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あふれろ!核☆融☆合  作者: いさな
6/6

☆第6話☆

「あれ? 狂太郎(きょうたろう)は?」

幽天橋(ゆうてんばし)さんなら昨日の夜からずっと第4実験棟ですよ。第78次実験の準備中で……」

「ふーん」

 狂太郎の不在に気付いた量子(りょうこ)小金守(こがねもり)に問いかける。

 いないと分かっても、ソファーに寝転がったままスマホでゲームを続ける量子。

 しかし、しばらく後に突然立ち上がり、「買い物行ってくる」と言って量子は出て行った。


 量子の存在は研究所の置物ぐらいにしか考えていない小金守は、そのことを全く気にもかけずに実験結果の解析を続けている。


 他の研究員も意に介していない。

 唯一、伊勢川(いせがわ)だけがこの異常事態に気付いて量子に声をかけた。

 量子はなにしろ、この研究所に来てからというもの一度も外出したことがなかったからだ。

(ちなみに、研究所内には宿直室があり、量子はシャワーもベッドもそこを利用している)


「量子さん? お出かけですか?」

 問われた量子は、無言のまま手を振って研究所を出る。


 まさかこの量子の不在が、実験に致命的な結果をもたらすとは、この時は誰も考えてはいなかった。




「おかしい……。昨日まで安定していた重水素原子核の反応が、今日の実験では全くおこらない……? 幽天橋さん、どういうことでしょうか?」

「こ~が~ね~も~り~。わからんのか~?」

「す、すいません!私にはさっぱり……」

「ふん! 量子はどこだ!!」

「量子さん? 先ほど外出されたようですが……。それが何か関係あるのですか?」

「あるに決まっているだろうが!!!! 量子はこの!!孤高の!!!天才!!!!幽天橋狂太郎のただ一人の助手である!!!!!」

「はあ。そう言われましても、量子さんが実験を手伝われたことはありませんが……」

 自分が狂太郎に助手とはカウントされていないことに、密かにショックを受ける小金守。


「いいから!!量子を連れてこんか!!!!!」

 狂太郎の声がこだまする。


 一方そのころ。

 コンビニでアイスを買った量子は、持ち帰るのも待たずにイートインでアイスを食べていた。

 コンビニの向かい側には美容院が見える。

「そういえば、しばらく切ってないな……切ろ」


 アイスを食べ終え、美容院に入る量子。

 予約もしていなかったが、その店は空いていた。


「えーと、なんかこう、いい感じに」

「はーい♡ なんこう、いい感じね♡」


 ピンク色に染めた髪を逆立てた美容師が、量子の適当なオーダーに適当に応える。

 髪を切られながらもスマホゲームに興じる量子。

 彼女の意識には狂太郎のことは消えていた。



 研究員の金崎(かねさき)は、量子を探せという狂太郎の突然の指令に走り回る。

 1軒目のコンビニも、2軒目のコンビニも、3軒目のコンビニにもいなかった。


「くっ! ここにもいない! どこだ!?」

 なぜかコンビニばかりを探し回る金崎。

 彼は、幼少期より近所の理容室しか利用したことがなかったので、美容院なるものの存在を意識したことがない。人は、意識したことのないものは、存在しないのと同じ。

 そして、彼にとって買い物とはコンビニであった。

 筑波中のコンビニを駆け巡る金崎。

 無駄に体力があるため、彼の足は止まらなかった。


 数時間後。

 ショートカットにイメチェンした量子が研究所に戻る。

「あ、量子さん。切ったんですね。ショートもお似合いです」

「うん。ありがと」

 伊勢川に褒められて無表情ながらも気分の良い量子。


「くぉら~助手~!!どこに行っておったのだ!?」

「見て分からないない? 狂太郎」

「お…、うむ……。似合ってるな」

「ふふん」

 狂太郎にも褒められてさらに上機嫌の量子は、すぐさまソファーになだれ込んで、追加で買ったアイスをかじる。


「あ、そうだ狂太郎。あたしは助手じゃなくて量子」

「う、うるさい!おまえは助手だ」


「あ!幽天橋さん! 第78次実験ですが、急に反応が安定し始めて、上手くいきそうです!!」

「そうだろう! 小金守!!」

 寝ころぶ量子をちらっと振り返り、狂太郎はニヤリと笑ったのだった。


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