第122話:現在のアダマス元帥
テラコッタが全身を岩石化させ、臨戦態勢を整える。
“ヴォルブースト”
岩石化した皮膚の隙間から自身の持つ熱を蒸気として放出することで飛躍的にスピードを向上させることが出来るテラコッタは、火山弾の如く漆黒の鎧騎士・アダマス元帥に突撃した。
“オリンポスオーバーブローver.5min”
「温い!」
確かに温かった。テラコッタの切り札とも呼べる“オリンポスオーバーブロー”は自身の熱量を上げて体内に蓄積させればさせる程その威力を上げる技。サラのためにカッパー中将に放った時に1度熱をリセットしてしまった今回の“オリンポスオーバーブロー”はカッパー中将の時に出した威力に遠く及ばなかった。
テラコッタはアダマス元帥の魔剣に袈裟懸けに“斬られた”。
「うぐっ・・・!」
テラコッタはアダマス元帥とすれ違うようにして転がり倒れる。幸い傷は浅かったが、出血は伴っていた。
「現在の私に“岩石”とは片腹痛い。」
そう言って血を流し倒れるテラコッタを見下すアダマス元帥の頭上に黒い槍が飛来していた。
“RPG-777ジャベリン”
アダマス元帥は槍の方を振り向かずに飛来した槍をキャッチした。が、槍の先端は爆発した。
「先端が当たらなくたって爆発はさせられんのよっ!」
デビルスタイル状態のサラが得意げに空中から見下ろす。その目の前にアダマス元帥は出現した。
「それがどうしたというのだ?」
「うっそ、速ッ・・・!」
魔剣がサラの頭目掛けて振り下ろされんとしたが、ミネルヴァの跳び回し蹴りがそれを阻止する。
“ジャンピングスピンホーリーシュート”
ガンッ!という金属音を立てて吹き飛ばされたアダマス元帥だが、次の瞬間ミネルヴァの背後にいた。
「とろい!」
「ミーちゃん!!」
サラの叫びと同時に魔剣がミネルヴァの背を貫かんとした。
“エンジェルアローサル”
ミネルヴァは全天力を絞り出してどうにか“エンジェルアローサル”を発動。これにより生じる背部の天力の翼の生成によってアダマス元帥を再び吹き飛ばす。吹き飛んだアダマス元帥をサラが追撃する。
「剣相手ならコレ!」
“デビルズナックル”
サラは両拳に魔気を纏わせ、黒い硬質なボクシンググローブのようなものを精製、アダマス元帥にインファイトを仕掛けた。迎撃のために振るわれた魔剣を躱し、拳を打ち出す。連続で繰り出されるサラの拳を魔剣と左手で往なしていくアダマス元帥。
「中々のスピード・・・!貴様は如何様な手術をした?」
「ハァ?整形とかしてないから!“地”よ“地”!まんまのアタシ!100%天然物だから!(あ、魂と肉体別人だから50%?)」
「フッ・・・!これだから世界は・・・!!」
高速の乱闘を繰り広げる2人のもとにミネルヴァも2本の天力のナイフを持ってアダマス元帥の背後より参戦した。だがアダマス元帥はこれにも対応。体をずらし、奇襲を躱して2人を前面で相手取れるように誘導した。
「ミーちゃん、残念!でも助かるぅ~!」
「くっ・・・!流石は元帥というわけですか・・・。」
魔と聖、悪魔と天使が共闘しているように映るこの空中戦を横目に、フウは和神のアイデアが生み出した地獄を巨人に向けて準備していた。未だにそこいらに散らばっていた魔鎧兵の持っていた魔剣を風に乗せ、巨人に向かって移動する。
「行かせん!」
「アタシたちも!」
「行かせませんよ!」
フウの動きに気付いたアダマス元帥はこの空中戦を切り上げようとするが、サラとミネルヴァがそうはさせない。
ゆっくりと北上を続ける巨人。無数の魔剣を持ち、これに向かうフウ。行かせまいとアダマス元帥。それを行かせまいとするサラとミネルヴァ。戦局が一瞬で変わるであろう高速の戦場が展開された。




