第132話:繋ぎ止める連携
「陰美さん・・・!魔剣を引き抜かせないようにして下さい!」
和神が魔剣で刺し貫かれた時、最も近くにいて、最も早く動き出して和神のもとへ向かっていたのが陰美であった。陰美は和神の言葉に疑念を持つが、彼女の姉がすぐに実行に移すのを見て彼女も行動を起こした。
“金縛り”
和神が魔剣で刺し貫かれた後、最も早く動き出したのは陰美であったが、彼女の姉、即ち陽子はこれより早く、狗美がミネルヴァの名を叫んだ時点で動き出していたのである。“憑依”の反動で身動きが取れなかった陽子であったが、和神が狙われている,と悟った瞬間、何故か身体は動いていた。
「ぐぬ・・・!」
姉妹のかけた金縛りは全身ではなく、腕部へと特化していた。現在の弱っている状態の姉妹では全身に強力な金縛りをかけるのは難しかったが故の苦肉の策であった。とはいえ、アダマス元帥が魔剣を引き抜くのは阻止できた。だが、腕が動かせないだけであるアダマス元帥は今度は脚力を使って後退し、体ごと魔剣を引き抜こうとしていた。
“ミルキー・スピア”
“黒槍”
白と黒、天力と魔力の槍が同時にアダマス元帥の脚部を貫き、大地へと繋ぎ止めた。言わずもがな、ミネルヴァとサラである。
「おのれ・・・!ぐおおお!!」
アダマス元帥の体内へと侵入した“天力の魔力包み”がその真価を見せ始めていた。
「ならば・・・!」
アダマス元帥は、このあと自身の身体に起こる現象を理解していた。理解していたからこそ、最悪の手段をとった。
“魔結界”
自身が周囲に撒き散らしていた禍々しい魔力を、自身の周囲を覆う結界として集約したのである。結界の中には和神、陽子、陰美、ミネルヴァ、サラ、そしてアダマス元帥自身がいた。
「最早これまで・・・ならば道連れだ!“受け容れし者”とその取り巻きども!この偉大なる王とともに冥界へと参ろうぞ!!」
“陽撃”
結界の中から陽子が破壊を試みるも、全快時ならいざ知らず今の陽子の妖力では兆しも見えなかった。陽子がそんな状態では陰美にも当然破れず、ミネルヴァは魔力の結界の中では完全に能力を封じられていた。サラはまだ元気そうだが、それでもこの結界を破るのは難しそうである。
「これ、やばくない?」
“風武百連陣・一槍”
結界の外にいるフウが“風武百連陣”の風の力を一点に集中させて打ち込むも、結界はビクともしない。狗美も必死に結界に拳を打ち込むが同じであった。
「和神・・・!」
焦る狗美とフウにかける声があった。
「お2人とも、離れて!」
「無駄だよ、小娘ども。この結界はバラまいていた私の魔力を凝縮して作り上げた“究極の盾”だ。何者にも壊せはしない!策に溺れたな、“受け容れし者”!!」
余裕の笑みで自身の体内から齎される死を待つアダマス元帥。
“オリンポスオーバーブロウVer.アダマスブースト”
天が割れたかのような凄まじい爆発音とともにアダマス元帥自慢の“究極の盾”がブチ抜かれた。アダマス元帥が放った“高火力火炎放射”を飲み込んだテラコッタの体内には、オーバーヒートするほどの熱が蓄積され、それを今まで何とか体内に留めていたのである。その熱を利用して放たれた“オリンポスオーバーブロウ”の威力は、テラコッタ史上最強のものであった。
「バカな・・・!この結界が、破られるだと・・・!?ぐおっ!!?」
結界を破られ、焦りと絶望が脳裏を過ったアダマス元帥に、限界が急襲した。
「ぐおおおおおおおおおおあああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」




