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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第4章:帝国の侵攻 編
138/370

第138話:私的式典

和神と狗美が表彰された式典の翌日にはミネルヴァとフウは西洋妖界に帰還する運びとなっていた。サンクティタス王国ではミネルヴァとフウを称える表彰式が催されるためと、ミネルヴァは今回の戦争に関する報告など他にも様々仕事があるということで、フウは今回の戦争において自分に多くの霊力を割り振ったことで乱れた世界の大気バランスの調整を行うということで早々の帰還となった。本来は2人とも戦争終息後即刻の帰還を求められていたが、戦没者の葬儀への参列を理由に帰還までの期間を延長していたのである。実のところ、和神と狗美2人の安否確認が本当の理由であったのは言うまでもないが、ついでに2人の晴れ舞台も見て行ってしまったという所である。

サンクティタス王国へ帰る“竜車”の中、ミネルヴァはフウに打ち明ける。

「少し前のわたくしではこのようなことはあり得ませんでした。」

「・・・即時帰還しなかったことか・・・?」

「はい。それも誰かの目覚めを待ってなど・・・嘘まで吐いて。」

「・・・そうか・・・我もだ。日本周りの大気は整えていたが・・・西洋の大気を乱したまま放置しておくなど・・・初めてのことであり、そうあっていい事ではない。」

「フウ様・・・。」

「ふふ・・・“フウ”か・・・。確実に彼の者の所為であろうな。」

「・・・ええ。しかしこの変化は・・・不思議と悪い気はしません。」

「・・・そうか・・・我もだ。」


ミネルヴァ、フウがサンクティタス王国に降り立った1週間後。

貴族院正門前

招待状を手にしたサラが立っていた。

「来ましたか、サキュバス。」

ミネルヴァを敬愛して止まないピクシー“大尉”が出迎えていた。

「やー!かーわーいーいー!軍服コスプレにしか見えないし!」

サラはピクシーを見るなり身をくねらせて喜んでいる。

「っ・・・!黙りなさいサキュバス!ミネルヴァ様の客でなければとっくに首を刎ねているところです!」

「やー!強がりもカワイイ!!」

「っ・・・!と、とにかくこっちに来なさい、サキュバス!」

満更でもなさげなピクシー大尉はサラを連れて貴族院の正門ではなく、別の場所へと歩み出した。

「どこ行くの?」

「貴族院の離宮です。現在は祭祀場として使われている場所です。」

「ふーん・・・お祭りに呼ばれたの?え、貴族×お祭り=舞踏会的な!?」

「どこのエルフが魔物を舞踏会に招待するのよ、まったく。」

ピクシー大尉は両手を挙げて首を振りながら呆れた様子で応える。

「・・・ところでサキュバス、あなたもう1人一緒に招待されていたでしょう?どうしました?」

「あー、テラコッタちゃんね。あのコ、なんか今回の戦争で自分の非力さを痛感しました,とか言って修行しに行っちゃったんだよね~。別に非力じゃないと思うんだけど・・・あれ以上ムキムキになったらどっかのモデルみたいにもうちょい筋力落とせーって言おうかなぁ~って・・・聞いてる?」

「・・・着きましたよ。貴族院離宮です。中に入りますよ。」

貴族院離宮の中は貴族院の内部同様に荘厳な装飾が施されていた。サラがその装飾に見惚れながらピクシー大尉の後ろを歩いていると目の前に大きな扉が現れた。

「ミネルヴァ様、客人をお連れしました。入ります。」

扉を開けると、そこには教会のような空間が広がっており、その部屋の中央にある十字架の前にミネルヴァがいた。

「いらっしゃいましたか、サラ。」

「う、うん・・・。」

サラはたじろいだ。取り分け動揺することの少ないサラが、ミネルヴァの放つ余りにも清廉な空気感に。その空気感はミネルヴァが身に纏う豪華かつ質素な透き通らんばかりの白いドレスによるところも大きかった。

(ヤバ・・・惚れそう・・・。)

「?どうしました?早くこちらへ。」

「へ、へい・・・!」

サラは焦り気味にそそくさと前へ出る。近付くのも憚られるようなオーラに圧倒されながらどうにかミネルヴァの前まで辿り着く。

「サラ、テラコッタさんはどうしました?」

「修行に出てしまったようです・・・。」

ピクシー大尉が小声で伝える。

「そうですか。では貴女が代理でお渡しください。」

「渡す・・・?」

「こちらを。」

そう言うとミネルヴァはこれまた豪華な箱を手渡す。開けると、中にはオニキスがあしらわれたネックレスが入っていた。

「これは・・・!?」

「貴女とテラコッタさんは今回の戦争で素晴らしい働きをしました。その功績を護国院も貴族院も正式には認めることは出来ませんが、わたくしが個人的に表彰いたします。わたくしと祭祀用の礼服とわたくしの一番の部下だけで場所も離宮ではありますが、これでも精一杯の謝辞のつもりです。どうか、お受け取り下さい。」

「・・・あ・・・ミーちゃ・・・いや、ミネルヴァさん・・・。」

サラは無意識に左目から涙を零していた。

「・・・あ・・・ありがとねっ♪」

精一杯の笑顔で返した。それを受けて、ミネルヴァもよかった,と心からの笑みを浮かべた。


次回は休載致します。

なお、次回より新章突入致します。

これからも『異界嬢の救済』を宜しくお願い致します。

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