第181話:アームストロングの帰還
魔界・オリンポス火山
顔面を岩石のような拳で殴り飛ばされた焔龍ヴォルヴァイア。その岩石のような拳の持ち主は言わずもがな、テラコッタであった。自身の古巣であり迫害されたとはいえ、故郷であるオリンポス火山・オリンポスマーメイドの危機を風の噂で耳にし、駆け付けたのである。
“プロミネンスサイクル”
ヴォルヴァイアはその威力を殺すように高速で身を翻し始める。そして高速の尾でテラコッタをはたき落とした。
「くっ・・・!重い・・・!」
そのままマグマ溜まりに叩き付けられたが、すぐさま地上に顔を出す。
「貴様!アームストロング・マグマイアン!?一族を抜けた離反者が何をぬけぬけと・・・!」
「・・・今は私を咎めている時ではないでしょう。」
オリンポスマーメイドを率いている族長、ヴァンヴィエッタ・マントリータはかつて一族の落ちこぼれであり、かつ一族を離反したテラコッタに詰め寄ろうとしたが、テラコッタは冷静に対処する。
「そうですよ、族長!今はヴォルヴァイアの討伐が先決ですよ!それに今、そいつの拳は奴に効いていたように見えました!」
「そうです!そいつの処断はヴォルヴァイアを倒してからでも遅くないッス!」
他のオリンポスマーメイドたちの説得によって、ヴァンヴィエッタは一先ずテラコッタへの敵意を解いた。
「フン、あの龍を討つまでは見逃しておいてやる。」
「・・・感謝します。ところであの龍ですが、奴はこのオリンポス火山の創造主です。」
「そんな事は分かっている!我らがここに棲んでいたのは奴が復活せぬよう見張る,という役割もあったのだからな!それをサタン殿はあろうことかあの白い男めとは関わらず、オリンポス火山から離れよなどと・・・!」
「それはいいのです。私が言いたいのは、奴が創造した以上、ここのマグマでは奴を討てはしないということです。」
「!!」
「しかし“私たち”は違います。私たちは奴に創造られたわけではありません。つまり、我ら自身の拳ならば奴を討てる可能性があるということです。現に私はさっき奴の顔面に一発見舞ったでしょう?」
「!・・・なるほどな。我らの皮膚ならば奴の纏う熱の層のようなものにも耐えられると。」
「短時間ならば,ですが。流石に長く留まるのは危険かと。」
「族長!!奴がまた黒い炎を!」
時間はなかった。ヴァンヴィエッタは決断する。
「よし!射撃・狙撃の得意な者は奴の視界を奪う攻撃で援護しろ!肉弾戦の得意な奴は突撃だァ!!」
「オオォーーー!!」
そう言うと、オリンポスマーメイドたちとテラコッタは一斉に身体から蒸気を噴射し、マグマから飛び出してヴォルヴァイアへと突撃する。黒い炎を吐かんとするヴォルヴァイアに向けて、マグマ溜まりに残ったオリンポスマーメイドたちが球体にしたマグマを飛ばす。
“オリンポスファイヤーワークス”
そのマグマの球体はヴォルヴァイアの纏った熱の層に触れると同時に爆散し、大量のマグマを飛散させる。飛び散るマグマと蒸発するマグマの煙とでヴォルヴァイアの視界が奪われていく。鬱陶しがるヴォルヴァイアは視界を晴らすために黒い炎を周囲に吐き散らす。そして、視界が晴れると同時に眼前にはヴァンヴィエッタ・マントリータの姿があった。
「くたばれクソ野郎。」
“オリンポスソニックブローVer. 3h”
構えの体勢から瞬時に殴り終えた体勢になったように見えるほど高速の一撃。ヴォルヴァイアは咄嗟に殴られたことに気付かず、僅かに吹き飛ばされて天を見上げてから数秒後にようやく“プロミネンスサイクル”を使用する思考へと至った。だが、それでは遅かった。顔面を殴られ、のけぞり、体が前方へと出た姿勢のヴォルヴァイアの腹部に、オリンポスマーメイド5名が同時に拳を放つ。
“オリンポスインパクトブローVer. 2h”
衝撃を重視した一撃が5発同時に腹部へ。ヴォルヴァイアはその衝撃により、今度は頭部を前方へと突き出す姿勢になる。その頭部を上からまたも5名のオリンポスマーメイドが襲う。
“オリンポスインパクトブローVer. 2h”
頭部は勢いよく下方へと叩き落とされる。ヴォルヴァイアはその威力を殺そうとするが、それよりも早くテラコッタが渾身の一撃を放つ。
“オリンポスオーバーストリームVer. 2h”
その拳の威力は凄まじく、空を覆っていた黒い雲をも貫いた。




