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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第5章:破滅の不死鳥 編
197/370

第197話:火鳥風月

流界・南極

「あんだよ、斬られたっぽいぞ!」

「だから手強いと言ったろう・・・?」

「でも向こうの斬撃も消えたな!うん!」

「・・・。」

フウはイフリートが苦手だった。というより面倒くさかった。彼女が生み出す炎と同じくらいのテンションの高さが、静寂や爽やかさを好むフウとは全く相容れなかったのである。だが、その性格とは反比例するように、2人の能力の相性は実に良いものである。

「はぁ・・・イフリート・・・そなたの炎・・・。」

「“プロミネンスブラスト”な。」

「・・・“それ”は、奴らの竜巻の影響下に入ると同時に・・・減衰していたぞ。」

「嘘!?マジで!?」

「・・・自分で出していて気付かなかったのか?・・・だが、向こうの斬撃もそなたの火柱・・・。」

「“イグニ・テンプルム”な。」

「・・・“それ”の影響下に入るなり減衰し、消滅した。」

「ん~、じゃあ五分ごぶってコトか?ケリ着かねぇじゃんか~。」

頭の後ろで手を組んで、面倒くさそうにするイフリート。

「否・・・そなたと“奴ら”で五分ごぶなのだ・・・“我ら”であれば勝機がある。」

「!おー、そーだな・・・へへっ。」

「?・・・何故笑う?」

「いや、シルフから“力を合わせよう”なんて言われると思ってなかったからよ。やっぱ変わったな、お前。いい意味で。」

「・・・“力を合わせよう”などと言っていない。」

「でも合わせんだろ?」

「・・・ああ。そなたは攻撃を放てばよい。あとはわれがそれを“加工”する。」

「イイぜ。んじゃぁ・・・!」

イフリートは炎を纏わせた右手を大きく振りかぶる。

“プロミネンスブラスト”

巨大な炎が再び神斬と神風へ向けて放たれた。神斬は再びこれを斬り裂かんと刀を構える。

“炎切【寒冷斬空】”

氷点下の斬撃が向かってくる炎を断ち切らんとする・・・が。

ドバァァン!!

斬撃は掻き消され、神斬と神風は“プロミネンスブラスト”に呑み込まれた。

「!!?」

2体の七災神は何が起きたか理解できていない。自分たちの絶対有利の氷点下の領域において、炎熱が勝る理由が分からなかった。

風圧加護ふうあつかご

言わずもがな、フウの仕業であった。イフリートが放った“プロミネンスブラスト”に、即座に“風圧加護”・・・即ち風の鎧のようなものを纏わせていたのである。同じ“霊力”から生じた能力チカラは互いを補填し、尚且つ風は炎を強化させる効果もあった。竜巻の影響下に至っても火炎は減衰することはなく、むしろただの“プロミネンスブラスト”よりも威力を増して神斬と神風のもとへと到達し、断ち切られることもなかったのである。

「ウォオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「ヒーーヒヒヒヒン!!」

神斬と神風が同時に雄叫びを上げた。彼らの周囲に、竜巻が集まり始める。

「アレ・・・か。」

「なに?」

「いや、今なら心配は無用か・・・。」

「だからなに?」

「よい、そなたは構わず最大級の炎を用意しろ。」

「!へっ・・・いいぜいいぜぇ!そーいうの!人間と関わり過ぎて弱っちくなったかと思ったが、いきになったじゃんかァ!!」

イフリートが自身に纏う炎を極限まで高温にし、極大まで大きくし、天へと立ち昇らせる。それを見た神斬と神風は上空へと跳び上がり、神斬は刀を天に掲げる。すると、全ての竜巻が集まり、1つの巨大な竜巻へと変貌する。

霊切れいせつ天竜刀剣てんりゅうとうけん】”

巨大な竜巻の中心に神斬と神風は身を置き、竜巻を更に刀剣へと変容させた。

「面白ェ・・・!こっちも行くぜ!!」

“ファイヤーバード”

イフリートは炎で巨大な火の鳥を形成し、自身も炎となってこれに身を宿し、神斬と神風に向かって一直線に飛んでいく。

「バカ正直に・・・まぁいいでしょう・・・。」

フウは何故か少し微笑んでいた。以前のフウならばただただ呆れていたであろうイフリートの行動に。

「彼らの所為・・・か?」

そう呟き、フウは“ファイヤーバード”に加護を与える。神斬と神風も、向かってくる“ファイヤーバード”に“霊切【天竜刀剣】”の切っ先を向け、真っ直ぐに突撃した。これは、武士の魂をルーツに持つ、彼らの“礼儀”だったのかも知れない。

ぶつかった両者は激しい大爆発を起こし、南極全土の氷を一度は全て溶解させた。この大爆発は南極における謎の事象として、今でもアメリカCIAの機密ファイルに記録されているとか・・・。だが、調査に来た人間たちは数名のテレビクルーの遺体を回収しただけで、他には何の痕跡も見つけられなかったという。

南極の溶解した南極の氷は、ウンディーネが海水を操ることで3日ほどで元通りにしたことは、人間には到底知り得ない事実である。

「悪りぃな・・・ウンディーネ。」

「・・・大精霊様の命よ。アナタの為じゃないわ。・・・シルフは?」

「ああ、アイツはもう行ったよ。こっからが本番だ,とか言ってたな。」

「フン。・・・変わったわね、あの子。で、アナタはいつまでそこに寝転がってる気?イフリート。水が凍る妨げでしかないんだけど。」

「悪い、もーちょい。ちょっとチカラ使いすぎたわー。」

「まったく・・・。」


七災神・神斬、神風・・・撃破。


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