見透かし彼女
「何を言う、仮面ならもう外している」
「外していません、トウヤさんは昔の自分の仮面を被っただけです」
「……そんな事は無い」
彼女は首を横に振る
「いえ、わたしにはわかります」
彼女は私の横、仮面男を指差した
「彼が、もう一人のトウヤさんが居るからです」
『……うむ』
仮面男が頷く
「君には……見えているのか」
「はい、今トウヤさんが被っている仮面のモデル……もう一人の昔のトウヤさんも見えていました、お見通しです」
「そうだったのか……ならこいつは」
私は仮面男を指差す
「彼もトウヤさんです、どちらも本当のトウヤさんなんです」
「そうか……」
私と仮面男は互いを見合う。
『そろそろ戻してくれるか?』
「もちろんだ、お前も私なのだからな」
私と仮面男は手を合わせる。
野球部に入り、他人に負ければとてもくやしがり、彼女と繋がろうとした私。
消極的で大雑把、他人に負けてももろともせず、彼女と今の関係を保とうとした私。
留年して何事にも関心を持たず、彼女だけに興味を示した私。
そして今まで私が被ってきた仮面の私。その仮面に隠された私。
それらはすべて、私なのだ。
「共に生きようぞ」
全ての私がそう言った。




