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三十四話・必殺の威力

 西地区から迷宮都市中心に向けて爆進中だったゼウスは、人型のモンスターと戦う冒険者の姿を発見した。

 それは冒険者としては珍しい、女性二人組のパーティー。


「セラフィ、こいつらさっきまでの奴より強いぞ! 気をつけろ!」

「分かったわ」


 そこには迷宮の入り口で冒険者たちと力を合わせて、アンデッドとの死闘をくぐり抜けた、セラフィとリーナの姿があった。

 二人は竜の活躍によって難を逃れ、住民の生命を守るために、街に流れ込んだアンデッドと再び対峙していた。


 人型といっても明らかに腐敗した死体。

 両目は完全に無くなっていて、顔に一部、腐った肉がついているだけ。

 頭皮もほとんどなく、頭蓋骨が姿を表していた。


 ゼウスは背中に背負った巨剣を抜き取ると、セラフィとリーナの背後から一気に詰め寄った。

 ゼウスが剣を振り下ろすと同時に、バンッッと何かが破裂したような音が響く。

 爆発音に近い音は何かを切った音には似つかわしくなく、空気を含んだものを叩き潰したような音だった。

 そして二メートルはあるかというような鉄の塊と、極限まで研ぎ澄まされた剣速によって巻き起こる風圧が二人を襲った。


「なんだ……この凄まじい剣の威力は」


 リーナは突如目の前で対峙していた死体が爆発したことと、目の前の巨漢の存在に驚きを隠せなかった。

 セラフィもまた同様で、この騎士の格好をした男の剣に目を奪われた。


「おっと、脅かせてすまねえな! 緊急そうだったので断りなしに援護に入った」

「いや、こちらもこいつらには困っていたところだ。助かった」

「名乗るのを忘れていたが俺の名はゼウス」

「私の名はリーナ」

「セラフィです」


 セラフィは男が持つ巨剣と名乗った名で、この男がどんな人物なのか瞬間的に思い出した。


(ゼウス……。モンジュー公爵家第三騎士団団長、ゼウス。ヴァルハラ迷宮都市で最も強いと噂される男。それが、どうしてこんな所に?)


 セラフィが聞いたゼウス像は二つある。

 一つはよく暴れてものを壊したり、力を無闇に使って人に大怪我を負わせたりする粗暴な男。

 もう一つは、誰にでも優しく、権力の横暴を許さず、民のことを第一に行動する騎士の鑑。


 どちらが真実なのかは分からないが警戒心は解くことはできないと考えた。




 ゼウスは目の目で起こっていた状況を整理していた。

 西門に集まった住民たちが口々に言っていた『死体が人を襲う』という奇想天外な話。

 実際にその姿は確認できなかったし、第三騎士団の誰もが嘘だと思っていたに違いない。

 かくいうゼウス自身も、ロドスが仕込んだ流言飛語だと考えていた。


 しかし事実だった。


 やはり何かが可笑しい。

 モンジュー公爵家がこれだけのことをやってのけたのか?

 何のために? どうやって?

 もしこんなことを起こせる力があるならば、それは人というよりも魔族の方に近い存在ではないのか?

 そして死体を操れる力があるというのならば、この街にどれだけの驚異をもたらすのか?

 問題の奥底をより深く探り、この目で確かめなければならない。


「悪いが少し聞きたいことがある」


 ゼウスは何か事情を知っているであろう二人に話を持ちかけた。

 リーナは静かに頷くと答えた。


「分かった。だが、申し訳ないがこちらも急いでいるので手短に頼む」

「ああ、そんなに長くはならねえ。まず一つ。これはどこからやってきたか知っているか?」


 ゼウスは巨剣で散り散りになった肉片を指し示した。

 ゼウス自身、西門の警備を任されていた経験上、死体が城壁の外からやってきたとは考えられなかった。


「あれは、迷宮の中から溢れてきた」

「迷宮? それも溢れてきただと?」

「ああ、そうだ。迷宮の中から数えきれない動く死体が溢れてきた。そしてこいつらは人を襲い、喰らう」


 ゼウスはゴクリと口内に溜まった唾液を飲み込んだ。

 ゼウスが浮かべたヴァルハラ迷宮都市で起こっている出来事は、想像以上に危険な状況だった。

 本来モンスターは、ダンジョンと呼ばれる場所から出ることはできない。

 それは絶対だった。


 この街はそれを前提に作られているし、この世界はそれを前提に機能してきた。

 それが破られたのだ。


 それがここだけの話なのか、世界の各地で起こっている話なのかは分からない。

 だが、少なくともこの街では起こっている。

 街が滅ぶ可能性が高いと言っていい状況だ。

 それが回避される状況はただ一つ。


「迷宮から溢れてきているのはこいつらだけか? 迷宮で見るようなモンスターはいなかったのか?」

「それは見なかった。溢れてきていたのはこいつらだけだ」


 だとすれば、こいつらはモンスターと似て非なる者の可能性もある。

 そうであれば最悪の事態は避けることができる。

 だが、突如現れたあの竜はどういうことだ?

 ゼウスが自然と導き出された答えは、あの竜が迷宮から出てきた存在というものだった。

 やはり最悪の事態なのか?


 そんな疑念をかき消すようにリーナは話を続けた。


「だがこの死体たちもあの竜の出現によって、入り口で足止めされているような状況だ」

「竜がこいつらの足止めをしているのか? なぜだ?」

「さあ、そこまでは分からない。ただ、あの竜とその上に存在する何かは敵のような感じはしなかった。寧ろ私たち冒険者たちを守ってくれているような感じさえした」


 ゼウスはリーナから得た情報と、これまでの事実を繋ぎ合わせていく。

 住民たちが西門に流れ込んだ時、既にこの死体は街中を歩いていた。

 それよりもさらに前から死体が迷宮から溢れ出し、それを冒険者たちが食い止めてくれていた。

 だから迷宮から最も遠い城壁まで死体の姿を発見することはなかったし、被害も現状ほとんどないように見える。

 ゼウスが知らない所で、この街を守ってくれている人が居た事実を今初めて理解した。

 リーナとセラフィの姿から、それが過酷な戦いだったことも容易に想像できた。


「そうか……。この街の人々を守るべき騎士として、この街を愛する一人の男して礼を言わせてほしい。あなたたちの戦いに感謝する。ありがとう」

「いや、それはお互い様だ。まあ確かに、こんな時に騎士がいないというのはどうかと思ったのも事実だが」

「申し訳ない」


 ゼウスはバツの悪そうな顔をして謝罪した。

 確かに騎士団は何もしていないばかりか、脅威にさらされている住民を意図的に閉じ込めていることになる。

 返す言葉もなかった。


 今最も知りたい情報は手に入れた。

 次はそれを確証づける事実を目にするだけだ。

 ゼウスは二人に別れを告げると、アンデッドを葬りながら迷宮の入り口に到着した。


 そこは冒険者たちが勝利の美酒を手にしたように、座りながら竜が吐く息を眺めている姿だった。

 誰もが疲労困憊の色をしている。

 だがその顔は一様に何かをやり遂げたという安堵感に包まれていた。


「なるほど。この頑丈そうな土壁にあの炎のブレス。何が出て来ても丸焦げってわけか」


 ゼウスはリーナから聞いた情報が間違いないことを確認すると、これからすべきことを考えた。

 現状、戦況が安定していると言っても、何が起こるのか分からないことには変わりない。

 直ぐにでも西門に帰り、住民の避難を優先すべきだろう。

 ことが収まった後、命令違反で処罰されることも覚悟の内だ。

 ゼウスが西門に向けて走り出そうとした時、北の方で大きな爆発が起こった。

 この場にいる者全ての視線がそちらを向いた。


「あそこはモンジュー公爵家の別邸がある場所だよな。今度は何が……?」


 かなり遠くの方から身なりが整った男が一人、猛スピードこちらに向かって逃げてくる。

 その後ろから男の姿を追うように、巨大な生物が這っている。

 その姿はナメクジが巨大化したような感じで、体長は五メートル近くあり、触手のような手が数十本もウネウネと空中で踊っている。


「何だあれは!?」

「モンスター?」

「あんなモンスター見たことないぞ!!」


(あいつはかなりヤバい奴だ! ここの連中だと歯が立ちそうにない!)


 既に戦う体力が残されていない冒険者たちに向かってくる新たな敵。


「おい! ここは俺がやる!」


 ゼウスは剣を構えて巨大な生物の進路上に向かっていく。


「は? っておい! あんた誰よ?」

「おい! お前、ゼウスだよこいつ!!」

「ゼウスってあのゼウスのことか?」

「第三騎士団団長の守護者ゼウスで間違いねえ!!」


 ゼウスの名は冒険者たちの間でも大きく広がっていた。

 騎士はボンクラ揃いの貧弱者という、冒険者たちの概念を叩き壊した男だった。

 その力はゼウス単体でBランクのクランに匹敵するとも言われている。


「あんた、まだ元気そうだな」


 ゼウスが話しかけた男の名はバリー。

 どこにでもいるような容姿をした特徴のない男だ。

 しかしその剣の腕は一流で、Cランク目前まで迫っているクランのリーダーである。


「ああ、他の奴らに比べれば何とかな。で、あいつに勝てそうなのか?」

「勝つさ」

「いつものように自信満々だねー。まあ、あんたがここにいる以上安心して寝そべってられるわ」

「実は頼みごとがある」


 ゼウスの緊張感漂う言葉にバリーも重い腰を上げた。


「緊急か?」

「ああ、伝言を頼みたい」

「で、内容は?」

「西門を開けて住民の避難を開始させろとファーマンに伝えてくれ」

「フッ、分かった」

「これをファーマンに渡せば話は通じるはずだ。済まないな」

「まあ、あんたには世話になったことがあるからな。これくらいならお安い御用さ」


 ゼウスがバリーに渡したのは、第三騎士団の指輪。

 その指輪にはゼウスの名と、二つの心臓が天秤にかけられている絵が描かれている。

 ゼウスは深呼吸を始めると、前進しながら戦いに向けて極限まで集中し始めた。


 敵は強い。


 肌がひりつくような威圧感が全身を覆っていく。

 だがこの街で戦う以上、負ける気はしなかった。

 ゼウスの背には多くの人々の想いが乗っている。

 これまでもゼウスは守るべき者がいる状況でこそ、その力を発揮した。


「た、助けてくれーーー!!」


 追われている男と巨大なモンスターの距離はじわじわと詰まっていき、ゼウスとの距離も後三十メートルを切った。


(あの男、確かモンジュー公爵家の使用人だったはず……)


 タキシードをバッチリと着こなしなした男は、ゼウスの横を通り過ぎると、そのまま止まらずに走り抜けていく。

 まさに死に物狂いという感じで、眼や鼻から色々な汁が飛び出していた。


「マテェエエエエエエエエエエエエエエエエエ。クリード、トモニイッショニナロウゾォオ」


 ナメクジのような姿をしたモンスターから、地面が揺らぐような低い声が発せられた。

 よく見れば体の下の方に割れ目があり、そこから声を発しているようだ。

 ゼウスをすり抜けて通ろうとする巨体。

 その目的は明らかに逃げ惑う男にあるように思えた。


「おい! 俺を無視して背を向けようとするなんていい度胸じゃないか?」


 ゼウスは渾身の一撃を巨体の側面めがけて叩き込んだ。


「ウフォッフォッフォッギョアアアアアアアア」


 だが、初めて感じた手応えにゼウスは戸惑っていた。

 完璧な一撃だったはずが、込められた力の多くがモンスターの表面に当たると同時に分散されていった。


「スライムみてえな体してやがる」

「ジャマアアアオオスルナアアアアアアアア。クリードォオオオ」


 攻撃を加えてもなお追い回そうとする執念に、クリードと呼ばれた男は振り返り、膝をついて懇願した。


「お、お助けてくださいませロドス様!! 私はまだ死にとうありません!!」

「クリィーードォ。ワタシヲウラギルノカアァ」

「う、裏切るわけではありません!! ただ暫くの間お暇させて頂きたいのです!!」

「ワタシヲウラギルノダナアア? ウラギリモノニハシヲォオ !! ウラギリモノニハシヲォオ!!」


 クリードは泣き落としが効かないとみるや、直ぐさま立ち上がった。


「わ、私はもう御免です。ただでさえロドス様の無茶難題に答えてきたのに、命まで取られては損得の域を超えております。今日この日を持って職を辞させていただきます!! 」


 ゼウスは二人の間で交わされる会話の中に、知った名前が出てきていたことに混乱していた。

 このタキシードを着こなした男は確かにロドスお気に入りの秘書だった。

 何度もその姿を見たことがあった。

 そしてその秘書が、目の前の化け物を見てロドス様と言っている。


(こいつが公爵家三男であるロドス? 一体いつ魔物に転職しやがったんだ)


「おい、あんた。こいつがロドス様ってどういうことだ?」

「ああ……ゼウス様。私は何も知らないんです。ロドス様が急に苦しいと訴えられ、間も無くあのようなうな醜い姿に変わられたのです。ゼウス様お願いします。ロドス様を殺してあげて下さい」


(間違い無いのか? 有り得ねえ!! だが、その有り得ないことが今日という日に重なって起きている。何が起こっても不思議じゃねえか。この目の前の化け物がロドスだろうが勇者だろうが関係ない! この街に仇なす者は全てぶっ潰す)


「あんたに言われようが何だろうが、俺はこいつを殺る」

「さ、さすがゼウス様です。こ、ここはゼウス様にお任せてして、私は一足先に故郷に帰らさせていただきます」

「マツノダグリイイイイイドオオオオオオオオオオオオオ」

「ここは通さねえ」


 グリードはこの場をゼウスに押し付けると、東に向かって全速力で走り出した。

 それを追いかけようとするロドスに、ゼウスはもう一度一太刀浴びせた。

 しかし、またしてもゼウスの攻撃はロドスの体表を波立たせるだけで、致命的なダメージを与えれなかった。


「ジャマオオオオスルナトオオオイッテオルウウウ!!」

「チッ、こいつの体の構造と俺のガンダビラは相性が最悪のようだ」


 実際にガンダビラは剣の形をしているが、斬撃特性の武器ではなく、打撃特性の武器であった。

 鎧を着た騎士を薙ぎ倒すには向いているが、スライムなどの打撃攻撃に耐性のあるモンスターにはダメージが通りにくい。

 また職業柄、人と対峙することに慣れていても、モンスターと戦う機会はそれほど多くない。


「オマエエエエミタコトガアルゾオオオオオオオ」

「やっと思い出したか。部下の顔は忘れるもんじゃないぜ? 後がこえーからな」

「アマエノソノミグダシタカオガキニイラナカッタアア!! ツブシタイ!! コワシタイ!! タベタイ!!」

「随分と嫌われてたんだな。割と忠実に任務をこなしてたと思うんだが」


 これまで受け身だったロドスは、標的を完全にゼウスに変えた。

 体のそこら中から生えた触手たちがゼウスめがけて飛んでくる。

 触手たちは先の方から裂けていき、ギザギザの歯が姿を現わした。

 かなりの重量の装備を身につけているにも関わらず、ゼウスは軽快に触手たちを避けていく。

 触手たちは空振ると同時に、口内に溜まったヨダレのような液体を石畳の地面に落とす。

 すると湯気のような蒸気が立ち込め、石を溶かしていった。


「石を瞬く間に溶かすほどの酸ってわけか。下手に近づけば死ぬかもな」


 しかもそれが複数。

 上下左右背後、ありとあらゆる場所から飛んでくる。

 固唾を飲んで見守っていた冒険者たちも、ゼウスが不利な状況にいることを感じていた。


「出し惜しみはしねえ。俺の持つ最強の技で、お前を今から仕留める。何か言い残すことはあるか?」

「ワタシヲオオオオミクダスナアアアアアア!! ワタシハジキトウシュ!! ロドスモンジューダアアアアアアア!!」


 ゼウスの持つ最強の技は両手剣スキル【剛雷剣】の武技の一つである【壊震剣】

 敵の内部を破壊することに特化した技で、どんな強固な鎧を纏おうとも内臓から全てを破壊する力を持つ。

 打撃系の武技の中でも特にスライムなどの天敵に効果のある技だ。

 この技を受ければどれだけ大きいスライムであれ、内部に届く振動により魔石は粉々に砕け散る。

 ゼウスがこの武技を選んだのは正に的確な判断だった。


 武技の特徴として魔法とは違い、詠唱が要らない分、発動が圧倒的に速い。

 そして必要になる対価はMPではなくSP。

 人の体力を消費して武技を発動する。

 使い過ぎればMPと同様に気を失い、時にはそのまま死に至る。

 そういった特性を持つため、実際の戦闘中に武技を使うものは殆どいない。

 自分の体力を正確に把握出来るものは殆ど存在しないし、いたとしても低スキルで使える武技などたかが知れている。


 だが、ゼウスの使う武技は上位の技と言っていい。

【剛雷剣】自体が両手剣の上級スキルに相当し、この世界で扱えるただ一人の人間である。

 この若さで辿り着ける領域の限界を超えていた。

 その理由は弛まぬ努力と死線を幾度もくぐり抜けたということもあるが、最も大きな要因はゼウスの天職にある。


 ゼウスが10才の時に得た天職は『守護者』

『守護者』は騎士系の中でも上級職にあたり、世界でも数える程度しか存在しないレベルの職。

 それを10歳の頃から戦闘系の上級職という一切の無駄なく、ステータスに数値が与えられてきた。

 ゼウスは正に戦いの申し子と呼んでいい存在だった。



 ゼウスの眼光が鋭くなると、場の空気が恐ろしい殺気に包まれた。

 冒険者の中には目を逸らさなければ正気を保つことが難しいほど、気圧されているものもいる。

 ゼウスは全身が赤いオーラに包まれると、石畳を弾き飛ばし、走る速度を加速度的に上げた。

 赤いオーラを纏う姿は、守護者というよりも鬼のように見える。

 赤いオーラが触手たちの行く手を阻み、ゼウスはロドスの額を目指して飛び上がる。


 ゼウスの剣がロドスの額とぶつかり合うと、ドンッッと鈍い音が迷宮前に響き渡った。

 ドクッ、ドクッと鼓動を鳴らすロドスの魔核が静かに揺れる。


「ソンナコウゲキデハイタクモカユクモナイゾ」


 ロドスの内部を揺らす振動は、ロドスの分厚い外皮とぶつかり合うたびに大きくなっていく。

 それとともにロドスの体は前後左右に大きく揺れ、一部が突起状に膨らんだりした。


「エ? アアアアアエ? ナンダコレレエエエ!?」


 魔核は伝わる振動に大きく揺さぶられ、魔核の中央、奥深くからも新たな振動が起こり始める。

 異なる振動がそれぞれぶつかり合い、魔核にヒビが入り、徐々に欠けていく。


「ウエアエアアアアアアア!! ソンナバカナアアアアアアアアアアアア!!」


 ロドスの魔核は巨大な振動とともに粉々に砕け散った。

 と、同時にロドスの魔核から禍々しい魔素が大気中に放出される。

 巨体は完全に沈黙し、この場にいるものは勝利を確信した。



 だがーーロドスの姿を追うように、人ならざる者たちがこの場に集まろうとしていた。

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