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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第4章:帝国の侵攻 編
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第134話:この3日間

和神が気絶同然に眠っている間に色々なことがあった。

まず、和神が意識を失ってから程なくして日本に最も近い国『』より援軍が到着したが、総勢1万を超える『華』の軍隊の仕事は遺体の運搬や瓦礫の撤去といった戦場の後始末となっていた。「ワタシたちこんなコトのためにヒビタンレンしてるんじゃないヨ!」とは『華』の援軍の総隊長の談。

『華』の援軍は龍を用いて空を駆けることで無類の制空力を有しているが、その“騎龍隊”が南方に帝国の基地を見つけ、護国隊と共に向かい千明・千影と合流し、基地にいたリキッド准将と研究員十数名を捕縛した。捕縛された皆が協力的で、現在も彼らからもたらされる情報を頼りに基地の捜査は続いており、全てを調べるには2、3年の歳月を要すると見られている。夜にはサンクティタス王国からの援軍も到着し、『華』同様に戦場となった土地の後始末を始めた。

次に、降伏したメリディエス帝国王妃ディアナとメリディエス帝国軍人たちは、サンクティタス王国軍とともに“次元孔生成装置”を使ってメリディエス帝国へ赴き、属国を含む全ての国民に事態を説明。今後はメリディエス帝国ではなく、サンクティタス王国の領地となることを告げると、国民からは大歓声が上がったという。余程の悪政だったのだろう,と同行したサンクティタス王国軍人は語る。今後は降伏してきた少佐以上の階級を持つ軍人や大将マキーナの身体を検査することで日本のメリディエス基地の情報と併せてメリディエスの技術を研究していくことになりそうである。ちなみに、降伏してきた軍人たちは急遽設置されたメリディエス帝国軍人収容施設に暫くは腰を落ち着けることになり、王妃ディアナは貴族階層の住む土地に軟禁されることとなった。


援軍と護国隊の皆が戦場の後始末をしているところで、和神たち前線で戦っていた者達は疲弊し切っていた。特に和神と陽子と陰美の状態は酷く、護国隊によって急ぎ京まで運ばれた。狗美とミネルヴァとフウはそこまでの重体ではなかったが、護国隊の用意した“輪入道車”に乗せてもらって京まで向かった。

「アタシたちはいなかったってことで。んじゃまた!」

そう言って早々に姿を消してしまったのはサラとテラコッタ。珍しくミネルヴァが引き留めたが、どの道魔物は“天帝結界”には入れないから,と近くの“次元孔”を目指して飛んで行ってしまった。

「片腕を飛ばされても尚、戦い続けた魔物せんしを“いなかったことに”など・・・。」

ミネルヴァに一抹のわだかまりのようなものが残っていた。


3日経ち、戦場であった奈良は概ね復元されていた。護国隊と『華』の援軍とサンクティタスの援軍、総勢2万の妖が夜通し事に当たればこのくらいは当然であった。

「明日、戦没者の葬儀が行われるのですが・・・その・・・。」

口籠る陽子の様子を見て和神は察する。

「・・・人間がいると色々面倒、ですよね。」

「・・・ごめんなさい。」

申し訳なさそうにする陽子の後ろから見慣れたスーツの女性が歩いてくる。

「姉様が謝ることではありません。混乱を避ける措置です。その間に休息を取り、式典に備えよ,ということです。」

陰美である。陰美の言う“式典”というのが和神は気になった。

「式典とは?」

「はぁ~。」

呆れたように嘆息を漏らしてから説明する陰美。

「あれだけの活躍をしたのだから、表彰されて当然であろう?お前も狗美も姉様もミネルヴァ様もフウ様も。本来ならばサラやテラコッタも同様にすべきなのだろうが・・・。」

結界に入れない以上、残念だが仕方がない。しかし和神は、陰美やミネルヴァの中で魔物サラへの価値観が変容して行っていることに少し喜びのような感情ものを感じていた。

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