彼女に惚れた日
「すみません」
彼女は私が渡した水を飲んで一言誤った。
「いや、泣ける時に泣いておくといい」
「はい……」
「そろそろ帰るか」
「はい」
彼女はまた水を飲んだ。
彼女との別れ道である分かれ道で分かれる直前に彼女は私に振った
「その、トウヤさん」
「どうした?」
彼女は少し言いにくそうに、しかしハッキリと言った。
「トウヤさんは仮面を被りすぎです」
そう言って彼女は去って言った。
「……あ」
その一言を聞いた私の中で何かが爆発した。
そう、私はその言葉を聞いて、その言葉をハッキリと言われたその瞬間に……
彼女に惚れたのだ。
何故忘れていたのだろう、それとも私が記憶の奥底に押し込んだのか、どちらかはわからない。それでも、それでも変化は起きた。
「お前は……私だったのだな」
私は小さいのに呟く
『……やっと分かったか』
小さいのが私に近づいて目を閉じて右手を此方に伸ばした。
「すまんな、長年押し込んでいて」
私も同じく目を閉じて小さいのに手を伸ばした
『構わないさ、私が選んだ道なのだから』
私と私の手が重なる。
「仮面を……破ろう」
血が逆流するような感覚、昔に戻ったような懐かしい感覚。心地が良い。
目を開けると小さいのは消えていた。
何てことは無い、小さいのは私であったのだ。
小さいのは、仮面の無い私だったのだ。




