7. 小休止
「ねえ、空乃助、サンドイッチってさ、サンドイッチとサンドウィッチどっちが正しい思う?」
また、塔子が訊いてきた。
「どっちでもいいだろ、通じればさ。細かいこと気にしすぎじゃないか?」
「そうかなぁ、名前って正確に呼ばないと失礼じゃない?」
それは確かにあると思うが、アボカドやサンドイッチの正確な呼び方なんて気にしたこともなかった。
「……あたしはさ、長いこと、学校でも家でも、本当の名前を呼んでもらったことないんだ。だから、空乃助に会って、今、『塔子』って呼ばれてて、嬉しいんだ」
「そっか、いくらでも呼んでやるぞ、塔子塔子塔子塔子」
「……ふざけてんの?」
おこられた。調子に乗りすぎたらしい。
「ごめんなさい……」
♪ ♪ ♪
「お待たせしましたー、こちらアボカドサンドウィッチとティラミスパフェになります」
そして店員さんは一度戻り、巨大な器を持って戻ってきた。
じゅうじゅうと美味そうな音を立てていた。
コトン
「高級和牛のスペシャルハンバーグになります。鉄板が熱くなっておりますので、火傷しないようご注意下さい」
シゲオの前に、ハンバーグが置かれた。
「以上でご注文お揃いですね?」
「はい」
塔子が笑顔で答える。
「では、ごゆっくりー」
店員さんは、プラスチックプレートの伝票を裏返しにしてテーブルに置き、ペコリと頭を下げて、またパタパタと店の奥へ消えていった。
「…………」
「これは……美味しそうね……」
と、塔子。
シゲオは、とてもキラキラした目でそのハンバーグを、見つめていた。
「ほら、シゲオ、早く食べないと、冷めちゃうわよ」
塔子が言うと、
「う、うん」
返事をして、すぐにハンバーグを食べ始めた。
器用にナイフを使って、切り分けていく。
幸せそうだった。
塔子も、幸せそうにティラミスパフェとやらを口に運んでいるので、俺も目の前にあるアボカドサンドイッチを食べることにした。
大きくかぶり付いて、よく噛んで飲み込む。大変うまかった。