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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第4章:帝国の侵攻 編
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第130話:アダマスの鋩

アダマス元帥が高速で魔剣を振るい、狗美はこれを避けて隙を見て腹部に蹴りを入れる。踏み留まって再び二振りの魔剣で乱舞するアダマス元帥。これを往なしきったのち、爪の斬撃で胸部を裂く狗美。痛みを堪えつつ再び魔剣を、躱して攻撃を・・・。それを幾度も繰り返していく内、アダマス元帥の動きが鈍り始め、やがて狗美の攻撃が連続で当たるようになる。狗美は、魔剣を弾いて腹部に蹴り、屈んだ所の顔面に膝蹴り、仰け反った体に怒涛の乱打を叩き込み、最後に跳び回し蹴りで吹っ飛ばし、フウの形成している大気の壁に激突させた。アダマス元帥は吐血し、膝を着く。

「ぐふっ・・・!やりおる。」

「弱っているのは陽子たちだけではなかったようだな。お前、ずっと無駄に魔力を撒き散らしているだろう。何故だ?」

アダマス元帥は最初に奈良に降り立った時に禍々しい魔力を放ち戦場に充満させていたが、それは現在も継続していた。

「フン・・・。強き者には解るまい。これは敵への“威圧”と味方への“鼓舞”、加えて魔物はともかく他の世界の生物の能力を妨げる。そして、周囲の状況を捉えられる。決して無駄などではない。弱者は無駄な事などせぬ。現にこの力で僧兵の長を討ち、撤退に追いやったのだ。」

事実、僧兵部隊の長・玄斎はこの魔力によって存在を捉えられて敗北した。現状も、サラとテラコッタ以外の者の回復速度は15%ほど低下しており、特に魔力と対極に位置する天力を有するミネルヴァは25%以上も低下していた。

「・・・そうか。だが状況が捉えられても、動いたり防いだり仕留めたりする魔力が無ければ話にならないだろう。」

「左様・・・。」

アダマス元帥は魔剣を支えにゆっくりと立ち上がる。

「私に貴様を仕留めるだけの力が残っていないとでも思っているのか・・・?舐めるなよ、小娘が・・・!850年間、あの日の報復だけを願い、考え、生きてきた我が復讐心・・・!その身に刻むがよい!」

アダマス元帥は両の魔剣を構え、全身に魔力を漲らせる。それに応えるように狗美も妖力を滾らせる。2人の間に張り詰めた緊張の水面から、一滴のしずくが零れ落ちた瞬間とき。両者は同時に地を蹴り、互いに向かい突撃する。

金剛瞬刹剣閃こんごうしゅんせつけんせん

アダマス元帥は狗美に向けての突撃中に更に加速し、アダマス元帥の移動速度に適応していた狗美でさえも捉えられぬ速度で剣戟を放つ。しかし目では捉えられずとも、狗美の五体からだは本能的に反応し、アダマス元帥の魔剣を爪撃で弾いていた。だが・・・。

金剛旋空剣閃こんごうせんくうけんせん

アダマス元帥は身を翻し、高速回転斬りを狗美に見舞った。空中へと投げ出された狗美は、吹き飛びながら自身の傷の浅さを確認し、読み誤ったことに気付いた。そして叫んだ。

「ミネルヴァァ!!」

狗美が吹き飛ばされた時点で既に天力の剣を形成していたミネルヴァであったが、狗美の怒号でアダマス元帥の狙いを察し、備えた。が・・・。

「邪魔だ!」

“金剛瞬刹剣閃”

今の狗美でさえ捉えられぬ剣を弱体化し、エンジェルアローサル状態でもないミネルヴァが止められるはずもなく、天力の剣は容易く砕かれ、吹き飛ばされてしまう。

そして、アダマス元帥のきっさきは・・・。


「捉えたぞ・・・“受け容れし者”!!」


和神の身体を2本の魔剣が貫いていた。

「“受け容れし者”など最早必要ない・・・!我らは自ら歩み出したのだ!フハハハハ!!」

「ぐっ・・・!がふっ!」

和神は人生初の吐血をし、なおも喉元を溢れ出てくる血液に、人生の終末を感じていた。


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