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あふれろ!核☆融☆合  作者: いさな
10/13

☆第10話☆

「第99次実験が終了しました」

「よし!! 小金守(こがねもり)、結果はどうだ?」

「はい。これは……、成功、成功です!!」

「ふわっはっはっはっは!!! まあ、当然だがな!!!」


 常温核融合実現化への実験もいよいよ大詰め。

 自信が漲り、溢れんばかりの才気を輝かせる幽天橋(ゆうてんばし)狂太郎(きょうたろう)は、もはや手足の如く付き従う小金守安人(やすひと)と共に、実験結果を確認する。


「残すところは、第100次実験のみです。もはや核融合は実現したも同然ですね!!」

「こーがーねーもーり!!! 貴様はそんなことを言っているから二流なのだ!!! いいか!!!! 実験とは常に成すか成さぬかの一本勝負!!!! やる前から実現したも同然などと宣っていては、成功するものも成功せん!!!! 気を引き締めろ!!!!!!」

「はい!!!!!! 申し訳ありません!!!!」


「よし。伊勢川(いせがわ)、第100次実験の準備はどうだ?」

「実験準備は、22時16分現在、95.3%まで完了しています。残りの準備におよそ78分25秒を要する予定ですが、本日中に実験を実行いたしますか?」


「そうか。今日は遅くなったな。よし!!! 明日の朝イチで第100次となる最終実験を実行する!!!! 今日はこれで全員休め」

「了解しました。お疲れ様です」


 遂に最終実験が目前となり、研究員たちはそわそわとした気分で帰宅の途につく。

 ばらばらと皆が出て行く中、研究所のメインルームの中央に仁王立ちし、モニター画面を凝視している狂太郎。彼だけは微動だにせず、他の者が去っていくのを待っていた。



 研究員が去り、狂太郎だけが立つ広い室内。後方の扉がゆっくりと開く。

「来たか。待っていたぞ」


 怪しく光る妖刀、「奇琉丸(きるまる)」を携えた金髪の女。加米利也国(かめりやこく)国務省特殊部隊のキャリー・ターナーが狂太郎の後ろから刀を振り上げる。


「覚悟!」

 言うよりも早く、キャリーは「奇琉丸」を振りぬいた。

 電光石火。

 刀は空を切る。

 半身で躱す狂太郎。振り返りざまに拳を放つ。

 身を屈め、紙一重で躱すキャリー。

 狂太郎は後ろに飛び距離をとる。

 キャリーはさらに低い姿勢で刀を構え、獲物を狙う豹の如く狂太郎を睨む。


「ふふっ。やるな、幽天橋狂太郎」

「貴様こそ。異国のお嬢さん。なかなか業物だな、その刀」

 ニヤリと笑う狂太郎。

 瞬きもせずに見つめるキャリー。


短地足(たんちそく)!」

 叫ぶとキャリーは瞬間移動とも思えるほどの速さで距離を詰め、狂太郎に向けて切りかかる。

 その斬撃に対し、狂太郎は風に舞い散る木の葉の如く身を躱す。


「その動き、流葉拳(りゅうようけん)か?!」

「いやいや、我流だよ」

「戯言を!!」

 振りぬいた刃を切り返し、狂太郎の体躯を両断するべく刀を振り上げるキャリー。

 しかし、刀が捉えたのは狂太郎の白衣のみ。


「何!!!」

 狂太郎はどこだ? とキャリーが思った瞬間、右わき腹に重い衝撃を受ける。

 その衝撃は、キャリーの内臓をグラリと揺らし、さらには脳髄までかき混ぜるように突き抜けた。

「ぐっっっ……はっあっっっああああーーーー!!!!!」

 うずくまるキャリー。


捻動掌(ねんどうしょう)だ。立てまい。異国のお嬢さん」

「……常陸神国(ひたちしんこく)……、貂家(てんけ)に伝わる、秘伝武術、皇千流(こうせんりゅう)……か? まさか……、科学者風情が……?」

「これは!? よくご存じで! そこまで知っているのなら、お前の身体が今どうなっているかも解るだろう。内臓と、小脳をちょいと捻じ曲げている。ふふっ、しばらくはじっとしていることだ」

「ふざけやがって……」

「おっと。無理すると血を吐くぜ」

「くっっ……!」


 身動きのとれないキャリーの手から、刀を取り上げる狂太郎。

「おおっと。奇琉丸じゃないの。これは素晴らしい。今日はこいつに免じて赦してやる」


「ぐっはっっっ!!!」

 キャリーは、その場に吐血し、転がるようにして逃げて行った。



「何という、何という屈辱……!!! この借りは、必ず、必ず返してもらうからな……!!!」

 人気の途絶えた闇夜の道を、血まみれで這いずり復讐を誓うキャリー。

 そんな彼女の前に、ベレー帽をかぶる大男が立ちはだかった。


「ターナー君、なんて体たらくだ。君にはもう期待しない」

 どす黒く低い声でそう言い放つ男。


「た、隊長!! 私は、私はまだやれます!!!」

 懇願するキャリーを見下ろし、さらに頭を踏みつけながら男は言う。


「私が仕事の見本を見せてやる」

 男はゆっくりと研究所に向けて歩き出す。

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