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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第5章:破滅の不死鳥 編
203/370

第203話:和神&美鳥VS疾風

「“妖拳”ではなく、己を犠牲にしてでもその身に僅かに宿した不知火を使うべきであったと、悔やむがいい。さすれば貴様は死のうと、貴様が護らんとする此の世界は残ったのだからな。」

疾風はやては宙に浮かび、“聖剣の不知火”を構える。

「所詮は程度の知れた望みだ。」

疾風は和神の目には留まらぬ速さで和神に斬りかかった。それを美鳥が瞬時に“聖剣の不知火”を持って守りに入る。聖剣と聖剣がぶつかり、キュドン!!,という爆音に近い轟音が響き、衝撃で和神は後方の森林地帯へと吹っ飛ばされる。鍔迫り合いながら、美鳥は疾風を否定する。

「違う!あの子に、和神くんに不知火を使わないように言ったのは私!あの子はとっくに自分の将来さきを賭けてる!放っておいたら、命だって賭ける!だから私が止めたの!」

「ならば愚かなのは貴様だ、美鳥。ただ1度の機会を無意味な一撃で終わらせた貴様の愚策で、世界は滅ぶのだ。」

聖剣同士が離れ、何度か打ち合い、美鳥が2~3歩押され、再び鍔迫り合う。

「あなたは、何も分かってないわ、疾風。あなた“如き”を葬るために和神くんの命は散らせさせない!ハアアァァァ!!」

美鳥は背から不知火の翼を強力な勢いで展開させ、自身を前進させるブースターのように機能させた。

「・・・愚かな。某を“如き”と言える力など、貴様にはない。」

妖波ようは

しかし、疾風が全身から妖力の波動のようなものを放つと、美鳥は弾き飛ばされてしまう。そこへ疾風の冷酷な左手が向けられる。

「消え去れ。」

“消滅の・・・”

疾風の左掌ひだりてのひらに不知火が集まらんとした時、妖力で脚力を強化した和神が、疾風の左側からをひとっ跳びで現れ、拳を構える。

“妖拳”

「遅い。」

だが、疾風は和神の気配に気付いていた。美鳥に向けられていた左掌を和神に向ける。

「!!」

“消滅の不知火”

驚く和神を、“真っ白”が包んだ。


二十重盾結界はたえたてけっかい


それは“八重盾結界やえたてけっかい”の上位に当たる陰陽術。20層からなる鉄壁の結界であった。その18層までが打ち破られていたが、和神は無事であった。

「ほぉう。」

感心するように疾風が術者を見上げる。そこには、狐の耳を生やし、九本の尾を象った妖力を放ち、顔には隈取くまどりのような赤い紋様を浮かべた、“本気モード”の陽子が空中に立っていた。周囲には九個の狐火が浮かんでいる。

ようやく、真の力を見せてくれるのか?現代の九尾よ。」

陽子の周囲から狐火が消える。そして、疾風を取り囲むように火の玉が現れる。

“火球封鎖”

疾風を取り囲んだ全ての火の玉から高速で火の鎖が放たれるが、疾風はこれを1回転するように聖剣を振るい、砕け散らせる。

「真正面からの封印など某が受けるとでも・・・!」

余裕を見せていた疾風であったが、ただならぬ気配に上空を見ると、そこには太陽の如き巨大な炎塊が現出していた。

天狐てんこ陽帝ようてい

巨大な炎塊は陽子の指先に操られるようにして疾風目掛けて落下した。同時に陽子は、和神に“二十重盾結界【八面式はちめんしき】”を掛けて防御し、美鳥は“不動の不知火”で身を守った。

落下した“天狐ノ陽帝”は富士見島の森林や岩場などを全て蒸発させ、不知火でも燃えぬ花園だけが富士見島として残っていた。

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