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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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作者:
掲載日:2026/05/29

湿ったカーペット、どこまでも続く地平線の彼方に孤独に、または連なり壁々の不規則な羅列を構成していた。

端的に言えば、閉鎖的連続空間にいるようだった。

落下の衝撃で体は損傷を負っている。まともに歩くのは困難を極めた。

周囲の探索は無理そうだ。第一、身に迫る危険がすぐに現れたわけではないし、体の安泰の方が優先だ。

回りを見渡してみると最初と同じ様な感想しか出てきておらず、逆に統制された中にいるようで気味が悪い。

しばらくアクションを起こさず、待つ。待つ、待つ。ひたすらに待つ。無駄な体力の消耗は生死につながる。



ある程度時間が経った。体感では8時間ほどだろうか。この空間にい始めたときからというもの、時間の感覚が狂う。

体の傷は痛みが引いており、かろうじて走ることはできないが歩くことはできる。

水分を含んだ布特有の音を鳴らし、足を上げる。壁の質感は、舗装された室内の壁といった印象で、申し訳程度の装飾も施してある。

まじまじと見ても現実世界、もといこの空間ではない一般の建築様式と同じ方法だ。

明らかに歪なこの空間に、リアル指向の壁が置いてあることはこの空間の意義をより深いと錯覚させる。

とどまっておいても埒が明かない。歩く、最初に感じ取った空気。歩いても変わらないと思わせるほどの閉鎖的連続空間。

この空間の異常性が精神を蝕んでいるのか、はたまた自分の精神が未熟なのか、それともこの空間の性質なのか。

確実に存在する奇妙な点は腑に落ちているようで、本能では理解しきれていない。

無駄口を叩いている暇があるというのなら、私はここへと来なかっただろう。

徐々におかしくなっていることは、客観的な視点でなければ分かることは無い。

足取りは遠の昔に止まってしまっており、それでも尚、進んでいるという自覚があった。踊らされていた。

この状況を正常な精神で見ることのできる人は、そう判断すると思う。

最も、この空間を客観的に、正常な精神で見ることのできる人の存在はこの空間にとって、許されざる者だということは説明するまでもない。

耳鳴りは、自分の生体確認をしているかの如く、頭の中で響き続けている。つんざくような音だ。電気信号が麻痺している。

体は言う事を聞かず、ただの板か棒のようだった。耳を抑えることさえ厭わないというのか。

満を持して始めた探索。少し、ほんの少しの探索によって、ここまでなのか。いやきっと探索を始めたときからじゃない。

ずっと前、そう落ちてきた時から、結末は決まっていた。この空間にはそう思わせる凄味がある。

幻聴なのか、段々と意識が朦朧とする中、人のような、 足 音。恐怖はもはや感じれるはずもなかった。

心の中では隠れて様子を伺おうとする理性がまだ仕事をしていた。逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ逃げなきゃ逃げな、



ブクブクとした水音、燃えていると錯覚するほど暑い体。感じる光はうっすらと肌色だ。呼吸と合わせて、水が揺れる音がする。

その音は段々と大きくなっていく。ぽちゃ、ぽちゃ、ぽちゃり、ぽちゃり、ぼちゃ、ぼちゃ。

音は海の満ち引きのような騒音とも取れるような大きい音で、耳どころか体全体を包みこんだ。

睡眠不足による眠たさで途中で起こされるような感情。そんな感情が湧き出てきて、自分について体が認識し始めた。

少しずつ体を読みほぐしていく感覚は一度や二度といった回数では無い。意識が目覚めていく中で、断片的な記憶の抽出に成功した。

そういえば、最後の記憶は、謎の人のようなものの音が聞こえた所だったはずだ。

一気に前後の事が頭をよぎる。体はそれに答えるように、思考を巡らす、今どのような状況なのか、どの手が最善手なのか。

わからないことの方が多かったが、事実として、自分の身の回りを確認しておいたほうがいいという結論に至った。

今の状況が、最悪のシナリオだったら。あの足音。人外の生物による音。人じゃない?今どういう状況なんだ。

少し前までは、空間の異常な環境によって働かなかった頭も、動き出してからというもの創造力が上がったししまmまった。

怖い。未知の生物が怖い。あくまで最悪のシナリオの話だ。あくまでだ。他の可能性だってあるし、何より最悪になる可能性は低い。

目を開けるのははばかれ、音を重点的に聞くことにした。なにか生命の鼓動はあるのか。興奮しすぎて、自分の心音しか響いていない。

落ち着こう。一旦深呼吸だ。すーーーーーはーーーーー。ん?待て。今最悪なシナリオだったら、深呼吸の音が聞かれているんじゃないか。

待て待て待て待て、取りdd乱しすぎだ。まさかこんな失態を犯すなんて、もともと、音を聞くために深呼吸する予定だったのに。

もう無理だ、予定変更だ。絶対に感づかれている。決意して目を開く。

暗かった視界に少しずつ光が宿っていく。 肌色が徐々に薄れていき、薄目を開ける。蛍光灯のノイズ音。聞き慣れた音だ。

次第に視界を占有していた光は、いつの間にか黄色の空間へと視界はフェードしていた。

十二分に心音が落ち着いた頃、周囲の音が聞こえるようになってきた。

特有のノイズ音以外にも、乾いた床で引きずったような、スースー音、狭い閉じている空間特有の跳ね返り音。そして雨の音。

ここまで音を聞いた所、元いた場所とは違う可能性が高い。薄めの情報は前と同じような空間である暗示をしているが、明らかに成り得ない音がなっている。

これはしっかりと目を開けないと、わからない。薄目で感じた黄色の色はなにかの人型だったのかもしれない。

意を決して目を開けると、やはりそこは前にいた黄色い世界ではなかった。音で聞いたように、小さい部屋が細い通路同士でつながっている。

そんな悠長な事を言っている場合ではない。ここが黄色い世界ではなかったということは、何者かにここにつれてこられたということだ。

こんなにも長々と待ってもらったんだから、少しぐらい見てみたい。周囲を見渡すが、誰もいない。

気づいたら、カツカツといった、コンクリートのような場所特有の音はせず、ただ広がっているのは、灰色の風景だけだった。

それじゃあ自分をここまで運んできて、目を開ける前まで眼の前にいたとされて、音を鳴らしていったのは?

わからない。わからないことが多すぎて、明晰夢を見ているようだ。結果として、自分は未知の場所からさらに未知の場所へと来てしまったんだ。恐怖は冷静に回った頭によってかき消され、正直好奇心が殻を破りかけていた。

頭に冷媒が回り始めたのだろうか。疲労感は薄れ、ただ恐怖にあった気色の悪い皮膚を傳う感覚だけが体を占有していた。

よし動ける、動くことをできる。探索を進めなきゃという衝動に駆られマリオネットのように動く。

気付いていなかった、気 付 け な か っ た 。全く自覚が無いようだが、確実に退路に赤い線が刻まれていた。

シンセのような音が過ぎ去る。音と認識するには少し厳しい、環境音のようだった。

気付けば振り返っても元の場所に行くには厳しい所まで来ていた。無論、赤い色は留まることを知らず、放たれ続けている。

痛覚障害のような、効果なのだろうか。なにかを傳う腕の感覚は、腕は知っていた。腕だけが知っていた。

はっと冷静になった。蒸気タービンを十二分に回せるほどの熱を持っている。やけに体が暑いと思った。

唐突に急激な熱風に押し当てられ、皮膚が焦げるような感覚に襲われた。痛覚によって気絶することを許さず、そこにあるのは、灼熱の業火だけだった。

熱い、そんな生ぬるい言葉では語ることさえ許されない。シンセの音は、一定周期で鳴り響き、音が聞き取れる状況でないのに、まるで頭の中に直接流れているように。

慣れとはときに重要な事を見失う。全ての感覚がシャットアウトされた。他の事を考えることは不可能なぐらい。

気付けなかったのだ。最初と同じ足音、状況。全てこの空間に来て、感じたものだった。穴という穴から赤い流体や、塩を含んだ液体が流れ落ちる。

肺は当の前に焼き切れ、酸素濃度は足りず、喉からは鮮血が吹き出しており、筋肉は外気と接触していた。

カタ、カタ、カタ。足音は確実に自分へと近づいているが、感覚では感じ取れず、本能に縋り付いている理性が少し反応した。

足、腕、胸、首。体のありとあらゆる部位が欠損し、ドロドロの液体状の物質へと変貌を遂げかけていた。

ああ、もう無理だ。終わることの無い苦痛と、絶え間なく流れるシンセの音。赤い線は今この場所で面となったのだった。



本来ここには人ならざるものしか立ち入ることはできない。途中までしか運べなかったことを今改めて謝るよ。

白目を向いた目。もはや目という部位が存在しているのか怪しいが、視覚情報は確かにあった。

不可解な点は、音が"見えた"ことだ。

脳みそはまだあるのだろうか。考えられているということはまだ生きているということか。厭、死んだ後も魂は残り続ける場合もあるかもしれない。

この世界は、 な ん だ ?

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