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21話 孤児院救済大作戦 3

 

「それじゃ、話を聞こうか。」


 ヘイデンはソファーに座り、トーマに計画を聞く。


「はい、計画の概要は2つ。自分達でお菓子の屋台を運営する事と、街の便利屋としての活動です。」


「屋台の話はさっき聞いたが、その便利屋ってのはどういう事をするんだ?」


「はい、まだ具体的な活動内容は固まってませんが、商店の手伝いや観光案内、清掃活動あたりを想定しています。」


「そうか...商店の手伝いに関しては何の問題もなく出来るだろう。俺が領主として許可を出すまでもないな。てこたぁ話の本題は清掃活動か?」


 ヘイデンの聡明さに敬意を表しつつ、トーマは答える。


「その通りです。街の公共事業として領主様から仕事をもらっているという肩書きは、子供達を悪意から遠ざける効果があるんじゃないかと思っています。」


「なるほどな。確かに俺のお墨付きがあれば、余程の事がない限りチビ達は安全だわな。」


 ヘイデンはそう納得するも、気になる所をどんどん掘り下げていく。


「だが幾つか聞きたいんだが、それをどうやって街の連中に伝えるつもりだ?あとその権利を与えるとして、それを羨ましがる連中もいるだろう。そうなればチビ達にちょっかいをかけてくる奴も出てくるかも知れん。それを防ぐ方法は考えてるのか?」


「そうですね...」


(はい、出番ですARIAさん。)


『畏まりました。街の人達に伝える最も確実な方法は、子供達に制服を着用させる事と判断します。"公共事業作業員"のような文言を入れておけば、領主からの仕事だとすぐに分かります。』


(なるほどな、それは良い案だ。)


『また子供達を守る方法ですが、作業中は1人で良いので兵士の護衛をつける事を提案します。街を巡回する兵士がいる筈なので、付きっきりじゃなくても作業中の子供達がいる場所を巡回ルートに組み込むという方法も可能かと。』


(それでいってみよう。)


 トーマは、ARIAの提案をそのままヘイデンに伝える。


「ほう!制服とは面白いじゃねえか!兵士の護衛については、そこまで人員に余裕があるわけじゃないから巡回ルートに組み込む方法なら出来そうだ。」


(ARIA、後はそれを指示するメリットを提示する必要がある。)


『はい、まずは領主が孤児院に寄付している費用を削減する事が可能です。また子供達が労働力となる事で、微力ながらも街の発展に寄与出来ます。そしてこれをテストケースとして、他の街にノウハウを売る事が出来るでしょう。街によってはスラム街等があると思うので、そこにいる子供達を救済する一手になり得ます。』


(OK、言ってみるよ。)




「・・・」


 トーマがそれを伝えると、ヘイデンは急に押し黙って考え事をしている。


「こんな感じなんですが、どうでしょうか...?」


「兄ちゃん。いや、トーマだったか。お前さん何者だ?」


 ヘイデンがいつもの気のいいおじさんモードを消し、領主としての顔になった。


 トーマは彼がこの提案に大きなメリットを感じていると確信し、慎重に言葉を選びながら答える。


「俺は異世界人です。数日前にフォーシアに転移してきました。」


「異世界人...か。通りでウッズ商会の会頭みたいに新しいアイデアが飛び出してくるわけだ。」


「俺のいた世界では、多種多様な仕事がありました。中には独立して仕事を始める10歳くらいの子供もいたんです。それを可能とさせたのは、子供を取り巻く環境のおかげだと考えています。」


「つまり、俺達が環境さえ整えてやれば、チビ達でも街に貢献する事は可能って事か...」


 そう言うとヘイデンは徐に立ち上がってトーマ達に歩み寄り、真剣な眼差しで頭を下げる。


「トーマ!この提案を是非この街で実現させれくれ!チビ達の未来はこの街の未来だ!」


 まさかの展開にトーマは慌てる。


「あ、頭を上げてください!こちらこそ、宜しくお願いします!」


 それを聞くと、ヘイデンは顔を上げてニッコリと笑う。


「そうか、やってくれるか!領主として協力は惜しまないつもりだ!」


(良い領主だな。これなら安心して任せられそうだ。地球の政治家は見習ってくれよ。)


「ありがとうございます。この街の領主様が貴方のような方で、住民は幸せですね。」


 トーマの言葉に、ヘイデンは照れくさそうに頭を掻く。


「ではパージルト男爵、公共事業の内容について詳しく詰めていきましょう。」


 イリナの言葉を合図に、3人で子供達の仕事を具体的に決めていく。


「あ!ところでこの世界の1週間は7日ですか?」


「わははは!まずそこからだな!」


 ついでにトーマの無知も晒された。





「よし、こんなところですかね。」


「そうだな!まずは商業区の便利屋活動を一週間のうち4日、俺の依頼だと言う事を示すために領主邸付近の清掃を1日、あと2日は休みだな!」


「はい。具体的にはゴミ拾い、植生の管理、各屋台商店からの依頼の請負ですね。」


 まずはお手伝い班の具体的な活動内容が決まった。


 1週間は7日らしい。


「次はお菓子の屋台ですが、これに関してはお願いがありまして、原料仕入れの価格優遇は無しでお願いします。」


「そいつはどうしてだ?価格を下げるよう指示した方が利益が大きくなるんじゃないか?」


「それはそうなんですが、子供達だけ優遇すると、他の人から妬まれる可能性があります。あの子達の安全のためにも価格はそのままの方が都合が良いんですよ。勿論、商店主が自ら値引く場合は別ですが。」


「てこたぁ、逆に不当な値上げをする連中を締め上げれば良いわけだな!」


「流石ですね、その通りです。そうすれば商業区全体の信用も上がるんじゃないかと。」


 トーマは子供達の仕入れをキッカケに、不当な価格変動を抑えて商業区の更なる活性化を狙う。


「分かった!じゃあ早速取り掛かろう!俺はチビ達の制服を作るよう指示してくる!」


「それはありがたいんですが、費用はどのようにお支払いすれば良いでしょうか?」


「水臭え事言うなよ!これは俺からの個人的な餞別だ!金を取るつもりはねえよ。」


 そう言って豪快に笑うヘイデン。





 トーマとイリナは領主邸を辞し、孤児院に戻ってきた。


 フェリスは既に戻っていたようで、子供達と遊んでいる。


「あ、おかえり〜。話し合いはどうだった?」


「ただいま、フェリス。話は上手く通ったよ。しかしたこ焼き屋のおじさんが領主様だったとはな。本当にビックリしたよ。」


「え!そうなの!?」


 どうやらフェリスは知らなかったらしい。


「トーマさん。その事ですが、あまり広めない方が宜しいかと。フェリスさんのように知らない人も多いので。」


「すみません、迂闊でした...フェリス今のナシ!」


「いや無理無理!もう聞いちゃったし!」


「フェリスさん、出来れば今まで通り接してくださいね。その方が領主様も嬉しいでしょうから。パージルト男爵は領民を大切になさるお方なので、領民の本当の声を聞くためにほぼ毎日あそこで街を見守っているのですよ。」


「そ、そうなんだ...分かった、いつも通りにするね!」


「しかし何でたこ焼き屋の屋台なんだろな?」


「昔聞いたことがありますが、たこ焼きが好きだから、と仰ってました。」


 どうやらヘイデンの行動に深い意味は無いようだ。


(ほんと、変わった人だよな...)


『ですが良い領主なのは間違い無いかと推察します。』


(確かにな。)



「それじゃフェリス、調査をお願いしてたリストを見せてくれ。」


「はい、どーぞ。改めて見ると材料によって値段の差が凄いわね。」


 そこに書かれていたのは、製菓材料として必要な小麦、卵、砂糖、果物、乳製品などの価格だった。


 畜産の進んでいないこの世界では、卵と乳製品が他よりも明らかに高い。


 更にフェリスは調査を進めたようで、茶葉や野菜、調味料などあらゆる物の価格を記載している。


「おお、これは凄いな!めちゃくちゃ助かるよフェリス!」


「でしょでしょ〜?アタシだってちゃんと役に立てるんだからね!」


 鼻をフンスと鳴らして胸を張るフェリスを見て、トーマは微笑む。


「じゃあこのリストを基に、作るお菓子を決めるか。」


(ARIA、このリストの食材を使ったもので、常温保存可能でレシピも簡単なお菓子って何かあるか?)


『はい、アップルパイなどは如何でしょうか。保存日数は長くありませんが、商業区を見たところ果物を使ったお菓子が無いようなので。』


(良いな、俺もアップルパイは好きなんだよな。リストにカボチャもあるから、パンプキンパイも作れるな。)


『基本さえ抑えてしまえば中身は色々と変えられるのもパイのメリットですね。』


「よし、決めたぞ。リンゴのパイとカボチャのパイを作ろう。」


「ぱい...って何?」


 どうやらフォーシアにはパイが無いようで、フェリスの頭に"?"が幾つも浮かぶ。


「まずはお菓子班を集めてくれ。実際に作りながら教えるよ。」


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