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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第4章:帝国の侵攻 編
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第112話:陽子の半妖態

“エクスカリバー”でシルバー少将を葬った後、ミネルヴァは即刻“エンジェルアローサル”を解除した。正確には解除“された”というべきである。

「ミネルヴァ・・・そんな強力な技?術?があるなら・・・さっさと、使って。」

フウのもっともな意見に、ミネルヴァは顔を横に振る。

「いえ、フウ様。“エクスカリバー”は未熟なわたくしには過ぎた武器。“エンジェルアローサル”で発現する天力の殆どを凝縮させて漸く形成する事が出来る諸刃の剣なのです。故に“エクスカリバー”を保っていられる時間は僅か十数秒が限界ですし、発動後は暫く“エンジェルアローサル”も発動できないのです。」

フウは納得したような顔をすると、和神たちが向かった方角に顔を向ける。

「あっちにある巨大な魔力・・・。」

フウが切り出した瞬間、空に巨大な魔力の光線が放たれた。


和神たちとメタル中将の戦場

メタル中将の放った“レフ・キャノン【キメラ】”が陽子を飲み込み、曇り空を再び穿った。だいぶ高くまで昇った日の陽射しが、メタル中将の後ろ10mほど離れた大地にふわりと降り立った陽子を照らした。その身体に傷は無く、代わりに顔に朱色の紋様と頭に狐の耳、臀部の少し上に尻尾が付いていた。尻尾は九本、揺らめいている。

「わたしが“半妖態”になる時は國の危機を意味してしまうから、使うなと幾度となく両親や流美さんに言われてきたけど・・・あなたを“それほどの敵”として認めることにしましょう。」

陽射しの演出の所為か、陽子自身の持つ妖力や霊力の所為なのか、和神と狗美は陽子に見惚れていた。それ程までに荘厳で神秘的なオーラを纏っていた。オーラだけではない、周辺一帯(およそ半径1㎞)を陽子の妖力と霊力が包んでいた。

「危険、排除!」

神秘的な空間を機械的なメタル中将の声が突き破る。

“イ・レーザー【キメラ】”

メタル中将は両肩の“イ・レーザー”を陽子に向けたが、陽子は既にメタル中将の頭部を素手で殴り消していた。30フレーム程だろうか、間を空けて周囲の大地に衝撃が奔り、砕け散る。その衝撃は陽子の妖力に包まれた範囲内全てにもたらされた。即ち、和神たちにもである。咄嗟に狗美が和神にくっつき、自身共々妖力でガードした。この陽子の妖力範囲内には戦いを終え、こちらに向かっていたフウとミネルヴァも存在していたが、2人とも霊力と天力で身を包み事なきを得ていた。

「ごめん、狗美さん。これでも抑えたんだけど・・・。」

いつものように笑う陽子だが、その笑みはどこか怖いものがあった。そもそも普段の陽子ならば敵とはいえ、人の頭を吹き飛ばして笑っているだろうか・・・。和神はそんな疑問を持ちながらも、陽子の背後でバチバチとショートしているメタル中将の様子に目を向けていた。

「・・・!陽子さん!!」

“フロントウェポン=フルブラスト”

メタル中将の前面に配された武器の全てが陽子に向けて放たれた。たちまち陽子は魔力の爆撃に包まれた。

「頭を飛ばされても死なないなんて、あなた、“生きている”の?」

陽子に向けて放たれた魔力のレーザーやら弾丸やらミサイルやらは悉く陽子の肌の5㎝ほど外側で弾け、爆発していた。メタル中将に搭載された全火器が陽子の纏う妖力と霊力の壁を破ることが出来なかったのである。そもそも、あの“レフ・キャノン【キメラ】”を陽子が無傷で凌いだ時点でこの結果は見えていたのである。

「ふんっ。」

陽子はメタル中将の頭部があった箇所を上から叩き付けるように殴りつけた。メタル中将の鉄塊の如き身体は地面に叩きつけられ、めり込んだ。

「蚊柱の中を通ってしまったようなちまちました攻撃、やめてくれる?」

“バックウェポン=フルブラスト”

地面に突っ伏したメタル中将は背面に搭載された武器を陽子に向けた。だが、その武器の殆どを陽子は尻尾で薙ぎ、こそげ取ってしまった。

「武装消失、緊急事態、消滅装置イレイザーシステム発動。」

メタル中将は自身の敗北を悟り、いや、理論的に導き出し、最終手段に出た。つまりは自爆である。それも映画やドラマのような優しいカウントダウン付きの起爆などではない。直ちに、即刻、今ここで起爆した。

“陽撃【凝縮式】”

陽子の球状の妖力がメタル中将を包み込み、その中に“陽撃”を放つ。

「無念・・・。」

本来ならば奈良の北半分を飲み込むほどの威力があったメタル中将の自爆は、メタル中将自身だけを消滅させて終了した。



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