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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第5章:破滅の不死鳥 編
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第182話:黒き太陽と月

“オリンポスオーバーストリームVer. 2h”

その拳の威力は凄まじく、空を覆っていた黒い雲をも貫いた。そして、その貫かれた暗雲の先に太陽が顔を覗かせた。だが、これは魔界の太陽ではない。サイズが大きすぎるのである。こんな近くに太陽があれば、魔界の大地と言えども焼け尽くされているであろう。何より、魔界の太陽は今、西の空にぼんやりと光りながら浮かんでいる。

では、ここにあるこの“太陽のようなもの”は?

最も間近でその“太陽のようなもの”を見上げるテラコッタ始め、オリンポスマーメイドたち全員がその太陽に疑問を抱いた。次の瞬間、“太陽のようなもの”は一瞬にして黒い焔に覆われた。その瞬間であった。そこに居た全員が気が付いた、或いは悟った。その“太陽のようなもの”がヴォルヴァイアの攻撃であるということに。

結果として、ダメージはあったのである。オリンポスマーメイドたちが連携して叩き込んだ拳の数々は、ヴォルヴァイアに一定のダメージは与えられていた。しかし到底、討ち倒せる値のダメージ量ではなかったのである。そして殴られながらにしてヴォルヴァイアは天空そらにその“太陽のようなもの”を形成していたのである。

“ノワールヘリオス”

それは正しく黒き太陽の如き出で立ちの焔の塊であった。真っ黒な影がオリンポスマーメイドたちを覆い、それは彼女たちの心にまで黒い影を落とした。絶望、というやつである。まだ200mは離れているだろうに、その黒き太陽の持つ熱量・破壊力・規模が自分たちでは防げず、逃れられないことを想起させた。

「そんな・・・。」

テラコッタが口からそう零す。それでも戦おうと、懸命に拳を握り、ヴォルヴァイアに殴りかかろうと身体から蒸気を噴射した。

“オリンポス・・・!”

そのテラコッタの意思を飲み込むように、それは来た。

“フルムーン~全尽~”

それは真っ黒な月のような魔力の球体であった。それが凄まじい速度で“ノワールヘリオス”へと衝突したのである。強大なエネルギー同士の衝突に、周囲には激しい衝撃波が襲い、空中に居たオリンポスマーメイドたちはテラコッタ含め皆がマグマ溜まりへと落下していった。だが、テラコッタだけは途中で何者かに受け止められた。やがて、黒き太陽と月は共に消滅した。

「遅れて来てごめ~ん♪真にすみまめ~ん♪なんつって。」

テラコッタは自分を抱きとめている者の姿を確認して安堵する。

「・・・!サラ様・・・?」

そこには“デモンズスタイル”状態のサラが宙に立っていた。

「おひさ~・・・でもないか。あ、この姿、テラコッタちゃんは初めてか。アタシ魔力供給量増やしてもらったからさ。いや~でも、間に合ってよかった。」

そう言うとサラは背後に視線を送る。その視線の先にはサラが魔界で本来率いている一個中隊が向かって来ていた。

「ヴォルヴァイアの情報聞いたらみんないた方がいいかなって軍部に寄り道してたら遅くなっちゃってね。でもさすがテラコッタちゃん、ちゃんと駆け付けてくれた上にここまで押し留めてくれてて助かったよ。」

「いえ・・・殆ど彼女たちの、オリンポスマーメイドたちの力です。」

テラコッタは下のマグマ溜まりにいるオリンポスマーメイドたちに視線を向ける。テラコッタが駆け付けた時に生きていたオリンポスマーメイドたちはどうやら全員無事のようである。

「そ。・・・自分を捨てた一族なのに、よく助けに来たね?」

「・・・故郷・・・ですから。」

「~♪それでこそテラコッタちゃんだよね♪さてと。」

サラは視線をヴォルヴァイアに向ける。

「面倒くさいコトして来るみたいだけど、ちゃっちゃと片付けちゃお♪」

「はい・・・!」

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