四話・能力値とスキル
家から帰ってくると、ルルとニョニョは泣き疲れたようで自室に戻っていく。
ティーファもたらふく食べて大満足のようだ。
帰ってくるなり籠の中に入った。
「じゃあ、私は夕ご飯の準備をしますね」
マリナが防具を揃えるついでに買った食材を台所に並べ出す。
嫌な感じがした。
「あ、今日は俺がやります! マリナはせっかくの休日だし寝てて」
「いえ、せっかくの休日だからやるんです! 最近はお料理も任せっきりだったし。シンヤこそ今日はゆっくりとしていて下さい!」
マリナの断固とした態度に引き下がるしかなかった。
断腸の思いで自室に戻る。
夕飯までとてもじゃないが憂鬱なので、気を紛らせるためにステータスや能力値を見ることにした。
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名前 :ラファエル
年齢 :18
性別 :男
種族 :天使族
職業 :見習い天使
レベル: 14
<ティーファ>
<アイテム>
<スキル>
【GP】114
【BP】290
【HP】72
【MP】25
【SP】31
【筋力】180
【器用】16
【敏捷】724
【頑強】15
【魔力】5
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レギレウスとの戦いでレベルが更に3も上がった。
BPは一時0になったのに、レベルアップの恩恵で今では290ポイントまで増えた。
BPはレギレウスとの戦いから手付かずの状態だ。
実は今になって、レベルアップ時のBPの増え方に法則性があることに気がついた。
これまでのBPの増え方を思い出す。
レベル1〜5までは30ポイント。
レベル6〜10までは60ポイント。
レベル11〜14までは90ポイント。
こんな感じで増えていってるようだ。
一気に上がった時もあるので推測の域を出ないんだけど、多分こうじゃないかと思う。
だとすればレベル16からは120ポイント貰える計算になる。
ティーファの分も入っているとはいえ、相当ヤバいことになりそうだ。
次に能力値。
これは見た通り、敏捷値がおかしいことになっている。
今やこの迷宮内に俺の動きを完全に捉えられる人間は存在しないだろう。
これからどういう風に数値を割り振るのかを最近考えている。
ゲーム時代もそうだったけど、武技の効果は対応する能力値で威力や範囲が変わった。
例えば【飛剣】は敏捷値が高いと、効果範囲が広くなったり威力が上がる。
【神速剣】は敏捷値と魔力値が関係している。
ただ、【流水剣】はカウンター特化のスキルで、能力値に影響されない数少ないスキルだ。
俺の成長率は魔力が一番高い。
そして次に敏捷値。
だとすれば、擬似天使化した時のような能力値が理想だという結論に至った。
取るべきスキルは能力値を最大限活かせる【神速剣】と魔法系スキル、あとはその補助系だな。
【神速剣】の威力は前回の魔物の群れとの戦いで実感している。
正に無敵の武技だ。
一応スキルの欄も見ていく。
所持しているスキルがこれだ。
【擬似天使化】レベル2
【流水剣】 レベル1と9のみ。
【付与魔法】レベル1
【神眼】レベル1
【天破】レベル9
【共通言語】レベル9
【共通文字】レベル9
これが取得できる武器系のスキル。
横の数字がレベル1を習得する為に必要なBPポイントの数。
【両手剣】1
【片手剣】1
【飛剣】3
【神速剣】10
【深淵の鎌】10
これが魔法系のスキル。
【簡易魔法】1
【火魔法】1
【爆炎魔法】10
【水魔法】 1
【海氷魔法】 10
【土魔法】 1
【地動魔法】 10
【風魔法】 1
【暴雷魔法】 10
【光魔法】 3
【神聖魔法】 15
【闇魔法】3
【暗黒魔法】15
【回復魔法】 3
【空間魔法】 15
これが耐性系のスキル。
【火属性耐性】2
【水属性耐性】2
【土属性耐性】2
【風属性耐性】2
【光属性耐性】2
【闇属性耐性】2
【衝撃耐性】2
【斬撃耐性】2
【刺突耐性】2
【毒耐性】1
【麻痺耐性】1
【封印耐性】1
【スロウ耐性】1
【呪い耐性】1
【恐怖耐性】1
【即死耐性】3
【疲労耐性】1
【苦痛耐性】1
これが補助系のスキル。
【HP回復速度上昇】2
【MP回復速度上昇】3
【SP回復速度上昇】3
【スキル習得率上昇】10
【獲得経験値上昇】5
【必要経験値減少】5
【レアドロップ率上昇】5
【詠唱時間短縮】5
【リキャストタイム短縮】5
【飛翔】3
【空間把握】2
【気配察知】1
【気配遮断】1
【危険察知】2
【未来視】5
【遠見】1
【暗視】1
【心眼】5
【鑑定】1
【解析】1
【隠蔽】1
【偽装】1
【魔力感知】1
【魔力操作】1
【MP貯蔵】3
【使徒化】15
【偶像崇拝】3
【幸運】5
【聖地】20
【信仰強化】5
これが生産系のスキル。
【算術】2
【調理】1
【語学】2
【農業】1
【錬金術】10
ちょっとだけ選べるスキルが増えている。
闇系の魔法とか、偶像崇拝とかだ。
レギレウスを倒したおかげっぽい。
【偶像崇拝】は簡単に言うと、GPを稼ぎやすくなる。
俺がヴァルハラ迷宮都市にきてから、GPはほとんど増えなかった。
ライチ村では大体一日に10位は増えていたのにだ。
その理由が【偶像崇拝】と【聖地】のスキルで分かった。
GPの獲得には条件がいる。
第一に、アテナス教を信じる人がいること。
第二に、距離は不明だが、俺を起点としてある程度の範囲内にその信者がいること。
今の所分かっている条件がこの二つだ。
だからライチ村を出てから一回もダイスを振っていない。
それは俺の望みでもあったから気にしていなかったけど、レギレウスの言葉がずっと引っかかっていた。
俺は果たしてこのままでいいのか?
このまま逃げているだけでいいのかと。
『進むのだ!! 後退に望みはない!! 前に突き進み、自ら手で道を切り開け!!』
レギレウスとの戦いの中で聞こえたあの声は、あの戦闘のことだけでなく、今の俺の状況も言っていたのかもしれない。
まあ、長ったらしくなったが、俺はもう一度積極的にエンジェル・ロードを攻略し、天使にクラスアップするつもりだ。
それで【偶像崇拝】のスキルはその名の通り、アテナスを模した像を指定した場所に置くと、そこには俺がいるのと同じ効果を生む。
遠く離れていても、像がある場所ではGPが入ってくるという訳だ。
レベルが上がるごとに置ける像の数が増えるようだ。
今度は【聖地】の効果だ。
【聖地】の説明は結構難しいが、簡単に言えば迷宮内部にある安全地帯のような場所を作ることができるようだ。
指定したエリアから悪性の魔素? とかいうものが、自浄作用で善性魔素? に変わるそうだ。
その為、モンスターはその中で一切活動が出来なくなるらしい。
【聖地】の効果は範囲内のアテナス教に対する信仰心で変わるらしい。
だから、信仰心のない場所で聖地を作っても意味がない。
あと、聖地にいる信者はGPを生み出し、GPを消費することで聖地内に建造物を建てたりできるらしい。
俺的にはかなり微妙なスキルだ。
そもそもこの世界は安全地帯のようなものだし、聖地を作っても偶像崇拝と効果はほとんど変わらない。
その割にBPはバカみたいに高い。
最後に【信仰強化】は、俺や偶像崇拝で得たGP獲得エリアを、レベルに応じて広げることができるようだ。
これは獲得も視野に入れている。
次はアイテムの欄を見ていく。
【神鳥の卵の欠片】
【上級ポーション】×3
【中級ポーション】×6
【中級マジックポーション】×3
【初級マジックポーション】×7
【万能薬】
【マヌスの腕輪】
【暗黒石】×3
【漆黒の真珠】
【暗黒神ゼーガの肉片】
レギレウスを倒したことで、アイテムの量はかなり豊富になった。
特に【暗黒神ゼーガ】の肉片って超レアアイテムだ。
このままでは使えないけど、武器とか防具とかアクセサリーの素材にできる。
ゲームの時も強力な装備を作ることができた。
BPがもっと増えれば、生産系スキルで装備を作ってみようと思う。
今の所、使える生産系スキルは【錬金術】くらい。
この【錬金術】もレギレウス関連で取得可能になったんだろう。
今日はティーファが起きたらBPの振り分けの相談をするか。
前のBPは俺が全部使ったから、ティーファにはいっぱい使わせてあげないとな。
そうこう考えていると、マリナが部屋をノックした。
「シンヤ、一応晩御飯の準備ができました」
「あ……うん。今行きます」
長い時間、考え込んでいたようだ。
ルルとニョニョも食卓に顔を出すが、元気がない。
それもそうだ。
お昼時に焼き鳥を落として半分くらいしか食べられなかったし、夜ご飯は中々パンチが効いている。
食卓に並べられた食事は、黒いパンと、何かが丸焦げた黒い塊と、白いスープに黒いつぶつぶが浮いているやつ。
全体的に暗い印象だ。
「シンヤ! オカワリはいっぱいあるので遠慮しないで食べて下さいね!」
「はい……。いっぱい食べます……」
逃げ道が完全に塞がれた状態で、この定期的にあるイベントの回避方法を考えていた。
能力値とかスキルとか言っている場合じゃなかったのだ。
マリナの料理能力をなんとかしなくては!
そう決意すると、鼻呼吸を止めて口呼吸に切り替える。
長い夜はまだ始まったばかりだった。




