甘ったるいミルクセーキは
掲載日:2026/10/03
あまりに甘くて、あまりに苦い、彼との思い出の味。
彼は男にしては珍しく(?)、甘ったるいミルクセーキとかいう飲み物が大好きなようだった。たまにミルクセーキを扱っている自動販売機を見つけると必ず買っていたし、ネット通販でも仕入れているようだった。
わたしは、ミルクセーキを買い占めて転売ヤーでもする気かと彼の正気を疑ったけれど、結局その疑いは晴らせずじまいだった。
━━ミルクセーキ
今、目の前に置いてある。
ウェイトレスが恭しく持ってきたのだ。円テーブルに置かれたミルクセーキからは甘ったるい匂いがが立ち昇っていた。その中で透明な氷が微かに揺れていた。
彼を思い出すから これだけは注文すまいと思っていたのに……。
この匂いに誘われて 戻ってきてはくれないかしら?
カランと氷が鳴るたび、胸の奥がキュッと痛む。彼が残していった空白は、どんな甘い飲み物でも埋められそうにない。冷めていくグラスを見つめながら、わたしはそっとため息をつく。もう一度だけその笑顔に会えるなら、いくらだってこの甘さに溺れてみせるのに。
お読みいただきありがとうございます。
甘いミルクセーキの香りと冷たい氷の音の中に、消えない切なさを込めました。
少しでも主人公の切ない余韻を感じていただけたら幸いです。




