第187話:デモンズスタイル
魔界・オリエンス王国領南・オリンポス火山地帯
サラとテラコッタが焔龍ヴォルヴァイアと交戦している。サラが率いてきた彼女の配下の軍団は命令通り、オリンポスマーメイドたちを後退させつつ後方で展開したまま待機している。だが現状、軍団を連れてくる必要があったのか疑問に思うような戦況にあった。
「せりゃ!」
デモンズスタイル状態のサラが魔力を込めた拳でヴォルヴァイアの顔面を高速で殴りつける。
“プロミネンスサイクル”
ヴォルヴァイアは身を翻し、サラへ尻尾で反撃を仕掛ける。が、サラはこれを事もなげに回避し、腹部に高速の回し蹴りを浴びせる。ヴォルヴォイアは前屈みになり、サラの頭上に頭を垂れる。そこを目にも止まらぬモーションで繰り出すアッパーで弾き返す。天を仰ぐヴォルヴォイアは自身の頭にある2本の角の間に黒い焔を収束させ始める。これを阻止せんとテラコッタが跳び蹴りを放つ。
“オリンポスブーストシュートVer. 30min”
高速で飛来したテラコッタの跳び蹴りは見事ヴォルヴァイアの首に正面から命中し、ヴォルヴォイアは必然的に正面を向かされた。その目の前に、魔力で形成したメイスを大きく振りかぶるサラの姿があった。
“トリプルセブン・ホーマー”
そのスイングは速過ぎて目には見えなかったが、サラが振り抜いた態勢をしている事から振り抜いたことは明らかであった。瞬間、衝撃波が周囲に放たれ、テラコッタは軽く10mほど飛ばされた空中で蒸気を噴出してどうにか踏みとどまった。この衝撃波を伴う一撃を鼻先に食らったヴォルヴォイアは、血飛沫を上げながら自身の力ではなく宙を舞っていた。ヴォルヴァイアの脳は揺さぶられ、意識は混乱していたが、5秒ほどで我に返り、後方に回転して態勢を整える。しかし、整えた矢先、胸部数cmの位置に某テレビ局の球体より1回り小さい程度の黒い球体が超高速で飛来していた。
“シューティングスター~撃逝~”
その球体は重く、胸部にめり込み、そのままヴォルヴァイアの身体を隣の火山に激突するまで押し続け、激突すると同時に爆散した。黒煙が立ち込め、ヴォルヴァイアは動かない。
「やりましたか!?」
テラコッタがサラの下へ飛んで来る。
「いーや、まだだよ。多分ここから本気ってトコじゃない?でもよーやくデモンズスタイルの力を見せられてよかったよ~。もー新しい力手に入れていきなりラスボス級の敵は色んな意味で無いよねぇ?」
「は、はぁ・・・。」
サラの言っている事がたまに、否、よく解らないテラコッタはとりあえず納得した体を取った。
「ほら、来るよ?」
サラの言葉でテラコッタは再び戦闘の思考に切り替えた。黒煙の中で、不気味に赤く輝くヴォルヴァイアの眼光が確認できた。
「ギシヤアアアアアオオオウ!!!」
けたたましい咆哮と共に、ヴォルヴァイアの身から赤黒いオーラが放たれ、テラコッタは急激に身体が灼けるように感じ始めた。
「えっ・・・!何で・・・急に体が熱い!?・・・燃えて・・・!?」
「落ち着いて、テラコッタちゃん。」
ぽん,とサラが肩に手を置くと、テラコッタは自身の身体の熱さが少し和らいだように感じた。
「ヴォルヴァイアの力域ってヤツだよ。もうテラコッタちゃんはここにいない方がいい。」
「サラ様・・・。」
テラコッタは解っていた。サラが真面な口調で優しく語り掛ける時が本気の時であるということを。故にテラコッタは大人しくオリンポス火山から離れて行った。
「さぁて、何を見せてくれるのかな、ヴォルヴォル?」




