第157話:エルフVS不死鳥
“アークエンジェルアローサル”発動から3分が経過していた。超高速でイックスに“エクスカリバー”を振るい続けるミネルヴァだが、イックスは“剣の不知火”でこれを迎撃し続けていた。捌ききれず、“エクスカリバー”が掠めることは何度かあり、通常の剣であれば切り傷程度で済むところが、天力を結集した“エクスカリバー”の“掠める”は最早真剣の袈裟斬りに値する。つまり、腕を掠めれば腕は飛び、胴を掠めれば内臓まで斬り裂かれるわけである。無論、“エクスカリバー”が掠ってこれで済むのは不死鳥・イックスだからであり、人間に“エクスカリバー”が掠めれば、否、“エクスカリバー”に近付いただけで蒸発し兼ねないであろう。だが、イックスは斬り飛ばされた腕を着物ごと瞬時に再生させ、裂かれた身体も同じく再生していく。ミネルヴァは“不死”という言葉の意味を犇々《ひしひし》と実感していた。加えて、1分を過ぎた頃から掠めることすら少なくなり、2分を過ぎてからは完全に当たらなくなっていた。
「ふむ・・・汝にも感謝しなければならんな。」
「!・・・感謝?」
「汝のお陰で鈍っていた五体が目覚めていくようだ。」
ガキィン・・・!!
ミネルヴァの超高速の剣戟が止められた。
“エクスカリバー・カーリー”
荒れ狂う鬼女の如く“エクスカリバー”を振るい続けるミネルヴァ。その振るう速度は分身を伴って“エクスカリバー”が10数本あるかのように見える。しかし、五体の目覚めを感じ始めたイックスには通じなかった。全てを受け流されていく。
「大天使の力、剣に留めればこの程度か。」
“エクスカリバー”を弾き、ミネルヴァを後退させ、空いている左手に力を籠める。
“閃の不知火”
瞬間、不知火がミネルヴァを光の速度で襲う。
“ヴィーナスバースト”
ミネルヴァの左手より凄まじい天力の光線が放たれ、“閃の不知火”と衝突。激しい衝撃を伴って相殺した。この衝撃によって狗美とフウは30m以上遠くへと飛ばされ、地面には直径10m、深さ5mの窪地が作り出された。ミネルヴァとイックスはその窪地の上を浮遊していた。
最も驚くべきは、“相殺”であったということであろう。“ヴィーナスバースト”が大抵の攻撃ならば“飲み込む”ことができる火力を誇ることは言うまでもない。不死鳥の持つ力とはこれほどのものなのか,とミネルヴァは焦りの色を隠せなかった。
「流石だな、エルフ。先に消した妖者は自身が消されたことにも気付いておるまい。」
「それだけの力を持っていれば、崇められましょう・・・。何故破滅など・・・!」
「時間稼ぎか。先の女は心よりの問いであったが。」
イックスは左手をミネルヴァに向ける。
“砲の不知火”
巨大な不知火の砲弾がミネルヴァに向かって飛来する。“閃の不知火”よりは遅いが、そこに籠められた威力が“閃の不知火”を凌ぐのは明らかであった。ミネルヴァは両手で握った“エクスカリバー”の鋩を前へと出した。
「方角的には問題ないはずです・・・!」
“アヴァロンズ・シャイン”
その時、世界は光に包まれたようであった。直視できないほどの輝きを持つ光線が10㎞先まで伸びたのである。言うまでもなく“砲の不知火”は飲み込まれ、イックスも完全に飲み込まれていた。浮遊した状態で放ったため大地への被害は出ず、方角も北東を向いていたため、高い建造物などは存在しておらず被害はなかった。ただ少し、空間が揺らいでいるようには見えたが。
「はぁ、はぁ・・・。完全に消滅させましたが・・・これでも蘇るのでしょうか・・・?」
ミネルヴァの懸念に答えるように空中に不知火が発生した。




