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見透かし少女

「そこの仮面のお兄さん」

 地元の駅から駐輪場への道中、何処からか声が聞こえた。

 周りを見渡すと自販機の上に少女が座っていた。


「仮面のお兄さんとは私の事か」

「周りに貴方しかいないじゃん」

 まあ、その通りなのだが

「何か用か」

 少女は右手を前に突き出した

「お腹が減ったから何かちょうだい」

「…………」

 何なんだこの少女は。

「何かちょうだい」

 しつこく言われても面倒なのでカバンから昼に余ったアンパンを取り出す。

「ほれ、やろう」

 少女は自販機から飛び降りた。中々に身軽だ。

「わーい! ありがとう!」

 少女はアンパンをペロリと食べ尽くした。よほど腹が減っていたのだろう。

「満足か?」

「うん」

 そう言えば、と私は切り出す

「仮面のお兄さんとは何だ」

「仮面のお兄さんは仮面のお兄さんだよ」

「は?」

 少女は私をニコニコとしながら見つめて

「お兄さんは仮面を被りすぎているね」

 その言葉に一瞬ドキリとした。

「どういう事だ」

 確かに精神的仮面を被るのは得意だが現在は被っていない。

 第一こんな少女に何がわかるというのだ。

「仮面は一度被ると中々外れない、外したと思っていても仮面の一部、薄い膜は張り付いたままなんだよ」

「少女の癖に中々難しい事を言う」


 少女は私を睨んで

「何で他人事なの」

「私は仮面を被るが外せるからな」

「それが外れてないの」


 なんなんだこの少女は、面倒な事になる前に帰ってしまおう

「じゃあな、少女よ」

「少女じゃなくてカミサマよ」

 ……かかわらずに帰るべし。

 早足で帰ろうとした私の手を少女が掴んだ。 凄い力だ。

「何をする、離せ」

「最後に一つ」

 少女は私の手を甘噛みした。

「な、何をする気持ちの悪い」

「じゃあまた仮面が取れた頃にあいましょ、仮面のお兄さん」

 少女は少し大人びた口調で去って行った、格好をつけたいお年頃なんだろうか。

「仮面を被りすぎている……か」

 そんなことはない、そう心の中で否定出来るのにどこか引っ掛かる。

 なんなんだろうか、この感覚は。

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