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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第5章:破滅の不死鳥 編
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第171話:七災神・海神

クラーケンは体を前へ向けて海中を高速で泳ぎ、海神ワダツミへと接近。射程に捕らえるや否や、身を翻して脚部を海神へと向けて10本の足を一気に広げ、海神へと襲い掛かった。

が、ここで海神は予想外の行動を執る。下へ向けて両腕を掻き、海面へと急速浮上したのである。15mはあろうかという海神の巨体全体が、そのひと掻きで海上へと飛び出したのである。そして両足の裏を思いきり海面へと打ち付けた。すると、打ち付けた海面が凹み、先ほど海中で人魚たちに放った拳と同じ真空の衝撃を伴って海中にいるクラーケンを襲った。突如海上より発生した真空の衝撃波にクラーケンは成す術もなく海底へと沈んでいった。

更に海神の驚くべき行動は続く。立っているのである、海面に。黒水諸島の島民たちが驚いている間に海神は海面をドシドシと歩きながら黒水諸島へと前進を始めた。

「チィ!駄目だ、第3陣“黒水大銛くろうずのおおもり”を展開しろォ!!」

そう発令するウォーズの背後の台場にU字に上を向けて配置されていた砲台が一斉に海神の方へと向けられる。

妖国連盟から黒水諸島が危機の時のみ使用を許可された黒水諸島の技術のすいを結集した特製の巨大な銛である。かつて黒水諸島を襲った体長100mを超える巨大クジラ・鯨王バハムートでさえ、この銛を10発もらったことをきっかけに討伐されたという。

「撃てェェーーー!!」

ウォーズの号令で、用意された全50門の砲門から“黒水大銛”が一斉に放たれた。巨大な銛の先端は真っ直ぐに海神に飛んで行き、見事命中する。

ガッ!ガガガッ!

“黒水大銛”は確かに海神に命中した。否、現在進行形で命中している。だが、海神はその銛を避けることも防ぐこともなく、ただただ何事も無いように前進を続けているのである。腹部に当たろうが、胸部に当たろうが、足に、腕に、顔に、角に、頭に当たろうが、怯むことすらなく前進を続けている。

「バケモノ・・・。」

黒水諸島の者達の脳裏にその言葉が過ったその時、海神の前進が止まった。それは“黒水大銛”による成果ではなく、海神の脚を捕らえた“触手”によるものであった。触手はそのまま海神を海中へと引きずり込んでいった。

クラーケンである。

クラーケンは再び海面へ浮上しようともがく海神の両腕を腕触と呼ばれる2本の長い脚で封じ、どんどんと海底へと引き込んで行く。無論、“黒水大銛”を受けてもビクともしない海神の躯体に水圧を幾らかけたところで意味がないということは明白であった。では、何故クラーケンは海底へ向かうのか?

クラーケンは知っていたのである。黒水諸島の近海の海底には亀裂があり、そこからマグマが覗いているということを。それは妖界・地球の内に流れるマントルに他ならず、そして妖界のマントルは流界の約100倍・およそ10万℃は下らないのである。クラーケンは、覚悟していた。その身と共に、海神を道連れにするという覚悟を。

「ヴオオオオオオオオオオオオ!!」

海神の咆哮が海底の闇へと消えていった。


約5分。黒水諸島に静寂が訪れた。この間、黒水諸島に詰めた戦士たちは何もしていなかったわけではない。砲門に再び“黒水大銛”を込め、陣形を維持し、臨戦態勢を解いてはいなかった。それでも。それでも尚、再び海上に飛び出し、海面に仁王立ちする海神の姿を見ると、戦士たちの間には絶望が立ち込め始めていた。

クラーケンは焼け死んだのである。海神を道連れにせんと自ら飛び込んだマントルの中で。海神は焼け死ななかったのである。妖界のマントルを持ってしても。海神はただ待っていた。クラーケンが焼け死に、おのずと自らの身体から触手が離れるのを。ただ待って、クラーケンが焼け死ぬのを見届けた後、マントルをひと掻き、海中をひと掻きして海上へと舞い戻ったのである。

海神は、再び前進を始めた。もはや黒水諸島・本島の港までは60m程度しかなかった。

「く・・・黒水大銛用意・・・!!」

ウォーズの掛け声に、再び砲門が海神の方を向いた。その時である。白い光が海神へと真っ直ぐに飛んで行った。海神は自身の目の前に来たその光をハエでも撃ち落とすように手で払うが、光は華麗にこれを回避し、海神の眼前へと到達し、光から更なる閃光が放たれた。

“陽撃【極大式】”

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