第179話:歓迎
「しっかり捕まってて!」
「はい・・・!」
和神は不死鳥態の美鳥の首元にガシッとしがみついた。それと同時に、2人の上空に無数の不知火が疎らに燻り始める。
“天雷の不知火”
無数の不知火の“種火”から強烈な閃光を伴う稲妻の如き不知火の光線が降り注ぐ。他ならぬ富士見島にいる疾風からの攻撃である。美鳥はこれを身を翻しながら回避し続ける。
(前に狗美たちが戦った時はこんな規模の攻撃はなかった・・・!それだけあの時は力が出せてなかったって事か。)
和神が必死に美鳥にしがみつきながらそう考察していると、今度は前方に不知火が燻りだす。
“火龍の不知火”
巨大な不知火の光線が2人を飲み込んだ。
“金剛の不知火”
美鳥は“火龍の不知火”を受ける直前、和神ごと自身を不知火で包み込んでいた。
「ふぅー。戦闘は苦手だけど防御と回復だけなら疾風にも負けないから!」
「そうですか・・・。」
内心、死ぬかと思った和神だが、それは心に留めておく。
「さぁて、一気に突っ込むよ!」
「!はい!」
美鳥が加速していく。
富士見島・中央部にある花園
「ふむ、来るかフェン。今の某と汝とでは結果は見えているだろうに。」
そう呟きながら疾風は天を見上げる。
大洋上空・富士見島から5㎞地点
「攻撃が止みましたね。」
「来るなら来いってコトでしょう。・・・和神くん、いい?」
「はい?」
美鳥は和神に富士見島に着いた後の行動を指示した。
流界・南極(フウVS神斬&神風)
10分前、フウを乗せた駕籠が到着。あまりの気温の低さに輪入道が機動力を失いかけたため、駕籠は妖界へと撤収した。駕籠がなくとも、フウならば自力でどこへでも行けるため問題はなかった。
体高3mを超える馬の形をした妖・神風の嘶きによって生じる突風をその背に跨る身長3mを超える武者のような姿をした人型の妖・神斬の怒号によって竜巻へと変化させ、周辺地域の気温を奪い、-100℃以下の極低温状態を作り出す。そしてこの極低温の環境下こそが彼らが最も行動しやすい環境であった。
これに対しフウは、例によって風を操り周囲にある竜巻を打ち消そうとしたが、これは愚策であった。フウはこの極低温の環境下で活動するために自身に“風の層”を纏っていたが、この“風の層”の維持と竜巻の打ち消しの両方を行うには予想以上に霊力を消耗してしまうことが分かったのである。
一方で、神斬と神風は自分たちの最善の環境下にいる上、2体で竜巻を形成できる。しかもこの竜巻を作るのにさして妖力を消費していない様子。
この事態にフウは、極低温下での早期決着へと作戦を変更した。
現在。
「そうそうに・・・ケリをつける。」
“風武百連陣”
フウは頭上に様々な風で形成した武器を召喚させ、それを神斬と神風に向けて一斉に飛ばした。風の武器たちは神風の発生させている突風を切り裂きつつ飛んで行く。すると、ここで神斬が動きを見せる。徐に腰に差している刀に手をかける。
“風切【幾重太刀】”
神斬は居合い抜きのように刀を振るった。それは一度に見えたが、無数の斬撃が放たれていた。その上、この斬撃は“風武百連刃”を相殺するだけの数と威力を有していた。
「ただ・・・突っ立っているわけでは・・・ないか。」
そう言うと、フウは周囲の大気を集め、一本の巨大な槍の形へと凝縮させていく。
“ウェントゥス・ゲイボルグ”
しかしこの瞬間、神斬と神風はフウの真横へと踏み込んで来ていた。
「な・・・に・・・!?」
そして、一閃。神斬と神風はフウの後ろに駆け抜けた。神斬は刀をゆっくりと鞘に納める。同時にフウの身体は腹部から真っ二つに両断された。
“霊切【居合太刀】”




