第161話:不知火美鳥
イックスが飛び立って間もなくサラが癒しの不死鳥ことフェンのもとへ駆けつけた。
「ちょっと逃がしちゃって・・・!!」
逃がしちゃって良かったの!?,と言いかけてサラは沈黙した。その原因はフェンの顔を見たことによる“驚愕”であった。
「わたしは逃がしてよかったかと思います。今のわたしたちではあの破滅の不死鳥を数秒拘束する事すら難しかったです。それにミネルヴァ様の消耗も激しかったですし。一時的とはいえ危機が去ったのは・・・。」
フェンの後ろ側から来たミネルヴァをお姫様だっこのように抱えた陽子はサラが口をあんぐりと開けたサラに気付き、言葉を止めた。
「私もそう思いますよ。陽子さんありがとうございます、もう大丈夫です。」
そう言ってミネルヴァは陽子の腕から降り、宙に立つ。
“大天使の福音”
ミネルヴァは“アークエンジェルアローサル”によって背から生えた天力の翼を消滅させ、自身の傷の一切を治癒した。
「私たちの今の役割は破滅の不死鳥を癒しの不死鳥がいらっしゃるまで止めておくことでした。そういう意味では目的は達せられたということに・・・サラ、聞いてます?」
ミネルヴァも驚愕に震えるサラに気付いた。
「ふふ、そんなに驚かなくても。」
京の北、新式・天帝結界を少し出た場所
「どうやら破滅の不死鳥は去ったようだな。」
「罠、使いませんでしたね。」
陰美の指揮のもと和神と陰陽隊員の何名かで罠を設置していた。
「元より万一に備えて,だからな。使わないに越したことはない。いつまた破滅の不死鳥が戻って来るか分からない。罠はここに残しておくぞ。」
そこに隠密隊員がやって来た。
「陰美様、陽子様たちがお戻りに。」
「そうか。よし、戻るぞ。」
京北部・対破滅の不死鳥作戦本部
「狗美、おかえり。」
「ん・・・ああ、和神。ただいま。」
何かに動揺している様子の狗美に、和神は不安を抱く。まさか誰か殺られてしまったのでは,と。
「全員無事ですか?姉様。」
陰美も気になったのか、陽子に安否確認をする。
「え、あ、うん。全員無事だよ。」
「?では何故そんな表情を?破滅の不死鳥はそれほどの脅威であったと?」
「破滅の不死鳥は確かに脅威だったよ。全快に近付いていくに連れて今のわたしたちじゃ動きを止めることもできなくなっていったからね・・・。でも、今はそれよりね・・・ほら、あの人が癒しの不死鳥だよ。」
そう言って陽子が指さす方を和神と陰美は見る。セミロングの黒髪に真っ白な袴姿の女性がミネルヴァと話していた。人間態かな,というのが和神の最初の感想であったが、すぐに違う感想が浮かんできた。
(見たことあるような・・・。)
そう思った数秒後、彼女は振り返り、和神の方を見た。
「あ、和神くん!」
「!!?大家さん!?」
和神の住むアパート“とこしえ荘”の大家さんがそこにいた。いつもの通り軽い足取りで駆けてくる大家さんに和神は確認する。
「大家さんが、癒しの不死鳥・・・ですか?」
「そ。フェン・・・ってよく呼ばれるけど、不知火美鳥って呼ばれる方が嬉しい・・・けど和神くんは“大家さん”が一番呼びやすいか。」
間違いなく大家さんが“癒しの不死鳥”であることを確認した和神はその事実をどうにか受け容れようとした。
「黙っててごめんね。けど私が動くとハヤテの目覚めも早くなっちゃうからさ。」
「あ、いえ・・・隠されてたことは別に何とも・・・。」
「ほんと?大変な時も手伝えなかったし・・・。」
和神と美鳥が積もる話に蕾を付け始めたくらいに、ミネルヴァが申し訳なさそうに会話に介入してきた。
「あの・・・すみませんが、破滅の不死鳥の今後のことについて伺いたいのですが・・・。」
「あ、そうだね。ごめんごめん。じゃあ話の続きは作戦会議の後でね♪」




