第102話:魔剣の舞
“風武百連陣・魔剣の舞”
無数の魔剣がフウの巻き起こす風に飛ばされ、本来の持ち主であるメリディエス帝国・魔鎧兵を襲う。シルバー少将の咄嗟の号令で退避行動に移った兵たちもいたが、魔剣は容赦なく貫き、斬り裂いていった。更に魔剣は後方から進行してきていた戦車部隊にまで届き、その装甲をも貫いた。この和神の発想とフウの能力によって、魔鎧兵部隊はニッケル大尉のみとなり、戦車部隊も半数が壊滅した。戦車部隊はこの前にサラに手によっても無力化されていた為、それを含むとおよそ7割が壊滅したことになる。
その事態は空にいたミネルヴァと飛行艇部隊もすぐに気付いた。飛行艇部隊を率いるカッパー中将は取り急ぎ本部に連絡を取った。
「あ~あ~、ひでぇコトすんなァ・・・。」
魔剣が突き刺さった魔鎧兵を見てシルバー少将が溜め息を吐く。
「おのれ・・・我が部下を・・・!」
そう言うのはニッケル大尉。しかしその手には部下の死体を持っている。彼は部下を楯にして“魔剣の舞”を防いだのである。
「おぬしらが・・・攻めて来なければ・・・起こらなかったこと・・・。」
そう言うフウの後ろで、和神は眼前に広がる無数の動かなくなった魔鎧兵たちを見渡す。この時、和神が感じていたのは“たくさんの命を奪った重責”とか“なんて惨いこと思いついてのだろう”とかではなく“自分に力が無い所為でフウにこんなことをさせてしまった”であった。同時に“上手くいって良かった”と、僅かにでも感じている自分を恥じていた。自分の力が無いが故に、一応でも自分を慕ってくれている娘に悪魔的な行いをさせてしまった。多くの命を“奪った”ことより、“奪わせてしまった”ことを悔いた。そして、これまでも度々感じていた“無力感”が和神を襲った。
「和神。」
そんな様子を見ていた狗美が声をかけた。
「・・・戦いなんだ。お前の機転で私たちの戦況は好転した。それだけだ。」
それに陽子とフウも続く。
「それだけではありません。わたしたちは護られた・・・あなたの“発想”に。」
「誇るべき・・・。この光景を省みているのは・・・余裕が生まれた証拠。でも、まだ、余裕はない・・・。それに、我は命を奪い慣れている。“魔”のものであれば、尚の事何も感じない・・・。」
「お・・・みんなどうした?」
急に戦場に似つかわしくない優しい言葉をかけられた和神は思わずツッコんでしまった。和神はこういうのに慣れていない。女性とは無縁の人生であったが故、自身の表情や感情を汲み取ってくれる女性からの優しい言葉や対応に対しての耐性(態勢・体制)がなかった。胸の中心から少し下の鳩尾周辺が暖かくなるのをただただ噛み締め、“笑いに繋げようという防衛本能”だけが機能した。
「ちょっとー!こっちまで飛んできてるんだけど!」
遠くからサラの声が響いてきた。
「余所見。」
メタル中将の“イ・レーザー”がサラを狙っている。
「しつっこいな!」
「何だよ、メタル中将もいるのか。んじゃ、まあ・・・余裕だな!」
シルバー少将の4本の腕が3本の魔剣と1振りの長刀を構え、和神たちに対して臨戦態勢をとった。だが、シルバー少将と和神たちの間にニッケル大尉が入った。手には魔剣を携えている。
「シルバー、ここは我に任せてもらおう。部下の仇だ。」
「ニッケルさん・・・。」
ニッケル大尉は元々シルバー少将の教官であった。シルバーにとってニッケルは軍人としてメリディエス帝国民としての在り方を1から教えた親のような存在であった。そう“で、あった”のである。
「ゲスの極みかよ・・・。」
その光景を前に和神が呟く。シルバー少将の持つ魔剣の1本がニッケル大尉を貫いていた。
「シルバー・・・お前・・・!」
「いつまで上官気取りだよ、ザコが。引っ込んでろ。」
そう言うともう1本の魔剣でニッケル大尉の首を斬り落とした。思わず目を逸らす陽子。
「あーーーー!スッキリしたァー!ずっと上官気取りの親気取りでウザかったんだよお!感謝するぜ、お前ら。お前らが魔剣で攻撃してくれたおかげで“暗殺”出来た。“凶器”おんなじだからな!さ!ジャマが消えた所で、仕切り直しだ!!」
キメラモードのシルバー少将が再び構えた。




