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49話 吐露

年末年始仕事で忙殺されてたら、更新が1ヶ月も止まってしまった...(´ω`)


「さてと、そしたら作戦開始だな。フェリスとルシェルは遠くで待機していてくれ。」


「...分かった。でも気をつけてよね、背中以外は無防備なんだから。」


「何かあったらすぐ駆けつけるよ。」


 セロと情報交換をした2日後の0時、トーマは囮作戦を決行すべく、宿の外でフェリスとルシェルと別れ、夜のテセリを1人で歩き出した。


 衣服の下には、背中から刺される事を予測して鉄板を仕込んである。


 手には酒瓶を持ち、酔っ払ったフリをして今までの被害者と似た状況を演出している。


『被害者が襲われた場所に法則性は無いようなので、適当に歩きましょう。』


(分かった。ところでARIA、前に言ってた大気中の魔素を操作して死角を把握する方法は確立出来たのか?)


『はい、トーマを中心とした半径10m程の範囲であれば、動体検知が可能になりました。但し昆虫などの小さなものは、まだ完全に捉える事が出来ない状態です。』


(十分だよ、流石だな相棒。)


『いえ、今後は精度を上げられるよう努力します。』


 ARIAとしては現状の精度に納得していないらしい。



 暫く歩いていると、人気のない通りに差し掛かった。


(襲われるとしたらこの辺りか...ARIA、俺の反射神経じゃ間に合わないかも知れないから、いざという時は身体をコントロールしてくれ。)


『畏まりました。』


(あと、出来れば背中の鉄板に刺さるように動いてくれないか?その方が相手の虚をつけるからな。)


『ですがそれは危険では...』


 ARIAがそう言いかけたとき、トーマの身体が勝手に動いた。


 その直後、風切り音と共に背中に衝撃が走る。


 ナイフが鉄板に当たった硬質な音が辺りに響く。


(来たか、ARIA確保だ!)


 衝撃に少しよろめきながらも、トーマがARIAに指示を飛ばす。


 直後、ARIAのコントロールでトーマは素早く振り返り、通り魔の腕を掴む。


 その手には刃渡15cm程のダガーが握られている。


 白く細い女性の手だ。


 相手の姿を確認すると、驚きに目を見開いた美しい女がいた。


 白いワンピースを纏い、黄金色の髪と耳、柔らかそうな尻尾を持った狐獣人だ。


 しかし視線はどこか遠くを見ていて、異様な不気味さを纏っている。


 トーマは素早く女を後ろ手にして拘束した。


(ARIA、ブースト2だ!)


『畏まりました。』


「うっ...くぅ!」


 女は激しく抵抗するが、身体能力を強化したトーマを振りほどく事が出来ず、次第に大人しくなっていく。


「諦めろ、お前の力じゃ逃げることは出来ない。」


「イヤ...イヤァーー!!!」


 犯人の女、エリシアは声を振り絞って叫んだ。


「耳いてぇ...急に叫ぶなよな。」


 突然の大声に耳鳴りを覚えつつも、トーマは拘束を解かずエリシアの様子を見ている。


「...さなきゃ...殺さなきゃ...私が...」


 彼女は虚ろな目をしてブツブツと囁いていたが、しばらくすると目に光が戻り、ハッとしてトーマの方を見た。


「違う...私は...」


 目に涙を溜めて何かを訴えるようにトーマを見つめ、直後にカクンと首を垂れて意識を手放した。


『意識を失ったようです。どうしますか?』


「そうだな...誰かに見られる前に移動してフェリス達と合流しよう。」


 トーマはそう言うと、エリシアを抱き抱えた。


 彼女の軽さに少し驚きながら、フェリスとルシェルの待つ合流地点に向かった。




「彼女がそうなのかい?」


「ああ、通り魔事件の犯人だ。...いや、彼女も被害者だな...」


 ルシェルの問いにトーマが答える。


「て事はやっぱり洗脳されてたってワケ?」


「ああ、襲われた時の様子を見る限り間違いなさそうだ。」


 フェリスはトーマの腕の中で眠るエリシアを、警戒と嫉妬2つの意味で油断なく見つめている。


「まずは宿に戻って彼女の目が覚めるまで待とうか。」


「そうだね。部屋の中なら逃げられないだろうし。」


「...お姫様抱っこじゃなくてもいいじゃん...」


「え?なんか言ったか?」


「なんでもない!行くわよ!」


「?」


 フェリスの様子に、トーマの頭上に?マークが浮かぶ。


「はぁ...トーマって時々どうしようもなくニブいよね...」


 ルシェルはトーマに呆れている。


「はい、ルシェルに同意します。」


 ARIAもわざわざ音声で同意する。




「ん...ここは...」


「お、目が覚めたみたいだな。」


 薄く目を開けたエリシアの前には、先程自分が襲った男の顔があった。


 意識を手放す前、自分を憐れむような表情を見せた男の顔だ。


「あなたは...」


 そう言うと自身の現状を悟り、ハッとして辺りを見回す。


 そこは見知らぬ宿の一室で、エリシアはベッドで仰向けになっている事に気づく。


 男の他には、エルフの少年と猫獣人の少女がこちらを警戒しながら見ていた。


 急いで上体を起こすが、男が自分の両肩に手を置き、優しく宥める。


「落ち着いてくれ。君に危害を及ぼすつもりはないんだ。」


「わ...私は...」


「エリシアだよな?ここ最近話題になってる通り魔の。」


「違う!違うの!私はそんな!」


 混乱と後悔でエリシアの視界が滲む。


「悪い、嫌な言い方だったな。分かってる、君は悪くない。俺も君を断罪したくてここにいるわけじゃないんだ。だから落ち着いてくれ。」


 あの夜以来、初めてかけられた優しい言葉だった。


「ごめん...なさい...ごめんなさい...」


「謝らなくていい、君は悪くない。」


 本気で自分を心配している声音に、エリシアの中で何かが切れた。


「うぅ...ああぁぁ!」


 肩に添えられた男の温もりに溺れるように、声をあげて泣いた。



「私はエリシアです...こんな事をするつもりはありませんでした。」


 ぽつり、ぽつりと、エリシアは過去を振り返りながら話し始める。


「ある時から私が私じゃなくなったみたいで、衝動を抑える事が出来ませんでした...頭の中で声がするんです...それに逆らえなかったんです。」


「ああ、分かってる。君はある人物に洗脳されていたんだ。そのキッカケは思い出せるか?」


 男の言葉に、エリシアはあの夜の事を思い出す。


「半年くらい前です。当時付き合っていた人に裏切られて、少しヤケになって酒場で飲んでたんです。」


 思い出すと、今でも心が締め付けられるような感覚を覚える。


「その時、たまたま隣にいた人に声をかけられて、少し話をしました。」


「それはどんな奴だったか覚えてるか?」


 男の言葉に、その人物について思い出そうとするが、何故か顔や姿を思い出せない。


「分かりません。女性だったというくらいで、他の事はどうしても思い出せなくて...でもその人の言った言葉は覚えてます。」


 その時、エリシアの意識に靄がかかり、再びあの言葉が自分を支配しようとする。


 ーーそんな男刺しちゃえば?肺を刺されたら息が出来なくなってかなり苦しいらしいわよ。


 エリシアはその言葉に抗えず、再び狂気を纏った。


「ふふふ。そうよ、あの男が悪いのよ...肺を刺されて苦しんで死ぬと良いわ...ふふふ、あはははは!」


 その時、パァンという乾いた音が部屋に響いた。


「しっかりしなさい!これ以上罪を重ねて何になるの!?闘いなさい!」


 猫獣人の少女が自分の前にいた。


 左頬がジンジンと痛んでくる。


 エリシアを飲み込もうとしていたあの言葉が、少しだけ遠くに去った。


「ごめ...なさい...」


「謝る相手はアタシじゃないわ!アンタが手にかけた人達よ!」


 少女の言葉に、エリシアは自分の罪の重さに潰れそうになる。


「フェリス、気持ちは分かるが今は抑えてくれ。エリシアもそれは分かってるだろうし。」


「...分かった。」


「でもナイスだ。洗脳が解けたみたいだな。」


 男が少女にそう言うと、エリシアの方に向き直った。


「恐らく君を洗脳した奴の情報を漏らさないようにプロテクトがかけられているんだと思う。でも女っていうのは新しい情報だな。自分をコントロール出来なくなるのは1日のうちどれくらいの時間になるか分かるか?」


「そうですね...最初はほぼ1日中でした。今は数時間程度でしょうか...」


「なるほど、支配は時間とともに弱くなってそうだな。悪いが、あと数日ここに拘束させてもらいたいんだが良いか?」


 男の自分に対する丁寧な姿勢に驚きながらも、エリシアはそれに首肯する。


「俺達は君が...エリシアが悪人だとは思ってない。寧ろ弱った所をつけ込まれた被害者だと思ってるんだ。だから暫く窮屈な思いをする事になるが、理解して欲しい。」


「私はこれから...どうなるのでしょうか?やはり処刑されるのでしょうか...」


 膝の上に置いた拳が震える。


「正直なところ、どんな判断が下されるのかは分からない。でもそうならないように全力を尽くすよ。」


「ありがとう...ございます...」


 エリシアは初めて男を直視し、ぎこちないながらも笑みを溢した。


「やっぱ笑ってる方が魅力的に見えるよ。」


「トーマ?」


 何故か少女からのプレッシャーが増した。


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