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神様の言う通り

「おーい、白太」

 文化祭二日目の帰り道、私は白太のいる河原に来ていた。

「白太ー?」

 何度呼んでも反応が無い、またあの変人がいるのだろうか。とりあえずいつもの茂みに近づく。


「うっ……」

 異臭がする、何かが腐ったような……何処か血なまぐさいような

 嫌な予感がして恐る恐る茂みを掻き分ける。

「なっ!!」

 白太が死んでいた。カラスにでも荒らされたのか見るも無残な姿で死んでいた。

 私は驚きと同時に二つの事を思い出していた。

 一つ目は今までの、生きていた白太の姿。

 異常なまでに人懐っこく異常なまでに寂しがりやな白太。思い出せば思い出すほど涙がこみ上げてくる。


 そして二つ目は自身を神と名乗る変人、オウゲツモの言葉である。


「この子はもうじき死ぬね」


 今回のこの事は変人の予想が当たったと言える。

 まさに神様の言う通りである。いや、あの変人が神様だとは信じないが。


「トウヤさん?」

 その可愛らしくて心地の良い声を聞いた瞬間、私は変人のもう一つの言葉を思い出した。


「彼女にどう説明するか考えておくといい」


 私は後ろを向いたまま、白太が彼女から見えない位置のままに口を開く。

「来るで無い」

「トウヤさん……」

「来ない方が……良い」

 しばらくの沈黙


「トウヤさん、流石にここまで近づけば臭いでわかります」

「…………」

 私は白太を見る。彼女もここまで無残な姿を想像してはいないだろう。

 やはり見せる訳には……

「白太を見せて下さい」

「…………」

「わたしに白太を拝ませて下さい」

 ……ダメだ彼女にそんな真剣な声を出されると、ダメだ。

 私は白太の前から動いた、これで彼女も目撃するだろう。


 何かを飲み込むような動作をして彼女は白太に、無残な姿の白太にかけよった。

「白太……可哀想に」

 可哀想に、それが彼女の第一声だった。それだけで彼女がどれだけ白太を思っていたかわかるであろう。


「トウヤさん」

「…………」

「笑顔で送り出しましょう」






 彼女は精一杯、涙を堪えて笑顔を見せた。

 見せた先には臨時で作った白太の墓がある。彼女はこんど本格的な所に頼んで供養して貰うと言っている。


 私は悲しみを切り離し、笑顔の仮面を被り墓を見る。


 二つで拝んでいると小さな声で彼女が言った。

「トウヤさんは……仮面を被るのが上手ですね」

 皮肉では無い、彼女は率直に私を褒めているのだ。

「……それは君もだろう」

 もちろん私も皮肉では無い


 彼女は涙声で私に返す

「いえ….…私は……もう、駄目です……」

「……そうか」

 私の言葉を境に、彼女は泣き出した。何度も何度も白太の名前を呼びながら泣き続けた。そして

『くっ……』

 小さいのも少し涙をこぼしていた。


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