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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第4章:帝国の侵攻 編
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第107話:ムシュフシュオオムカデ

ムシュフシュオオムカデ。オロチムカデ科・ハンドレッグ亜目・亜竜種に属する“魔蟲類”。生まれた時から百本を超える足を持ち、成長によって足の数が増えるということはないが、体長は最大のもので50mのものが記録されている。それより大きく成長したものを“ヨルムンガンドオオムカデ”と分類しているのでは,とする学者もいる。

強靭で巨大な顎には麻痺毒があり、噛まれると死にはしないが全身の自由が利かなくなり、そうして抵抗できなくなった獲物をその長大な体で締め付けゆっくりと捕食する生態を持つが、最大の武器は外見からはおよそ想像できない“速さ”にある。その移動速度は魔界の地上ではトップクラスで時速250㎞を超えることもあり、尚かつ獲物が力尽きるまで追跡する持久力も兼ね備えている。また、全身を覆う鎧のような外殻は非常に堅牢で、同じ“魔蟲類”に属する魔界生物の牙の殆どを通さないとされる。サンクティタス王国“魔界危険生物一覧”“第二級危険生物”。

・・・とミネルヴァはムシュフシュオオムカデについて図鑑で読んだ知識を振り返っていた。今まで読んだ本は10億冊を超えるミネルヴァだが、読んだ本の内容は全て暗記している。外見はムシュフシュオオムカデが圧倒的に化け物だが、能力的にはミネルヴァも大概な化け物である。

(10m級のムシュフシュオオムカデ・・・の頭部に当たる部分が老兵の上半身になっている,と。)

自分に対して新幹線並みの高速で向かってくるムシュフシュオオムカデもといカッパー中将を見据えながらミネルヴァは冷静な眼をしていた。

「その眼球を生きたまま抉り出して、暗闇の中で嬲り殺してやろう!!」

「年寄りの冷や水・・・と流界では言うそうですよ?」

“エンジェルアローサル”

カッパー中将の目の前からミネルヴァは消えた。

「無駄よ!キメラモードの私の前では貴様など蚊トンボに過ぎん!」

そんなことをのたまうカッパー中将のムカデ部分の背中に乗り、ミネルヴァは天力の剣を突く。しかし、鎧のような外殻に阻まれてしまう。

「無駄だと言っておろうが・・・!」

カッパー中将は身をよじって振り落とそうとするが、それよりも速くミネルヴァは移動し、今度は頭上から斬り下ろす。しかし、カッパー中将の上半身部分もまたムシュフシュオオムカデと同等の硬度を持っているらしく、その外殻とも呼べる皮膚に阻まれてしまった。

「ふっふっふ!無駄無駄無駄ァ!!キメラモードの私に敵はおらんのだァ!!」

ミネルヴァは考えた。恐らく自分とは相性の良くない相手であろうと。こちらも攻撃を受けないが、こちらの攻撃も通らない。そしてこちらはエンジェルアローサル状態でなければ相手の動きにはついていけないであろう。

(“重たい打撃”を放てる者が必要ですね・・・。)


サラ対メタル中将の戦場

(もう遠距離攻撃じゃ埒が明かないよね。なんか後ろ(南)の方でいっぱい気配現れてるし。)

サラは膠着状態を打破すべく、メタル中将に打って出た。直接メタル中将の懐に飛び込むのである。

“イ・レーザー【ホーミング】”

追尾機能付きの“イ・レーザー”がサラに飛来する。

“フレアフレグランス”

サラは一瞬で地面すれすれまでの超低空飛行になり、今まで飛んでいた位置に自身の気配を残した。“イ・レーザー”は気配の方を撃ち抜いた。次の“イ・レーザー”が発車可能になるまでの数秒、サラはこの隙に一気に距離を詰める。

“イ・レーザー【ホーミング】”

メタル中将は先程までの“イ・レーザー”とは反対の肩からも“イ・レーザー”を展開させた。

「嘘!?“2”ってないよね!?やっぱプレデターなの!?」

驚きと絶望のサラに2つ目の“イ・レーザー”が放たれた。



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