プロローグ
あるところに、二柱の神がいた。一柱は男神、もう一柱は女神。
男神は女神に想いを寄せて、少々しつこすぎるアプローチを繰り返していた。一方の女神は別の男神と想い合い、穏やかに関係を育んでいた。
男神は繰り返す。俺こそが君の相手に相応しい、と。
女神も繰り返す。自分にはもう想う相手がいる。貴方の想いには応えられない、と。
そうして二柱の意見は交わらないまま、時だけが過ぎていく。そんなある日、男神は女神が自分以外の男神と寄り添いあっている姿を見てしまった。
男神は怒りのままに女神に詰め寄る。こんなにも俺が想っているというのに!
女神は伴侶である男神に庇われながら、それでも叫ぶ。私の伴侶はこの方だけ!
女神の伴侶である男神も諭す。彼女はもう自分を選んでいるから、諦めて欲しい。
認めない!認めない!
男神の怒りは寄り添いあう二柱に向かう。自分の想いを踏みにじった女神、自分から女神を奪った男神。
溢れる憎しみは悪意の塊となり、男神から分離した。それは神が堕ちない為の本能。穢れた力は神界から弾き出される。
弾き出された悪意は、本体から僅かに受け継いだ記憶を元に1つの世界を目指す。
悪意は己の目的のため、女神への報復のために女神の治める世界を目指す。乱すために、穢すために、壊すために。
そうしてたどり着いた世界で、悪意は1つのモノに宿る。それが1人の少女の運命が歪んでしまった瞬間であり、悲劇への幕開けでもあった。