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あふれろ!核☆融☆合  作者: いさな
11/13

☆第11話☆

「さて、前座は終わり、真打登場といったところか」

 腕を組んで仁王立ちする狂太郎(きょうたろう)は、そう言って扉を見る。

 ゆっくりと開く扉の間口を、巨大な輪郭を持つ男が狭そうにくぐる。


加米利也国(かめりやこく)国務省特殊部隊隊長のトニー・ケールマンだ。先ほどは部下が失礼した」

「いやいや、なかなか大したお嬢さんだったよ」


「ふん。私がここに来た理由は解っているな」

「核融合実験の研究所データだろう。ご苦労なことだ」


「ああ。おとなしくデータを渡してもらおう」

「欲しければ自分でとりな。ただし、お前さんは俺の後ろには進めんがな」

 メインPCの前に立ちはだかる狂太郎に対して、トニーはニヤリと微笑みかける。


「これを見ても、まだそんな口が叩けるかな?」

 上半身の服を脱ぎ捨てて、トニーは両手を振り上げる。

「ふん!!!」


(フロント)双二頭筋(ダブルバイセップス)!!!!」

 はち切れんばかりの胸板、筋肉の一つ一つがはっきりと分離して、硬質に隆起した上腕。

 めきめきと血管が走り、皮膚が張り付くほどに筋繊維を浮き上がらせる前腕。


 汗を迸らせ、熱風さえ感じさせる輝く筋肉に、狂太郎はたじろいだ。

「これは!! 生半な鍛え方ではないな。ふふっ! 面白い!!」


(フロント)背筋拡張(ラットスプレッド)!!!!!!」

 トニーは両腕を下ろし、腰にあてる。腕と胴体の間にできた隙間から、あり得ないほど大きく発達した広背筋がせり出して見える。

 弾ける筋肉の圧倒的な迫力。その前で狂太郎は、暴風雨を受けているかのようなプレッシャーを感じる。


横大胸筋(サイドチェスト)!!!!!!」

 トニーは身体を左横に向けて、右肩を前に出し、狂太郎にじりじりとにじり寄った。


「くっ!!! なんという圧力!!!!」

 狂太郎がわずかに下がる。


(バック)双二頭筋(ダブルバイセップス)!!!!!!」

 さらに近づいたトニーは、後ろを向き、両腕を持ち上げて背中を反らす。

 膨れ上がる僧帽筋、はじける二頭筋、うなりを上げる広背筋。


 狂太郎の感じるそのプレッシャーは、もはやハリケーンといっても過言ではない。

 全身を汗だくにして、がくがくと膝を震わせながら、なんとかその場に立つ。

「おのれ、貴様……!!!! これほどとは……!!!!」


(バック)背筋拡張(ラットスプレッド)!!!!!!!!!!!」

 ババッという効果音が聞こえるほどに広がった広背筋。

 その勢いに、ついに狂太郎はその場に尻餅をつく。


(サイド)三頭筋(トライセップス)!!」

 へたり込んだ狂太郎を尻目に、横に向きを変えつつトニーが前進する。

 気がつけば、トニーのズボンは筋肉のパンプアップによってはじけ飛んでいた。

 下半身は、黒いブーメランパンツだけが光る。


腹筋(アブドミナルアンド)(サイ)!!!!」

 前を向き、両手を上げて頭の後ろに組むトニー。

 山脈の連なりの如く彫り込まれた大腿筋、大根がおろせそうなほどの凹凸が刻まれた前鋸筋、チョコレートよりも硬く分離した腹筋。


 足に力が入らなくなった狂太郎は、その場から立ち上がることが出来ない。

 成すすべもなく、トニーを見上げる。


最!大!筋!力(モーストマスキュラー)!!!!!!!!!!」

 トニーが腕を身体の前に構え、持てる全ての筋肉のポテンシャルを最大にした瞬間、彼を中心として爆風が吹き荒れた。


 狂太郎は、その猛威に抗うことも出来ずに転げて飛ばされる。

 うずくまり、ピクリともしない狂太郎。


「ふん。口ほどにもなかったな」

 汗びっしょりになりながらポーズを解くトニー。

 メインPCの本体を、無造作につかんで持ち去ろうとする。


「あのー、おじさん。それ、持っていかれると困るんだけど」


 PCを抱えたトニーの背後、音もなく立つ女がいる。

 量子(りょうこ)だ。


「いつのまに!? 誰だ!?」

「それ、返してもらえる?」

 量子は、驚愕するトニーに構わずに淡々と言った。


「ぐっ! 助手! いたのか……!!」

「ソファーで寝てたら、騒がしくて起きちゃったよ。あと、助手じゃなくて量子」

 這いつくばる狂太郎に、いつも通りのテンションで返す量子。


「ふん!! こんな小娘が、この私のポージングに耐えられるわけがない!!! 最!大!筋(モーストマスキュ)!……」

 再び、全ての筋肉に力を込めようとしたトニーの身体を、するりと撫でる量子。

 すると、それまで充血し漲りきっていたトニーの筋肉から、一瞬で緊張が抜けた。


「何!!! どういう、ことだ……!!! 力が、入らない……!!!」

「うわ。汗が手についちゃった」

「こら!! 量子!!! 俺の白衣で手を拭くな!!!!!」


 力の入らないトニーは、その場に膝をつく。

 量子は、そのトニーの手の中にあるPC本体を抜き取って、重そうに抱えながらデスクに戻した。


「くそっ……! どうして!? 私の身体はどうなってしまったんだ?」

 跪き、困惑するトニー。


 途方に暮れる彼の前、扉が開き、一人の老人が入って来る。

「ほっほっほ。如何なる筋肉も、特異点の前には無意味じゃよ」

「シュバルツシュタイン? どうしてお前がここに!?」


 驚くトニーを無視して、シュバルツシュタインは量子の前に歩み寄る。

時ヶ峰(ときがみね)量子さん。君のことを聞かせてもらおうか」



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