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白犬白太

「……おや?」

 ある日、大学から帰っている途中に我が想い人を見つけた。河原で何やらしゃがみ込んでいる。

『話かけようぜ』

 小さいのは彼女にとても積極的である、私なのに私らしくも無い。


 どちらにせよそうするつもりだったので河原に降りて彼女に話かける。

「やあ、何をしているのだ」

 彼女は振り向いた

「あ、トウヤさん」

 立ち上がった彼女のしたからキャン、と鳴き声が聞こえた。

「犬では無いか」

 彼女の足元には小さな白犬がいた。

「はい、白太といいます」

「犬を飼っているとは知らなかったな」

『犬好きだと言って彼女の家に行こう』

 小さいのがうるさいが気にしない。もう慣れた。

「白太は私の犬ではありません」

「ならば捨て犬か」

「それもちょっと違って、白太の母親は死んでしまったのです」

 彼女はよくこの河原を散歩していて白太とその母親をよく見かけていたらしい。

 ある日、白太がキャンキャンといつもより鳴いていたらしい。

 何事かと近づくと白太の母親が見るも無残な姿であった、彼女の推察では弱った所をカラスか何かにやられたようだった。


 そんなわけで彼女は白太を家で飼おうとしたのだが。

「父が酷い犬アレルギーでして」


 仕方なくこの河原に食べ物を運んで世話をしているのだという。




「それは良い事だ」

「あの……トウヤさんの家は」

 彼女が言おうとしている事はわかった。しかし無理だ。

「すまない、私の家はペット禁止なのだ」

 正確には犬はダメだ、カニカマ大臣が犬は見たくないとよく言っていた。猫ならまだしも、犬は恐らく無理だろう。

 なんでも実家の愛犬が死んだから、らしいのだが。まあカニカマ大臣の事はどうでもよい。

「そうなんですか……残念です」

 見るからにションボリとしている彼女、どうにか出来ないものか……カニカマ大臣を振り切るのは私には不可能、か。ならば問おう


「私に手伝える事はあるか?」

 彼女は白太を見つめる。

「なら、一緒に遊んであげてください」

「遊ぶ?」

「白太は寂しがり屋でして、寂しくなるとキャンキャン鳴き出すのです」

「なるほど、そういう事なら喜んで引き受けよう」

「ありがとうございます!」

 彼女は満面の笑みを浮かべた。

 この笑顔の為に、私は頑張れる。


『この笑顔の為なら何だってする』

 今は小さいのに少し共感できる。


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