第18話:東京~京都
前回、第17話にて「諜報隊」と書きましたが「隠密隊」の誤りでした。申し訳ありません。第17話の「諜報隊」と記した部分は「隠密隊」に修正致しました。今後とも、“異界嬢の救済”をよろしくお願いします。では、第18話をお楽しみ下さい。
和神らがとこしえ荘を出てすぐの事。
「この気配間違いない。陽子様だ。」
流麗な薄い金色の髪の女性はそう言うと、急ぎその気配がする方向へ跳び、各班に連絡を取る。
「小暮班、檸檬班、感知したか?」
「こちら檸檬班、感知できません。」
「小暮班、感知。目の前です、目標の他に妖らしき人物を確認。これを排除し、目標に接触します。」
「了解。くれぐれも目標を傷つけないように。」
「了解。」
「檸檬班、新宿方面に目標を感知。南東方向に動いている。小暮班が接触する、至急援護せよ。」
「了解。」
程なくして、小暮班から通信が入るも、それは声なき声であった。
「うわぁぁぁ!!」
「どうした、小暮班!」
「小暮班、通信途絶!」
薄い金色の髪の女性の隣りを駆けている女性が報告する。
「陽子様がやったのか?」
「分かりません。同行者も確認されてましたから、そちらかも知れませんが。」
「こちら檸檬班、小暮班を発見。全員無事です。雷遁の術で麻痺していますが。」
「檸檬班は小暮班を回収し、支部に行け。人間に見られるのは拙いからな。私たちは追跡を続ける。」
「了解。」
通信を終え、陽子の追跡を続行する。
一方、和神たちは新幹線への乗車に成功していた。新幹線内は全体的に空いており、和神たちがいる自由席の車両には10余名ほどしか人はいなかった。3人は車両中央の列に右から陽子、狗美、和神の順に座っていた。
「無賃乗車、初めてです。」
「すみません、急ぎだったもので・・・。」
和神の呟きに狗美の向こうから顔を出した陽子が軽く頭を下げて謝る。3人は新幹線のホームに直接降り、乗車していたのである。無論、降り立つ際は妖術で姿を消していた。
無事に新幹線が動き出し、安心する3人。
「ここまでは順調ですね。追って来た隠密隊は何班かに分かれてわたしを捜していたようで、助かりました。」
「何であいつらはあんなに速かったんだ?いくら私が和神を抱えているとはいえ・・・。」
「あれは恐らく“縮地”という技術でしょう。護国院の中でも隠密隊のみが使えるという特殊な走法らしいです。わたしも詳しくは知りませんが。とはいえ追いつかれても、あの数なら迎撃も容易です。ただ隠密隊の隊長だけは別です。かなり手こずると思うので、出来れば戦いたくないですね。」
「そんなに強いのか?」
「ええ、なにぶん最年少で隠密隊の隊長になって、私の監視役も務めている妖ですからね。」
その時、陽子がどこか嬉しそうな顔をしたような気がした2人だったが、別段触れることはしなかった。
「さて、これからですが、京都駅に着くと隠密隊に囲まれていると思われます。なので、簡単な策を使います。」
「はい。この策が成功した場合は、まっすぐに京都タワーを目指します。」
「京都タワー・・・修学旅行で行ったことありますけど・・・。」
「京都タワーの地下深くに“次元門”があるのです。」
「“次元門”?」
「はい。次元門は、護国院の技術によって『固定された次元孔』です。これを通り、妖界に入ります。」
「もし京都駅に着いた時の“策”っていうのが失敗したら?」
「強行突破しかないです。周囲の人間の方々にも危険が及ぶかも知れません。」
「じゃあ、その“策”ってやつを成功させないとな。」
「ええ、必ず。」
3人が新幹線で移動していることに追手も気付いていた。
「目標が新幹線で西に移動。念のため京都駅に第2部隊を配置させておけ。我々は“途中下車”に備えて徒歩で新幹線を追跡する。」
ここで言う途中下車は途中の駅で下車するという意味と、駅と駅の間の移動中に飛び降りる意味の両者を含んでいた。薄い金色の髪の女性たち3名は新幹線の上に乗り、気を張っていた。が、目標の3人が途中で下車することはなく、約2時間後京都に着いた。駅で待ち構えていた隠密隊約10名程が目標、即ち陽子の姿を探すが、全く見当たらない。
「見つかりません。」
「ここでは下車していないのでは?」
「人間が多過ぎ、視認での判別が困難です!」
「妖の気配も感じません!」
隠密隊の面々が口々に目標は捉えられないと報告する。だが、隠密隊を率いる薄い金色の髪の女性だけは違った。
「上手く撒けましたね。」
陽子がホッと胸を撫で下ろして言う。3人は今、京都駅を出てまっすぐに京都タワーを目指していた。しかし、この3人の姿は本来の姿ではなく、変化の術によって観光客の外国人の姿になっていた。これによって、隠密隊の目を欺いたのである。それでも、妖気によって見つかる可能性もあった。そのため、狗美と陽子は和神と手を繋ぎ、そこから妖気を和神に吸収させ続けることで妖気が表に出るのを最小限に抑えたのである。これが、陽子が新幹線内で言っていた“策”であった。これにより、3人は隠密隊の脇を悠然と通過して行ったのであった。
「恐らく京都タワーの次元門付近は警邏隊が常駐していると思われますが、狗美さんもいるので難なく突破できると思います。」
「ふ、漸く私の出番か。」




