お助け少女
近くで自転車を借りて私は走る。
ここまでは高校で培った体力と何度か車が信号に捕まってくれたおかげで見逃してはいない。しかし
「はあ、はあ」
流石にもう息がやばい、体力が……
彼女の乗る車が通る瞬間に信号は無慈悲に青へと変わり始めた。これでは追いつけない。更にここで自転車がパンクした。 それでもやるだけの事はやろう。
『やっても無駄だ、やるな』
私は叫ぶ
「うるさい!」
「仮面は取れてないけど特別に会いに来てあげたわ」
いきなり横から入って来た声、前回もいきなりだった。
「……久しぶりだな」
「お久しぶり、仮面のお兄さん」
私のあんぱんを食べて私に仮面を被り過ぎていると指摘した、やけに大人びた少女がまた自販機の上に座っていた。
「すまないが私は急いでいる」
「追いつけっこ無いわ、相手は自動車だもの」
この少女は私が置かれている状況を知っているのか。
「お前は……何者だ」
「うーん、神様かな」
まただ、変人に続きこの少女まで自分を神だと名乗った。
「信じられないな」
「分かっているかもしれないけどそれを具現化したのはあたしよ」
と、少女は仮面男を指差した。
まあそれはいいの、と少女は切り出す。
「仕方ないからサポートしてあげる」
少女は自販機から降りて目を閉じる。
「まずはその自転車ね」
少女がタイヤのパンクした部分に手を添える。しぼんでいたタイヤがむくむくと膨らみ、元のタイヤへと戻った。
「次に予言」
「予言?」
「あの二人、貴方の想い人は今からこのレストランで十一時まで食事を取るわ」
少女が何処からか出した紙にはレストランの名前が書かれていた。
「最後に……こっちに来て」
言われた通りに近づくと手を甘噛みされた。息切れが無くなり体力が回復して行くのがわかる。
「お前……」
「行きなさい、あたしはサポートしか出来ない」
少女は軽々と自販機の上に飛び乗った
「最後の決め手は、貴方にしか出来ないわ」




