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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第4.5章:許嫁の復讐 編
142/370

第142話:行動開始と流界の札遊び

妖界・京の北 大福家が傭兵を集めている廃村

「本当に塔が建っているな。五重塔か?」

廃村に着いた陰美たち一行はまず村の様子を伺っていた。見張り・・・というわけでもなく、ただ村を徘徊している傭兵が2~3名、ボロ小屋にもたれて立っている傭兵や岩に腰かけて武器を研ぐ傭兵などが見受けられる。まだ何か指示を受けているというわけではないようである。

「まとまりがないな。一網打尽とは行かないが、統率が取れていない今は好機だ。」

陰美は5名の部下を東西南北へ走らせる。各々傭兵を無力化しつつ五重塔を目指し、制圧するという手筈である。そして作戦決行の合図は、狗美が敵陣の中央へ飛び込み暴れることである。

「なあ、陰美。」

「どうした?」

「このキツネのお面、護国院だってバレないか?」

陰美、狗美始め5名の隠密隊員も全員黒ずくめの忍者装束に加えてキツネの面を被っていた。

「お前はまた文句か?この面はかつて実際に京の周辺にいた野盗集団が付けていた面を模したものだ。豪族も何件か被害に遭っている。つまり豪族に野盗としての印象を与えるならばこれ程効果的な方法はないということだ。」

狗美は渋々面を被る。

「分かったら行動開始だ。あそこにたむろしている傭兵どもの中央の焚火を消しつつ奇襲だ。出来るな?」

「ああ。」

頷くと、狗美は隠れていた茂みから空に向かって飛び出し、焚火へと着地した。その風圧によって焚火の火は消灯した。

「あん?」

傭兵たちが状況を理解する前に陰美と5名の部下が奇襲を仕掛ける。行動開始である。


その頃、護国院・陽子の部屋

「ドス!」

陽子の部屋には流界から流れてきた『DOS』というカードゲームがあった。これは和神にも馴染み深いカードゲームであった。

数字カードを2枚以上揃えて手札から捨ててゆき、ドローやスキップ、シャッフルなどの効果カードを駆使して手札を全て捨てきった人が勝利するゲームである。ただし、最後に2枚同じ数字のカードを残し、「ドス!」とコールしなければあがれないという特殊なルールがある。

陽子はこれをずっとやりたがっていたのだが、立場上1回も出来ておらず、京都守護妖になる際の心残りの1つであった。ようやく遊ぶことができ、陽子は非常に楽しそうである。そんな無邪気な陽子の笑顔を見ていると和神そんな陽子が婚約する予定だった大福福士という男がどんな輩であったのか少し気になってきた。だが陽子にとってはいい思い出ではないだろうし話したくもないだろうと和神が口を開くことはなかった。そして口を開かなかった為、「ドス」コールをし忘れてあがれなかった。

「和神さんドスって言ってないからだめです。はい1枚引く。」

先にあがった珠からカードを渡される。DOSを始めてからしばらく経ち、陽子が席を立った。台所から飲み物を持ってくると言う。部屋を出る際は2人1組で出るよう千明・千影姉妹から言われていたため、陽子は流乃とともに部屋を出て行った。和神はここだ,と思い、部屋に残った珠に訊いてみた。

「あの、陽子さんの許嫁だった大福福士ってどんなだったんですか?ヒドかったとは聞いていたんですけど、具体的には知らなくて・・・。」

珠は仮にも豪族という上流階級の妖の話を和神にすべきか少し迷ったが、自分が救えなかった陽子を救ってくれたという事実を思い返し、話を始めた。


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