第153話:破滅の不死鳥
司守の間に護国隊の兵士が駆け込んでくる。
「報告します!“転生の洞窟”上空に巨大な白い鳥類のような影が出現!凄まじい衝撃波が周囲5㎞に放たれている模様です!」
「!もう不死鳥が・・・!?」
そう口走り焦る難波を余所に、陰美は駆けこんできた兵士に冷静に指示を出す。
「それには近付かないよう全隊に伝えろ。一兵士がどうにかできるレベルのものじゃない。」
「はっ!!」
兵士は入って来たときと同様に駆け出して行った。
「ふん、また予定より早くなったな。だが今回はミネルヴァ様たちが既にここにいらっしゃるのが救いです。」
状況を整理する陰美だが、護国隊長・城ケ崎は不死鳥の復活とは別に一抹の不安を抱えていた。それを察した陽子が訊ねる。
「城ケ崎さん?」
「・・・まだ一般兵士には不死鳥の情報を伝達しておりません。この会議が済み次第伝える予定だったのです。・・・外を巡回している兵は緊急対処を行ってしまう恐れがあります。」
「!!」
転生の洞窟近く
巡回していた護国隊・陰陽隊・隠密隊の隊員たちが各々2人ずつ計6名集っていた。
「何だ、あれは?」
「・・・凄まじい力を感じる・・・。」
「敵、なのか?」
「何にせよ報告だ。隠密隊、報告に。」
「了解。」
隠密隊員が護国院へ向かおうとした瞬間、巨大な鳥類の白い影より護国院へ向かって巨大な光線が放たれ“新式・天帝結界”を直撃した。バリバリバリ,とけたたましい轟音を響かせて拮抗する力。しかし、どうにか“新式・天帝結界”は持ちこたえた。
「!!」
「何だ!今の閃光は・・・!?」
狼狽える隊員たちであったが、すぐに上空の存在の変化に口を噤む。巨大な鳥類の白い影は自身の中心部に光を収束させてゆき、やがてそれは背から白く揺らめく翼を生やし、白い長髪に白い着物を纏った男へと姿を変えたのである。
「ふん・・・流石に鈍っているものだ。不死鳥の某にしても永く悠久に感じられる程の時を封じられていた故、必定ではあると思うが・・・。」
呟く“白い男”に、護国隊員が警告する。
「警告する!ここは護国院の管理する土地である!先の閃光は護国院への攻撃行為であり・・・」
“白い男”は指先に白い光を集める。
「!?聞く耳も持たないか!散開!」
隊員たちは散り散りに飛び退いた。
“糸の不知火”
“白い男”の指先は飛び退いた護国隊員の1人、警告を行っていた男を追っていた。そして指先から放たれた白く細い光線はその護国隊員を的確に捉えた。
「うぐっ・・・あああああああああああ!!」
光線に貫かれた箇所が白く発火し、護国隊員は見る見るうちに白い炎に包まれていく。
他の護国隊員が彼の救援に向かおうとするが、それを“白い男”の指が狙う。
“陰陽術・火遁・爆散砲”
陰陽隊員が“白い男”の行動を阻まんと派手に爆発する火炎弾を撃ち込む。視界を奪う目的もあった。だが、“白い男”は予定通り指先から白く細い光線を放つ。
「ぐあっ・・・うあああああああ!!」
護国隊員2名は白い炎に焼き落ちていった。
“陰陽術・氷遁・凍結緊縛”
陰陽隊の2名が氷の鎖を放ち、見事“白い男”に命中。一瞬で凍結する。
“陰陽術・氷遁・零下の霧”
更に凍結を確実かつ強固なものにするために氷点下の霧を吹きかける。
「よし・・・!捕らえたか・・・。」
ピキッ,という凍てつく音がした。それは“白い男”が自身を凍らせる氷を砕こうとする音ではなく、陰陽隊の2人自身が凍てついていく音であった。
「なっ・・・!?これは!?」
陰陽隊員の2人の腹部には氷の鎖が繋がれていた。それは凍結している“白い男”から伸びるもの。
「成程、成程。妖術は斯様な応用を出来るものであったか。1つ学びを得た。感謝しよう雑兵ども。」
陰陽隊2人は自身が使った術をその身に受け、凍てつき落ちて行き、着地と同時に粉々に砕け散った。
凍てついていた“白い男”は白い炎で自らを包んで氷を溶かした。その“白い男”の首が背後から短刀で貫かれた。
「何者か知らんが、どのみち極刑であろう。」
隠密隊員であった。
「気配を消す術か。どうやら某が思うより進化を遂げたようだな、妖。」
貫かれた首の傷口が白い炎で覆われる。
「某は不死鳥、イックス。この国での名は不知火疾風。全ての世界を破滅させる“破滅の不死鳥”だ。」
“閃の不知火”
一瞬、眩く光ったかと思うと、隠密隊員は消滅していた。




