っていかれる程の爆発は、マキーナを地面へと叩き落とした。だが、その皮膚には傷一つ付いてはいない。
「やっぱね~棘は壊せても肝心の皮膚は無傷かぁ・・・。」
ふんふん,と納得したように頷くサラ。そこへヴォルヴァイアから黒い炎が贈られる。サラは背中の右翼を強く羽撃かせてその炎を消し去った。
「正直、ヴォルヴォルのがちょろい気がしてきたけど、まあ、このマキーナンもヴォルヴォルの力でこうなってるんだから、ヴォルヴォルがウザいってコトでいいのかな?」
起き上がり、今一度サラに向かわんとするマキーナを“魔眼”で見ながらサラは1つの賭けに出る。
「マキーナンは強いしカタい。それを“信じてみる”わ。」
そう言うと、サラは自身の頭上に小さいながらも高密度な赤紫の魔力の塊を幾つか出現させ、マキーナが向かって来るより早く、その頭にかかと落としを食らわせる。マキーナの頭部の棘が砕け、マキーナは下を向かされる。そこへサマーソルトキックを顔面に浴びせる。
「ガアァッ!!」
マキーナは上方を向かされのけぞる。そのガラ空きになった腹にサラは賭けの攻撃を放つ。それは、サラ自身がどうという類の賭けではなく、マキーナがこの技を耐えきれるか,という賭けであった。
“シューティングスター・オブ・ザ・レオ~獅死座流逝群~”
サラの頭上にあった赤紫の魔力の塊が一斉に、連続してマキーナの腹部に襲い掛かる。
「グガアアアアァァァ!!!」
マキーナは強靭な皮膚によってダメージを軽減してはいるものの、“デモンズスタイル”のサラが生み出した高密度魔力塊による連続攻撃は、着実に体力と皮膚そのものを削っていた。また、反撃しようにも、魔力塊の一撃一撃の衝撃は非常に重く、とても反撃できる状況ではない。だが、この“シューティングスター・オブ・ザ・レオ~獅死座流逝群~”は、まだ終わっていない。最後の一撃として、サラが右腕を構える。その様子に、ヴォルヴァイアも危機を察知し、マキーナを巻き込んででもサラの攻撃を中断させんと、黒焔を放つ。
“ノワールインフェルノ”
しかし、時既に遅し。サラ自身の腕がマキーナの腹部を貫き、コアを捕らえたのである。
「“耐えてくれて”ありがとね。」
“雷神ショック”
バリバリバリッ!!
同時に、ヴォルヴァイアから放たれた黒焔が2人を飲み込んだ。




