☆第2話☆
筑波、核融合研究所。
「ダメだ。また実験は失敗だ…。くそっ!できない…」
小金守安人は研究室の床に膝をついた。
「やはり核融合発電の実用化なんて無理なのか?いや、何か、何か突破口があるはずだ!どうすれば、どうすれば……!」
「ふっふっふ。悩んでいるようだな、小金守主任」
「誰だ!?貴様、どうやってここに入って来た!?」
「俺の名は幽天橋狂太郎。お前に常温核融合の開発を指南しに来たのだ!」
「はあ~?常温核融合だと~?そんなことが出来るわけがないだろ~?寝ぼけたこと言うな!」
「あっはっはっは!正に片腹痛い!研究主任ともあろう者が、その程度の理解とは!!」
「何を言ってやがる!!!常温での核融合が不可能なことは、この世界の常識だ!!理解がないのはお前だろうが!!!」
「くくっ。その常識とやらに囚われてしまっているから、お前らはダメなのだ。この!天才の中の天才!!幽天橋狂太郎の目には常温核融合を実現する道筋が見えている!!!!凡人にはわからんだろうがな!!!!!」
小金守は絶対零度の冷たい視線で狂太郎を見る。
たまにこういう頭のおかしな奴が湧いてくるのだ。
全く困ったものだ。
「あのねえ、核融合というのは太陽の内部のような超高温状態でないと起きないの。これが常識。それを常温で起こそうっていう実験は確かに行われていたけども、成功した試しはない!常温での核融合は不可能、これが世界の研究者の共通認識なの!!」
「くくっ、ふはっはっはっは、はあーっはっはっはっはっはっはぁー!!!!それを覆すのがこの超天才!!!幽天橋狂太郎だと言っておろうが!!!」
狂太郎の高笑いは止まらない。
翻る白衣。
響き渡る笑い声。
「あー、ごめんなさいねー。うるさくって。はいはい狂太郎、もういいよね帰ろっか」
「助手!何を言っている!!ここからがいいところだろうが!!」
「ええ~?もういいじゃん。あと、あたしは助手じゃなくて量子ね」
「よーし、量子!とりあえずここの実験設備を全て接収するぞ!!小金守!すべての施設のカギと、PCのログインコードを教えろ」
「教えられるわけがないだろうが!!!」
「ふっ。無駄だ」
狂太郎はPCに触れる。
「おい!勝手に触るな!!」
わずかに数秒。狂太郎はPCにログインする。
「なぜ!?どうしてパスワードを知っている!?」
「はっはっは、分からないとでも思ったか!!なるほど、これが実験データだな」
「貴様、勝手に見るんじゃない!!!」
「おっと、これは。ひどいものだな。全く成功する兆しも見えない。これでは到底、実用化は不可能なのではないか?」
「くっ!!一目でそれがわかるとは…!!貴様本当に何者なんだ…!?」
「はっはっは、この実験プランでは永久に核融合発電など実用化できないぞ。どうする?どうするんだ?」
「うぐっ…!!ああ……、その通り、無理だ……。核融合発電の実用化なんて、到底無理なんだ……」
「そ!こ!で!発想の転換だよ、小金守。そもそも超高温状態を作り出して核融合を行うのは無理なんだよ。出来たとしても、かかるエネルギーが大きすぎて商業ベースには乗らん!」
「お前!?そのことに気付いているとは!?」
「だ!か!ら!方法は常温核融合しかないのだ」
狂太郎は小金守の胸倉をつかみ、彼の顔を覗き込む。
狂太郎の狂った様な目が、すさまじい眼力で小金守の目を睨む。
小金守は、もはや狂太郎に逆らう気力がなかった。
「実験プランは私が立てる。貴様はそれを粛々と実行しろ。いいな、小金守!」
「わ、分かりました……」
「ねぇ、狂太郎~。いつまでいるの~。あたしもう帰っていいかな~?」
「量子!助手のお前が帰ってどうする!」
「だから助手じゃないって」
狂太郎の常温核融合完成への実験が始まった。




