表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/51

46話 囮捜査

 

(はぁ...やっちまった...)


『2つの意味で、ですね?』


(ちょっとARIAさん、誰が上手いこと言えと。)


 テセリの街に朝日が差す。


 ベッドから上半身を起こし、トーマは視線を横に落とす。


 そこには、トーマの腕にしがみついて幸せそうに眠るフェリス。


 所謂朝チュンである。


(まさかファンタジーの定番を再現する事になるとはな...しかし流石体力自慢、中々はげし...)


「ん...んぅ〜。」


 昨夜の事を思い出しかけていたトーマの耳に、まだ寝足りないという様子で目を覚ましたフェリスの声が届く。


(今こそあの有名なセリフを使う時なんじゃないか?よし、言うぞ!)


「おはようフェリス。ゆうべはお楽しみで...」


「わっ!トーマ!?」


 フェリスが突然目を見開き、ガバッと起き上がる。


 またしてもトーマの決め台詞は最後まで言い切れなかった。


「とりあえず...服着ようか...」


 一糸纏わぬ自身の姿に気づいたフェリスは、顔を真っ赤にして布団に包まる。


「見るな!見ないで!!」


「でももう見てるしなぁ...」


「今はダメ!服着るから後ろ向いてて!」


「はい。」


『トーマ、乙女心を分かってないですね。』





「おはようルシェル。」


「...おはよ。」


「ふふ、おはよう2人とも。」


 1階の食堂前に3人が集まった。


 いつも通りを装うトーマ、顔を少し赤らめて俯くフェリス、その2人の雰囲気を察してニヤけるルシェル。


「昨日はよく眠れたかい?僕は人肌恋しくて中々寝付けなかったよ。」


「ARIA、喋ったな。」


「ルシェルも知っておいた方が良いのではと判断しました。」


「祝福するよ2人とも。」


「もうこの話は終わり!さっさと朝ごはん食べるわよ!」


 フェリスは照れ隠しで声を張り、先に食堂に入った。


「ルシェルに黙ってこんな事になって、申し訳なく思うよ。」


「気にしなくて良いよ。今までのフェリスの態度を見てたら、遠からずこうなるだろうとは思ってたしね。」


(ルシェルが大人だ...)


「因みに、昨夜の行為は洗脳に対する免疫強化には繋がりません。」


「別にそれ言わなくていいから!」


「あはは、ARIAも冗談を言うんだね。」



「へぇ〜、ここの内装は中世ヨーロッパ服なんだな。」


 食堂は昔のヨーロッパを彷彿とさせるインテリアで、多くの宿泊客で賑わっている。


『シンプルで直線的なデザインですので、ヨーロッパ建築の中でも新古典主義様式が近いかと思われます。』


(なるほど分からん。まぁ凄く凝ってるって事だな。)


 朝食はビュッフェ形式で、和洋中様々な食べ物が並んでいる。


「凄いな、日本でもここまで揃ってる朝食ビュッフェは中々無いぞ。」


「見た事ない料理が沢山あるね。この白くて四角いのは何?」


「ああ、それは豆腐だろうな。豆の煮汁を固めたものだ。」


「へぇ、ちょっと食べてみようかな。」


 ルシェルは豆腐に興味津々で、一口大に切られた豆腐を皿に入れている。


「トーマ、この茶色い肉団子は?」


「多分甘酢あんかけだと思う。」


「甘酸っぱいってこと?美味しそう...」


 フェリスは肉料理を中心に、大皿から次々に取り分けている。


「お、コーヒーもあるのか。この世界に来て初めてだな。」


 トーマは、フォーシアで初めて見るホットコーヒーに感動している。



「あ〜美味しかった!今日もここに泊まりましょ!まだ食べてない料理が沢山あるし!」


 朝食を堪能したフェリスは、全ての料理を食べられなかった心残りからか、連泊を提案する。


「不本意だけどフェリスに同意。こんなに美味しい料理が沢山食べられるのは最高だね。」


(ああ、そんな言い方するとフェリスが...怒らない、だと!?)


 トーマの予想を裏切り、フェリスは「そんな事じゃ怒りませんけど?」というような余裕の表情をしている。


(フェリスが大人の階段登ってる!!)


『登ったというより、トーマが登らせたという方が正しいのでは?』


(こら、無理矢理みたいなニュアンスはやめなさい。)


「ねぇ、今日はどうするの?通り魔を探す?」


「通り魔が"あの方"の影響を受けてるのかを知りたいな。なんか方法あるかな?」


 フェリスの問いにトーマが答える。


「うーん、難しいね。外見に普通とは違う特徴があるってわけじゃないよね?」


「そうだな。ぱっと見普通な感じだから話しても分からない可能性もあるし、どうしたもんか...」


「とりあえずその通り魔捕まえてから考えたら?」


 腕を組んでウンウン唸っているトーマとルシェルに、フェリスが提案する。


「た、確かに...」


「そうか、捕まえる前に判断する必要は無いのか...やるなフェリス。」


「ふふん、そうでしょ?」


 2人に褒められて、フェリスは鼻高々という感じだ。


『それが1番確実ですね。"あの方"の影響下になかったとしても、通り魔自体は捕まえた方が良いと判断します。』


「よし、そうと決まれば早速聞き込み調査からだな!指名手配されてる可能性もあるし、まずは兵士の詰め所にでも行ってみるか。」


「オッケー!」


「了解だよ。」




「通り魔?ああ、俺たちも行方を追ってるぞ。だが中々尻尾を掴めなくてな、懸賞金をかけて広く情報を集めてるんだ。」


(どうやらここに来て正解だったみたいだな。)


 トーマ達は、ホテルから1番近い詰め所に向かい、兵士から話を聞いている。


 やはり指名手配されていたようで、兵士はすんなりと持っている情報をトーマに話した。


「なるほど...要約すると、出没するのは必ず夜で、被害者は風貌の似たヒューマンの男。死因は肺を刺された事による窒息死って事ですね?」


「ああそうだ。風貌はお前みたいな感じの痩せ型の黒髪だな。あと今分かってるのは、犯人は恐らく女という事と、そいつは裸足で行動しているってことくらいだな。」


「へぇ、どうしてそれが分かったんだい?」


 ルシェルが素朴な疑問を兵士に投げた。


「被害者の傷口がそこまで深くないんだ。これは非力な女が刺した時と酷似している。あと現場に裸足の足跡が残ってる事があるんだが、サイズが女のものだ。」


「なるほど...俺もターゲットになり得るって事か。これは好都合かもな。」


「おいおい、囮捜査なんて無茶な事はやめとけよ?これ以上被害者を増やしたくないからな。」


「まぁ、無茶はしないようにしますよ。情報ありがとうございました。」


「もし捕まえたら、殺さず俺達に引き渡してくれ。懸賞金もあるし、本人の口から聞きたいこともあるしな。」


「分かりました。」




「それで、通り魔を捕まえる方法だけど...」


「トーマ、気をつけてね。」


「ちゃんとアタシが守るから安心して!」


「ですよね...」


 詰め所を後にした3人は、街を歩きながら通り魔の捕獲方法について話す。


 と言っても、フェリスとルシェルはトーマを囮にする気満々だった。


『私も全力でサポートしますのでご安心ください。』


(もう決定なのね...みんな酷い。)


 ARIAもそれに同意する。


「はぁ...じゃあ早速今晩実行するか。」


「場所とか色々決めないとね。服装も昨日トーマ達が見た被害者に似せようよ。」


「じゃあ服見に行こう!アタシも服欲しいし!」


「ちゃんと楽しむつもりじゃないすか...」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ