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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第4.5章:許嫁の復讐 編
139/370

第139話:豪族

ミネルヴァが私的な表彰をサラに授与する1週間前、即ちミネルヴァとフウが西洋妖界へ帰ったその日、事件が起きた。先のメリディエス帝国との戦争の終結から僅か1週間、平和とは長続きしないものなのか。

「先程メリディエス帝国の残党が居ないか周辺を調査・巡回していた隊員から報告があがりまして。」

陰美は護国院・司守の間にて、まだ護国院に残っていた和神と狗美、そしてこの事件の中心となる姉・陽子を招集していた。ここには護国院長と護国隊長・天ヶ崎も同席している。

「天帝結界を出た北の森の廃村に簡易的な城のような建造物が確認され、村には傭兵が集められているとのこと。これらを招集した者は他ならぬ“豪族”・大福おおふく家だということも判明した。」

大福家。護国院や王族とも縁の深い日本妖界の貴族・“豪族”の一家系である。大福家の名を聞いた瞬間に陽子は怪訝な顔をした。

「姉様、許嫁と結婚しなかったシワ寄せとでも言いましょうか、あの福士ふくし様の姿が確認されております。」

大福福士おおふくふくし。陽子の許嫁の名であった。陽子が“謀反”を起こす引き金となった人物ということである。和神たちが陽子の“謀反”を援助し、“自由”を勝ち取った一件でこの者との婚約は白紙に戻っていたが、プライドの高い豪族は陽子と結婚できなかったことで恥をかかされたと謀反を企てたようである。この時期になったのは、護国院が戦後の後始末で奔走している間に襲撃しようという算段からであろうと陰美は推測していた。

ところが、プライドの高い豪族は襲撃するための隠れ家まで豪華にしないと気が済まないため、隠れ家を豪奢な塔にしてしまったために発見されたらしい。

和神と狗美は一連の説明を受けた。そしてここで、陽子と陰美の父である護国院長が口を開いた。

「豪族は太古の昔に王族と護国院を作りたもうた者達の子孫の家系なのだが、その一部は最早日本妖界の膿と化しているということが最近の調べで明らかとなったのだ。しかしこれは公にはなっていない。陽子が謀反・・・いや、婚約に反抗しなければ豪族の調査など畏れ多く出来得ないことであった。それほどまでに京や護国院を始めとする妖界は豪族を偉大な存在として認識されているのだ。豪族の一部がろくでなしになっているなど、公表できぬ上、そのようなことを公表すれば妖界全体を敵に回しかねないのだ。そしてそれは逆の事が起きても同じこと。即ち、豪族に謀反を起こされれば、護国院への不審を生む可能性が濃厚なのだ。かと言って謀反を起こされる前に護国院われらが直接“対処”するわけにも行かぬ・・・。」

ここまで聞いて和神と狗美は悟った。つまりは機密性の高い隠密隊と部外者である和神と狗美に何とかしてほしい,ということらしい。

「私は良いが、和神はダメだ。人間だぞ。」

狗美が口を開く。陰美がこれに答える。

「そうだな、いいだろう。和神は残れ。あと付いて来る気になっている姉様。貴女もダメです。ここに残ってください。」

「でも、これはわたしの問題で・・・。」

「姉様の問題は護国院全体の問題です。それにあの許嫁と姉様を2度と会わせたくありませんので。」

「それはわたしだって会いたくないよ、でも・・・!」

「ダメ、ゼッタイ。万が一にも姉様が囚われたら、それこそ我らはどうしようもなくなるのですから。」

妹の説得に、陽子は渋々頷いた。かくして、陰美たち隠密隊の精鋭たちと、狗美で豪族への“対処”へと向かうことになった。


新章『許嫁の復讐』編、始まります。

0.5章なのでコンパクトにまとめる予定です。(4章が思いのほか長くなってしまったので。)

今後も『異界嬢の救済』をよろしくお願いします。

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