☆第4話☆
「お前が幽天橋狂太郎か。私は加米利也国国務省特殊部隊のキャリー・ターナーだ。その実験データ、もらっていくぞ」
キャリーは狂太郎の背後に立ちつぶやく。
PCの操作に全神経を集中させている狂太郎には、その声は届いていなかった。
「狂太郎~。聞こえてる~? なんかその人、話しかけてるよ~?」
「ん。何だって、量子」
なぜか量子の声には反応した狂太郎が振り返る。
その瞬間、キャリーは狂太郎の胸倉をつかみ、引き倒そうとする。
しかし! 狂太郎は倒れない!
その力を柔らかに受け流す。
「ほほう。これはこれは異国のお嬢さん。まさか合気を使われるとは」
にやりと笑う狂太郎。
「お前こそ、私の投げを受け流すとは…!! ただの科学者ではないな……!!」
「当然!!!この!!!!幽天橋狂太郎が!!!!!ただの科学者であるはずが!!!!ない!!!!!!!!」
宣言する狂太郎が言い終わる間もなく、キャリーは狂太郎に組み付く。
「千武流合気術! 虎空投げ!!!!」
「ふん!!!」
まるで獲物を狩る虎の如く、しなやかな体裁きで投げを打つキャリーに対し、狂太郎は流水の如く身体を回転させて躱す。
「その動き、まさか天慶流!!??」
「ふふっ。何のことやら」
狂太郎の動きに驚くキャリー。
意に介さぬ狂太郎。
「私は今、実験で忙しいのだ。お前と試合うのも面白いが、またにしてくれ」
「ふんっ。まさか科学者のお前がこれほどの実力とは…。仕方ない、ここは退くとしよう。だが、核融合の実験データは必ずいただく。世界初の常温核融合を実現するのは我が国だ!!」
言い終わると、瞬く間にキャリーは出て行った。
「さて、実験の続きだ。おい小金守!! いつまで寝ている!! さっさとお前も準備しろ!!!」
「ゆ、幽天橋さん、あなたは…、一体……?」
狂太郎の意外な身体能力にたじろぐ小金守。
そんな小金守のことなどお構いなしに、狂太郎は一心不乱にキーボードをタイプする。
そして、キーボードが真っ二つになるほどの勢いでエンターキーを叩き、叫ぶ。
「ふっはっはっはっはっはぁーーー!!!! 第2実験だ!!!!!」
この様子を、キャリーは見ていた。
先ほど侵入した際に、超小型監視カメラをセットしていたのだ。
隠れ家で狂太郎たちの様子を見ながらキャリーは微笑む。
「ふふっ。今は泳がせてやる。お前が核融合を完成させたとき、その時こそお前の最後だ……!!」
キャリーの手元で刃が光る。
彼女の身長ほどある刀身。波打つ刃文。これまでに数多の戦場で人を切り続けた怪刀「奇琉丸」である。
「やつがどれほどの腕前だったとしても、こいつには適うまい……!!」
キャリーは静かに刀身を収め、それを振るう時を待つ。




