第201話:美鳥VS疾風
富士見島
白い不知火の翼を背中から生やした美鳥と疾風が島の上空にて高速でぶつかる。両者はその手に持つ“聖剣の不知火”で鍔迫り合い、やがて衝撃と共に両者は飛び退く。
“劫火の不知火”
疾風は聖剣を持っていない左手を美鳥に向け、島を覆い尽くすような巨大な不知火の光線を放った。
“不動の不知火”
美鳥は自身を不知火で覆ってこれを凌ぎつつ、疾風へと高速で接近。“劫火の不知火”を抜けると同時に“不動の不知火”を解除し、居合の構えから聖剣を振り抜く。
“聖剣の不知火【毘沙門天】”
振り抜くと同時に聖剣はその刀身を巨大化させた。だが、疾風はこれを不死鳥化させた右足で踏みつけるように止めた。
「ほぉう、少しは戦えるようになったのか。だが、ここまでだ。」
そう言って疾風は左足で美鳥の顔面を踏みつけるように吹き飛ばす。美鳥は森林地帯へと叩き落とされ、地面に激突。15cmほど埋まる。そこへ疾風の容赦ない追撃が襲う。
“雷神の不知火”
天より眩い光が差し込んだかと思うと、不知火の光線が雷の如き速度で森林地帯へ落とされた。バリバリバリッ!!,という凄まじい轟音と共に、“雷神の不知火”は富士見島は貫通し、森林地帯の一画に巨大な大穴を穿ち、そこには海水が溢れ出て、湖のようなものを形成した。
「ほう、あれを避けたか。フェン。」
疾風は振り向きざま聖剣を振り、美鳥が振り下ろして来ていた聖剣を受け止めた。
「ふん。貴方はこれを避けられる?」
「何?」
“分身の不知火”
不知火の剣を携えた美鳥の分身が疾風めがけて一斉に襲い掛かる。その数、実に46人。
「フン、下らん。」
疾風は自身の持つ聖剣に左手を添えると、美鳥に向けて爆散させて吹き飛ばす。
「くっ・・・!」
続いて両手を左右に広げると、美鳥の分身と同数の不知火の剣を持った疾風の分身が出現し、迫り来る美鳥の分身たちを迎撃する。美鳥の分身は次々と疾風の分身に斬り消されていく。
「こんな子供騙し・・・フッ、貴様らしい手ではあるか。“子供騙し”。子を喜ばせるに丁度良かろうな。」
“渦の不知火”
嘲笑う疾風を不知火の渦が呑み込んだ。本体の美鳥が上空から放ったものである。しかし、疾風はこれを破って飛び出し、美鳥の眼前に瞬間的に現れる。
「もういい、終わりにしよう。」
ガンッ!,と疾風は一瞬で前転し、美鳥に踵落としを見舞った。美鳥は地面にうつ伏せで叩きつけられる。起き上がろうと腕をついて身体を起こすと、その美鳥の顎に疾風の足が添えられる。
「!!」
疾風はそのまま零距離で美鳥の顎を蹴り上げる。美鳥の身体は真っ直ぐ伸びた状態で宙に浮く。そして、疾風は“聖剣の不知火”を出現させると、思うままに美鳥の体を斬りつける。何度も何度も何度も・・・。抵抗しようとする美鳥の手や足を弾きながら、何度も何度も。最後に左手で“閃の不知火”を放ち、美鳥を近くにあった巨木に叩きつけた。
「さらばだ、フェンよ。体験し得なかったであろう、“死”を味わえ。」
力無く巨木に寄りかかって立ち尽くす美鳥の首筋に、疾風が聖剣を当てる。
「フフ・・・。」
「?・・・己の非力が可笑しいか?」
「あら・・・それは正解。流石は同じ不死鳥ね・・・。」
「貴様と同じにするな。」
疾風が聖剣を振り上げる。
「“受け容れし者”はここにいるっ!!」
美鳥が徐ろに叫んだ。疾風の聖剣を振るう腕が止まる。
「なに?」
美鳥の発言を理解できないでいる疾風の目の前に、何も無い。否、何も無かったはずのその空間から、スゥ~っと浮き上がるように足が、体が、顔が、腕が現れる。現れた“彼”は、既に攻撃を放っていた。最も原始的な、“殴る”という攻撃を。
“妖拳”
拳は完全に無防備だった疾風の顔面、右頬に炸裂し、20m先までブッ飛ばした。
「ごめんね、和神くん。もうちょっと、頑張れると思ったんだけど・・・。」
「いえ、出来ればもっと早く言って欲しかったです。」
和神は不安げな顔で、ボロボロの美鳥に手を差し伸べた。




