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無謀では無い!

 文化祭から三週間と少しが過ぎた。クリスマスだ。


 何故ここまで話が飛んだか、何も無かったからだ。

 実行委員が終わり冬休みに入った今、彼女との接点は少ない。今思えば私は彼女の連絡先すらしらないのだ。

 友人達の噂によれば彼女は、いや彼女の両親は金宮との縁談を着々と進めているとのことだ。許すまじ、金宮。


 クリスマス、つまり今日が終われば彼女と金宮の縁談は成立する。そう言う話だった筈だ。

 私がこの三週間何もしなかったとお思いか。

 否、私は彼女と金宮がクリスマスにデートをすると言う噂を聞いて金宮が行きそうな場所などを調べていた。


 夜、金宮の坊主が気に入っているというレストランの前に私はいた。ここに金宮は来るだろう。


 八時、そろそろ夕飯時だ。私は走る車を鬼の形相で睨んでいた。


 九時、何故こない。まさか検討違いか。


 十時、まさか、まさかこないはずは……

「トウヤさん!!」

 天使の声、我が想い人の声に顔をあげる。みるからに高級そうな車の窓から彼女が私に手を振っている。

 車はレストランをスルーして走りさる。まさか金宮が違う所を選ぶとは、しかし見つけた。私は彼女を見つけたぞ。



「前の車を追ってくれ!」

 近くにいたタクシーに乗り込んで運転手にそう叫ぶ

「何か事情がおありのようだ」

 ものわかりの良い運転手だ。

「その通りだ! 早く出してくれ!」

「ならば降りろ! 厄介事に巻き込むな!」

「了解しました!」

 だろうな! 私でも嫌だ!




「こんちくしょおが!!」

 私は車を走って追いかけようとする

『無謀だ、彼女とは今のような関係でいて心地よい平凡な生活に戻ればよい』

 仮面男が私に叫ぶ、私も仮面男に叫ぶ。

「無謀で結構、無謀万歳!」

 それに、無謀では無い!

『何が万歳だ』

「私は恋に生きると決めたのだ! お前は私であって私じゃない!」


 私はもう見えなくなった車を追って走りだした。

 彼女に想いを伝えるのだ!


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